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2024年、個人的映画ベストテン~洋画の地盤低下が恐ろしい~

 あけましておめでとうございます。この年末年始、映画界にとって稼ぎ時なのにまるで観るべき作品がない枯渇状態に驚きです。昔なら007映画、スピルバーグ作品、スターウォーズやらの洋画大作がスクリーンを賑わし、巷の話題も席巻が当たり前だったのに、本当に今は昔。そして邦画アニメ作品への極端な偏重、実写洋画作品の想定以上の地盤沈下が著しい。2024年の興収ベストテンに洋画は7位の「インサイド・ヘッド2」たった一作。あれ程に大騒ぎした実写秀作洋画の「オッペンハイマー」とて16位が精いっぱいとは呆れます。日本って本当にガラパゴスに入り込んでしまって、それでも何故か満足している偏狭社会になってしまったのは確かでしょう。

 原因は無論ハリウッドの脚本家と俳優の組合ストの長期化による製作ストップが主要因ですが、それだけでなくメジャースタジオが配信と劇場との采配にいまだ確信を持てない混乱があるから。Only theater なんて言いながら劇場公開しても、興行終了後ほんの数ヵ月後に配信にまわすなんて、目先の利益追求のみで、結果的に自らの首を絞めているに等しいわけです。劇場で当たればとんでもない収益が転がり込むのに、サブスクリプションの配信では固定収入のまんま、早かれ遅かれ大博打に挑もうなんて考えなくなりますよ。やたらに長いシリーズ化が性に合っているのです。さて、興行と配信の大変革はまだまだ過渡期、さてどうなるのでしょうね。

 昨年一年間に映画館鑑賞約130本から選びに選んだベストテンを記します。深く私の心に刻まれた作品、映画的に見事な作品、個人的な好みの作品、ベストテンに値する作品、私の推しの作品、ってな尺度で選びました。もちろん見逃し作品も多々、皆様の推しが入ってない場合も当然あります、その辺りはご容赦をお願い申し上げます。次点は順不同です。

河合優実、おそるべし

邦画
1「あんのこと」
 これが日本の今現在である事を直視しないと前へ進めない
2「ミッシング」
 当事者とSNSの悲劇的構造を告発、石原さとみの超絶演技
3「碁盤斬り」
 江戸情緒たっぷりな情景に武士のケジメ、これを白石監督が
4「ブルーピリオド」
 吸ってもいないタバコを常に持ち歩く、この感覚に震えました
5「正体」
 無理設定多々あるなか心で押し切る藤井道人監督絶好調
6「劇場版 アナウンサーたちの戦争」
 報道の自由度69位の日本に必要なのは、私達自身が戦うこと
7「ルックバック」
 天才に翻弄させられる秀才の苦悩を驚異の画力で展開
8「アイミタガイ」
 ご都合主義大いに結構、これ程に心あたたまれば、万々歳
9「雨の中の慾情」
 理解の追いつかない不安が快感に転ずる心地よさ
10「侍タイムスリッパー」
 いとおしい程の時代劇愛と制作の熱意に頭が下がる思い

次点 「十一人の賊軍」
  「ゴールド・ボーイ」
  「はじまりの日」
  「私にふさわしいホテル」

主演のキルスティン・ダンストの夫 ジェシー・プレモンスがゲスト出演で場をさらう

洋画
1「シビル・ウォー アメリカ最後の日」
 あり得ない事が現実味を帯び突然私達の前に現れる恐怖
2「オッペンハイマー」
 科学技術が正で、政治が悪、の単純2分法から脱する必要性
3「落下の解剖学」
 映画の解剖学の如く精緻なモンタージュの底力を思い知る
4「関心領域」
 切り口を変えて冷徹に淡々と描写するだけでこの恐ろしさ
5「サウンド・オブ・フリーダム」
 国境で変わる命の重さ、この現実から逃げてはならない
6「チャレンジャーズ」
 凄まじいカメラワークと音響の極致で映画の美学の新境地
7「型破りな教室」
 日常に死体がある環境でも才能を発掘する強い意欲に感服
8「異人たち」
 時空に漂う死者とのコミュニケーションに溢れる追憶と現実
9「ロボット・ドリームズ」
 シンプルな画の中にサイレント映画の力強さを秘めた傑作
10「ふたりで終わらせる」
 絶滅危惧種であるラブストーリーをシリアスで再生する意志

次点 「ホワイトバード はじまりのワンダー」
  「デューン 砂の惑星 PART2」
  「アメリカン・フィクション」
  「花嫁はどこへ?」
  「コヴェナント/約束の救出」
  「アイアンクロー」
  「ラインゴールド」
  「ボストン1947」
  「胸騒ぎ」
  「哀れなるものたち」
  「密輸 1970」
  「マリウポリの20日間」
                      以上

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