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#5 【読書感想文】人間みたいに生きている

ブラザース・ブラジャー』を読んで以来、気になっている佐原ひかりさん。
3月に発売された『小説TRIPPER』に新作長編が掲載されていると知り、書店を回って探すけれど、どこにもない(涙)
Amazonで手に入れ、ようやく読了。
(佐原さん以外にも気になる小説がたくさん掲載してある!他も早く読みたい!)


食べることに対して嫌悪と恐怖を持つ女子高生が、山手の洋館に住む吸血鬼を訪ねるところからストーリーが始まる。

「みっともないとか、おかしいとか、なんなんだろうな。俺も近い言葉は散々ぶつけられたけど、筋書き通りにいかないのが、身体だろ」

人間みたいに生きている(佐原ひかり/小説トリッパー2022 SPRING)

『ブラザーズ・ブラジャー』もそうだったけれど、「ふつう」って何?と強烈に問いかけられる。
食事=他者を取り込む気持ちが悪い行為、と考える唯と、遺伝の病気で血液しか受けつけない体になってしまった泉。
一般常識的には、二人とも「ふつう」のカテゴリーには入らない。
だからこそ、心を痛めて苦しんでいる。
他者を拒絶している彼らは、他者から受け入れてもらうことを欲している。

本は一人で読むものだし、それがいいところだ。自分のペースで、自分の解釈で読み進めていける。眼前に広がる知らない世界に、どっぷりと好きな深さで浸かれる。本から得られる知識の、形のなさもいい。無形のまま、私の中に心地よく染みわたっていくあの感覚。誰かとわかち合えなくても、じゅうぶんだと思っていた。わかち合うことが、こんなにも幸せなことだとは知らずに。

人間みたいに生きている(佐原ひかり/小説トリッパー2022 SPRING)

かなしいほど個別の個体で、どれだけふれあってもおなじようにはなれない。心をかよわせても、痛みはわかち合えない。 それでも、そばにいたいと願い続ける。自分だけの身体を、それぞれの生を、生きながら。

人間みたいに生きている(佐原ひかり/小説トリッパー2022 SPRING)

本作もとてもよかった。
10代のあなたに読んでほしい。あなたと感想を語り合いたい。
そんな1冊でした。

以前インスタに書いた『ブラザーズ・ブラジャー』の感想↓


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