くもの巣の張りどころ|ひかり
夏も終わりに近づいてきて、盛んに飛び交っていた虫たちの音色が少しづつ変化し始めたこの頃。
昔から虫は苦手ではないけれど、この季節で唯一くもの巣が苦手である。
もっと正確に言うと、くもの巣の取り扱いが苦手なのである。
夏頃から家のぐるりにくもの巣が張り巡らされるようになってくるが、くも達が巣を張ることは全然構わない。
しかし、私たちの暮らしの動線に張られてしまうと困ってしまう、私はくもの巣を取り除くことができないのだ。
彼らが作った家を、こちらの都合で壊すことが憚られるように感じ、通りたい道に糸が渡してある場合は、可能な限りくぐりたい。部屋のカーテンのひだひだの間に糸を張っていた時などは、毎日そっと開け閉めした。
かといって、何もかもそのままにしておくと日常生活に支障をきたすほど、トラップ化してしまう。
洗濯物を干す軒下などは人気のスポットで竿と屋根の間に軒並み作られ、集合住宅と成す。
それでも、竿の下は空いているから洗濯物は干せるので、そのまま共存を試みるが、洗濯物を取り込む時に勢い余ってくもの巣に触れてしまうこともあり、あ〜!ごめん!とくもに謝りつつ、服に絡まりついたふわふわの糸を眺め途方にくれる。
一度、くもが巣を作るところを眺めていたことがあるが、ものすごいスピードで休むことなく美しい多角形を作りあげており、その様は紛れもなく匠の技であった。
くもは巣作りの達人だから、一度壊れてしまってもすぐに新しい巣を作るだろうことはわかってはいるのだけれど。。。。
そんなある日、あたり一面が田んぼで、その中央を走る少し勾配のある一本道の坂を車で登っていた。
ちょうどお昼過ぎくらい、田んぼの上に太陽が昇っていて、すっと日の光が差しているその先を見ると、キラッと光るものが見えた。
何かと思ったら、まだ青い稲の穂を繋ぐように地面と水平に糸を渡して作られたくもの巣だった。
緑の中に発光するようにいくつも並ぶ巣の美しさと、その創意工夫の素晴らしさに見惚れてしまった。
日を浴びて風にたなびく様子がとても気持ちよさそうで、それでいて人に邪魔されないなんて、思わず「良い家だね」とつぶやいた。
そうか、暮らしには工夫と想像力が大切なんだ。
あるものをいかに生かすことができるかが暮らすを楽しむことなんだと、改めて気付かされた。
私の家もまだまだ楽しくできることが沢山ありそうだ!とワクワクしてきた。
思わぬ所から暮らしの知恵を学ばせてもらうことができた。
とはいえ、軒下にはまだ同居人がいるから、創意工夫でお互いバランス良く暮らしを楽しんでいけたらいいねと思う。
目を留めてくださり、ありがとうございます。 いただいたお気持ちから、自分たちを顧みることができ、とても励みになります! また、皆さまに還元できますよう日々に向き合ってまいります。