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強くオススメ映画「花嫁はどこへ?」~心優しくなれます~

 ウェルメイドなハートウォーミングに、心底ほっとする。超人による荒唐無稽なヒーローばかりのこの頃のインド映画ですが、「きっと、うまくいく」2013年や「ダンガル きっと、つよくなる」2018年 の大スターであるアミール・カーンが手掛ける(制作)と、とたんに優しさで満たされる。なにしろ彼のモットーが「夢を妥協してはいけない、夢を実現するために妥協することはあっても、夢そのものを妥協してはいけない」とか。

 シチュエーションコメディに始まり、凸凹コンビによるベタなコメディも取り入れ、素直に人情世話物に昇華し、清々しい涙で画面が霞む良作です。設定が2001年、何故かと言えば皆が皆ケータイを持っていたら情緒の欠片もないから。親に言われるままに若くして嫁入りするプール、よりによって結婚に最良の日を選択したがために、列車の中は花嫁だらけ、しかも似たような赤いベール姿で。当然のように些細なことで花嫁の取り違えが生ずるのが発端で始まるお話。取り違えたもう人の花嫁の動きが怪しく、ニュースにもなる花嫁詐欺の情報によって、観客もミスリードされる。

 この花嫁ジャヤを探るために警察署長と部下がシャーロックホームズとワトソンよろしく捜索がコメディ・パート。やや幼げなプールに扮する女優さんより、ジャヤに扮する女優さんの方が、理知的で圧巻の美女なので、ミステリアスなシチュエーションがサスペンスを呼ぶ仕掛け。プールのフィアンセ側も家族から友人も入り乱れての大騒ぎ。それにしても、仲間やら部下やら子供など、やたら登場人物が多過ぎるのはさすがに混乱のもとで、人物整理が追っつかない。

 無論ジャヤの隠された秘密も明らかになり、ラストは大団円のハッピーエンドとなり至福感で満たされる。しかし、なにより本作の意図は、女性の扱いの酷さに収斂し、インド社会の古き慣習を真正面から糾弾する。親に言われるままに結婚し、子供も出来ないと追放されるリスク、夫が働き妻が家庭を仕切る、人妻は人に顔を晒すのも憚れ、女性の尊厳を守ると言いながら行動を制限する、などなど。そもそもおよそ働く服とは言えないサリーの着用を強要し、女性の社会進出を阻む意図が慣習として存在するわけです。

 設定が23年前だからと言って、現在のインドに制約はない、とは決して言えず、一部の都会はともかく、地方に行くほどに女性解放なんて到底まだまだでしょう。日本だって相当に低い有り様ですから、偉そうに言えませんが。結婚前に男と交わった娘を実の父親が不浄と称して殺すことが黙認、その交わりがレイプ被害だとしてもの恐ろしさですから。

 美しい歌曲が挿入されますが、登場人物が歌うインドスタイルはここではありません。美しい田園風景ではありますが、埃っぽいのも事実で、キレイと素直に感動出来ない自分が恥ずかしい。

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