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ランドセル選びの思い出

娘が年長さんの春、2人目の弟が産まれた。
しっかり者で真面目で、優しく絵に描いたようなお姉ちゃん。
産院に残る私と末っ子とバイバイする時に見せた涙が今でも切なく思い出される。

末っ子が産まれてそれまで以上に母親にかまってもらう時間が減った娘のために、ランドセルを選ぶ日を特別な日にすると決めた。

幼稚園から帰ってきた娘の髪をポニーテールにして、ワンピースを着せ、真ん中の弟と末っ子を実家から呼び寄せた両親に預けて都会に出かけた。

2人で出かけたのは、いつぶりだったのかな。
もしかしたら、真ん中の弟が産まれてから初めてだったのかな。毎日が慌ただしくて、すっかり記憶喪失になっている。

電車に揺られ、梅田の地下街を歩き、キラキラしたものを見たりいい香りのパン屋さんの前を通り、初めての道でもずっと楽しそうに歩いた。



あそこのケーキ見て!!

ショーウィンドウに並んだ大きめにカットされたケーキの数々。
ウキウキとキラキラと、なんとも表現のし難いうれしさに溢れた顔。

ランドセルを決めたら、ケーキ食べる?

うん!!

ランドセルの展示ショップで、開けたり閉めたり。
ピンクよりの赤、正真正銘の赤、水色、キャメル。
重たい軽いと次々に背負い、その姿を見て

ああ、こんなに大きくなってしまった。

と思った。
いつの間にか、小学生になってしまう。
恐ろしいほどのスピードで毎日が過ぎ去っていく。
もっとゆっくり味わっていたい。
柔らかい温かい肌や、細くからみやすい髪を。


帰り道、約束のケーキ屋さんに入った。
弟には内緒ね、これは二人の内緒ね。

娘は5年生になり、帰ってきたらランドセルを机の上にほりなげる。大切に扱ってるようには見えない。

だけどあのケーキ屋さんは、まだ秘密のまま。

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