必見超オススメ映画「サウンド・オブ・フリーダム」~暗澹たる現実を直視せよ~
例によって実話を基にと出る、人身売買のハナシと言う事だけは承知の鑑賞、しかし冒頭タイトルバックで明らかに現実の防犯カメラが捉えた子供誘拐の現場画像が複数映し出されるが、これが相当の衝撃で、小児性愛症(ペドフィリア)に適むハナシと明確になり、正直鑑賞継続を一瞬躊躇った。本編中盤で私の前の観客はトイレに行ったきり戻ってこなかった、トイレと言うより退散でしょう。性的嗜好は諸々あれど、双方大人で納得の上ならどうぞご自由に、しかし相手が圧倒的「弱者」である一点だけで100%排除せなければならない。そんな立場でこの現実を映画の力をもって広く伝播する明確な目的意識のある作品。
だから、極度の緊張感を維持する画面は素晴らしく、ただモデルとなった実在の人物の指導の下の云わば実録再現ものである以上、際立った作劇やトリッキーなエンターテインメント性はオミットされ、ハラハラドキドキの潜入と救出劇に盛り上がりを多少欠くのは事実、しかしその替わりに現実の刃が私達に歯向かってくるのです。
ホンジュラスの幼い姉と弟が芸能事務所を偽った組織によって誘拐されてしまうケースを軸に描かれる。ペドフィリアの顧客相手に米国に売り飛ばされる恐ろしさです。無論、理性ある製作者により直接的な表現は巧く避けられており、その点の不安はないですが、言葉のやりとりを聞くだけで絶望的な気分となってしまう。もちろんここで登場する少年・少女及び小児性愛者役もすべて役者さんの演技ですが、冷静を逸脱する勢いに満ちてます。
アメリカ国土安全保障省の捜査官ティムに扮するジム・カビーゼルが主体となって描かれる。同僚がその現実と直面する厳しさに耐えかね職を辞めるシーンが描かれる程に、タフでなければやっていけない。誘拐組織を摘発したところで子供達を救えなければ何の意味ももたない。そこで南米コロンビアに潜入しての大掛かりな捜索に着手。成果を上げられず米国のサポートを打ち切られても、自らの娘に立場を置き換えたらと考え行動する。ラストにはご本人の画像も出(おや珍しく役者よりずっと男前)、ほとんどヒーローです。
映像的にもしっかりした造りで、妙にブレブレ実録風のいい加減さ派排除してます。さすがにメル・ギブスンが制作に絡んでいるだけのことはある。特筆すべきはラストのクレジットにジム・カビーゼルが再度登場し、カメラに向かって事の重要性を熱く語り、おまけにQRコードをスマホで撮りなさいとまで言う。真摯さがひしひしと伝わります。
ほとんどベビーな顔なのに巨乳のアニメがのさばる日本、ロリコンがまるで認知されてると誤解されかねない状況です。本作の米国の小児性愛症需要を非難するだけでなく、我が国のこの構造もまた相当に歪んでいるわけです。その陰で少年・少女及びそれ以下の幼児と言う「弱者」が声も上げられないでいるのです。