契約書に「著作権は製作者に帰属する」と書いたが、裁判所に「持っている意味がない」と言われ認められなかった判例
登場人物
ホームページ制作会社 以下「開発会社」 原告(訴えた)
株取引情報提供会社 以下「顧客」 被告(訴えられた)
事実の概要
顧客は開発会社に、自社ホームページの作成と保守を依頼。
ホームページ制作と保守、それぞれ「注文書・請書」を取り交わし、どちらの備考欄にも、「成果物の著作権その他の権利は、製作者(開発会社)に帰属する」と記載した。
ホームページ完成、顧客は開発会社に報酬を支払った。
その後、顧客がサーバー更新費用を期限までに支払わなかったため、ホームページは凍結されてしまった。
顧客は、サーバー更新費用を遅れて支払い、ホームページの復活を開発会社に依頼した。
開発会社はすでにデータが抹消されたため、イチから再作成する必要があるとして、高額費用を要求した。(実際は簡単に修復でき、開発会社は虚偽を述べた)
顧客は、開発会社との取引をあきらめ、別のホームページ作成会社に、ページのソースコードを渡して、同じページを複製してもらい、運用を開始した。
開発会社は、ホームページの著作権が侵害されたとして、顧客を訴えた。
裁判所の判断
著作権は開発会社に帰属していない。
顧客が保守を委託している、ということは、ホームページ全体が顧客に帰属しているという証拠である。(開発会社の持ち物であるなら、顧客が開発会社に保守を委託する必要はない。)
顧客の会社ホームページなので、開発会社が著作権を保持していても、自分で利用したり、第三者に利用させたりすることはできない種類のものであり、開発会社が著作権を持っている意味がない。
開発会社が著作権を有しているとすると、顧客がページを移転したり、変更できなくなり、不合理である。
発注請書の備考欄の、「成果物の著作権その他の権利は、製作者に帰属する」は、あえて上記のような不合理な状況について合意したと明確に言うには足りない。
得られた教訓と感想
契約書で「著作権は製作者に帰属する」と書いても、著作権を有している意味がない場合には、裁判所に認めてもらえない場合がある。
大阪地判令和元年10月3日
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