十分にオススメ出来る映画「クレイヴン・ザ・ハンター」~あらら期待を大きく上回る出来に驚いた~
なんと、面白いじゃないですか! SONYによる「スパイダーマン」のヴィランものはこのところ酷い作品が多く「モービウス」2022年、「マダム・ウェブ」2024年と作品の評価並びに興行ともにダメダメで、まあまあのヒットの「ヴェノム」とて3作まで行ったものの、出来レベルは褒められたものじゃない。で、コロナ禍の煽りを受けて延期続きだった本作がやっと公開で、心配してましたよ。荒唐無稽は当たり前、その上でどうエンターテインメントとして成立させるかが、成り立っているではありませんか。
ダーク・ファンタジーの部類でしょうが、明るいシーンでも妙に冷たく暗めなのが本作のトーン。のっけからロシア・シベリアの極寒の刑務所が舞台だからでしょう、余計に寒い寒い。で超人的なアクションを以ってオープニングを派手に打ち上げて、突然16年前の青年期に遡る。いかにしてクレイブンになったか、が本作に託された任務なのですから。
結構制作に金かけてまして、ロンドンをベースにタンザニア、トルコ、シベリア(ったってロシアであるはずもなく撮影はアイスランド)等でロケーション。それぞれにド派手アクションが展開されますが、骨子は高圧的父親との軋轢にあり、そのマウント取りまくりの父親をラッセル・クロウが扮する。既に大御所扱いのラッセルですが、その「顔圧」は流石です。で、本当に唯一のマドンナと言うかボンドガールと言うべきか、ヒロイン・カリプソ役にアリアナ・デボーズが相当に盛った美女風に登場、しかしさして見せ場がないのが惜しいですが。
オイディプスよろしく父親を乗り越えた挙句、今度は気弱だった弟が突然の大変身で悪の元締めだった父親の跡目を継ぐ設定。自らの役割を承知したクレイブンが見事に仕上がり鏡の前で大見得切って・・・で幕。まさにこれから始まりますよってわけで。なんとかヒットしてこの続きを見たいと思わずにいられない。主役の若き頃を演じたフレッド・ヘッキンジャーの端正ぶりに見覚えが、と思ったら「グラディエーターII 英雄を呼ぶ声」のカラカラ皇帝を演じてましたね。
主演のアーロン・テイラー=ジョンソンがバキバキの肉体を造り上げ、ダークな重厚感で大活躍はお見事です。「TENET テネット」2020年でジョン・デヴィッド・ワシントンを、「キングスマン:ファースト・エージェント」2021年ではレイフ・ファインズらを、「ブレット・トレイン」2022年ではブラッド・ピットを、「フォールガイ」2024年ではライアン・ゴズリングをサポートする引き立て訳が続き、過去には「ザ・ウォール」2017年で単独主演もありましたが、メジャー作品での堂々の主演は初めてか。まだ34歳とは若い、頑張れと応援したい逸材です。