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師走を前に | Kii

わざわざ語るまでもないことだと思っても、その事実に目が丸くなり呆然とするから言いたくなる。明日から12月がはじまるなんて。

年を取ると時間、ひいては月日の流れが速く感じられるとよく耳にはするけれど、私自身も然り。さらに近年は気候も時間の感覚を混乱させてくる。

毎日、日付という軸を辿り暮らしながら、今年はその日付と暮らしの背景がずっと噛み合わない感じがして、季節のどのあたりを過ごしているのかが掴みにくいまま、ここまで来てしまった。

11月とはいえこの間まで、まだたまに汗ばむこともあったのに、12月を機に一線状に並びたいかのように、季節は猛ダッシュで追い上げてきた。

師走はいつも、テトリスでいうとブロックが落ちてくる速さが5段階くらい上がったくらいに、常に心が急き立てられてしまう。

実際、普段にはない年末のあれこれで明らかにタスクが増えてはいるけれど、自分の心持ちだけではなく、市井の人々の「年を越えるぞ」という意識ががっぷりと肩を組み、大河の如く、太く力強く大晦日へと向かって流れようとしている気がする。

ただ師走とは関係なく、近頃の私も相変わらず、八方から飛んでくるボールを打ち返すような日々を送っていた。

「これが終われば休み」と奮い立たせながら、次から次へとモグラ叩きのように「すべきこと」が現れ、空白の日はどんどん埋まってしまう。その果てについに先日プツリとエネルギーが尽きて、まるまる3日寝こんでしまった。

そんな自分はずぶ濡れアンパンマンだと自虐しつつ、よくこんなに眠れるなあと言うくらいに、許される限りに眠り続けた。さらに10日ほどかかってようやく健やかさが戻ってきたところだ。

もともと隙間なくテトリスのブロックを積み上げるように(テトリス好きなんです…)、なんでも隈なく埋めて悦に浸れる性分だと思い知ってきた中、ふと、だとしたらカレンダーに「オフ」という予定を書きこんではどうかと、12月の空いていた数日は「オフ」と埋めてみることにした。

そう決めたからかはわからないけれど、不思議とここ数日は、なんとなく後回しにしていた照明を付け替えるとか、コンロのまわりを整えることに気が向いて、スルッと終えられて驚いている。

もちろんがむしゃらだったからこそ今に至れているのだと実感つつも、もう打ち返すのではなくこれからは投げる方へとシフトしたい。投げるのはボールではなくお手玉がいい、と言うビジョンが不意に湧いてきた。

お手玉を手のひらで味わったら自由に、けれど確かな方向へと投げて、放物線の終わりまで見届ける。その一連の行為を味わうことは、これからの私の理想だ。

そう思えた今はメトロノームのテンポを切り替えるような、節目にさしかかっているのかもしれない。

「すべきこと」ではなく「したいこと」。どう前提するかの選択は自由だと気づいた今、今年の師走は努めて、ゆっくりとしたテンポを刻みながら過ごしてみよう。


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HAKKOU(はっこう)/リレーエッセイ
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