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ハッピーライフ


火曜日更新を謳っておきながら、先週に引き続き今週も更新ができなくて落ち込んでしまう。
言い訳をすると、仕事が立て込んでいたり、季節の変わり目のせいか気持ちが不安定になっていたりして、日常生活を維持する気力が失われつつあるのです……。
体感的には過ごしやすい気候で好きなんだけど、早まる夕暮れに心が(悪いほうに)揺さぶられてしまって、つらい。
毎年のことだけど、この時期になると過去の失敗や挫折、失恋やらなんやら……がグルグルと頭の中で回り続けて消えなくなってしまう。
グルグルの気持ちを抱えるのがつらいから、ひとり暗い部屋に閉じこもって引きこもりたい衝動に駆られる。
家族(子ども)がいる義務感もあり辛うじて生活を維持できているけれど、ひとりだったら屍になっていたと思う。

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「人はだれでも入れ替わるものなの。何ヶ月かに一度入れ替わって、でもそれは心配に思うことでも怖がることでもないの。だって何度入れ替わってもお母さんはお母さん、お父さんはお父さんでしょ?」

北大路公子『ハッピーライフ』(寿郎社)は【穏やかで均された世界】で生活をする人たちの物語だ。
この世界で生きる人たちは、定期的に入れ替わることで、喜びも悲しみもない、絶望も希望もない、穏やかな生活を送っている。
人々は心揺さぶられる瞬間を体験した翌朝、その人の役割を残したまま顔や体格が入れ替わってしまう。
入れ替わってしまうと何もかもが曖昧に遠ざかり、記憶は一枚の風景写真に過ぎなくなる。
泣きはらした悲しみも、置き去りにされた苦しみも、信じて疑わなかった未来を奪われた絶望も、すべてが遠い一枚の景色になっていく。

入れ替わることに違和感を覚え、禁じられた【日記】に幸福の楔を打ち付ける女。
週1回の外出時に帽子とマスクで顔を覆う女は鏡を見ない。
夫の浮気を疑い【入れ替わり】前の物語が書かれている本を並べている図書館で働く司書を監視する女。
今ではもう誰も撮ることがなくなってしまった【家族写真】を拾った駐車場管理の若い男。
【本当の家族】に憧れ、替わらない【あの人たち】の元へ行った主婦。
記憶を回収する女。
墓を掘る祖母を思い出す女。
【穏やかで均された灰色の世界】から旅立つ決心をした女。

『ハッピーライフ』とはなんなのか?
「替わらない」私は読みながら心が揺さぶられてしまう。
「ハッピーライフ」って?

入れ替わりがない世界を生きるわたしは幸福なのか、不幸なのか。
1つ思うのは、季節の変わり目であるこの時期だけでもいいので入れ替わってしまいたい。
この季節だけは【穏やかで均された世界】で過ごしたいと思う私は幸せ者なのだろうか。

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kanakoyama/不良兼業主婦
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