小中学生の読書感想文に迷ってるなら、ロバートウエストールを勧める
読んだ本の感想を書いてはどうですか?とnoteに言われたのと、ツイッタランドで小5の読書に目覚めた男の子に勧める本があったら…。という話題を目にしまして、畏れ多くも、読書感想文の題材に迷っていらっしゃる方に届けばと、書いております。
戦争物を取り扱いたいのたら、ロバート・ウエストールの「弟の戦争」
純粋に冒険物がいいのなら、ロバート・ウエストールの「海辺の王国」
をつよーくおすすめします。
私とロバート・ウエストールの出会いは、短大生の時でした。イギリス文学の講義で女性の先生が「この講義のことは何一つ覚えていないでしょう。でも、ロバート・ウエストールの「弟の戦争」は読みなさい!」と捨て身の宣伝をされた事がきっかけです。帰り道に、そんなに勧めるのなら…と思いながらいつものようにブックオフに寄ったのですが、そこに弟の戦争がたまたまあり、運命に導かれるように手に取りました。その日のうちに読み切ったのですが、まぁーすごかった。めちゃくちゃ面白かった。こりゃそれだけ人に勧めたくなるな!という本でした。
まず、ロバート・ウエストールのご紹介をしましょうか。イギリス人のもう亡くなられている、児童文学の男性です。自分の息子に自分の戦争体験を読ませたい、というところから作品を書き始めた遅咲きの作家です。
最初は「機関銃要塞の少年たち」という、作品でした。もちろんこれも読みましたが、イギリスに落っこちていたドイツの戦闘機を子どもたちが見つけて遊ぶ的な話です。
翻訳も荒く、正直マストではないと思います。
ロバート・ウエストールでマストなのは先に挙げた「海辺の王国」と「弟の戦争」の2冊です。他にも面白い作品はいっぱいあるのですが、この2冊を読んでみて、気に入ったら、先へどうぞという作家さんです。
児童文学だと、エンデが勧められがちなのですが、エンデはなんでも長いし、翻訳が古い。私も小学生でモモも果てしない物語もちゃんと通ったのですが、これね、余程活字に飢えてないと入り込めないです。一度ペースを掴めば面白い作品群なのですが、今の子にとってはハードルが高い。そう思います。
ロバートウエストールのいいところは、この2作に関しては日本語訳がとてもいいです。現代人に読みやすい日本語訳です。
子供にもわかりやすいし、作品のボリュームも一晩頑張れば読めてしまうくらいのボリューム。なので、活字慣れしてないお子さんでも、ちゃんと最後まで読めると思います。
あと、ロバート・ウエストール推しに、宮崎駿がいます。確かロバートウエストールと共著の何かを出してたと思います。宮崎駿は本当に臭覚がすごいなと思います。柏葉幸子の「霧の向こうの不思議な街」は、千と千尋の神隠しの原題として、パンフレットで紹介され、有名ですが、私も小学生の頃から柏葉幸子が大好きで、耳をすませばの中に「霧の向こうの不思議な街」が出てくるのに、ワクワクした世代です。
ただ、読書感想文としては、霧の向こうの不思議な街は弱いです。異世界転生物の走りではあるのですが、読書感想文の題材としては、ファンタジー色が強く、これの感想文を読ませる内容にするには結構難しい。本はすごく面白いのですが、評価される読書感想文に仕上げるには、千と千尋位深い所までの読解が必要で、正直おすすめしない。ワクワクする児童書であることには変わりないのですが、かなり読書感想文の題材としてはかなり難しい。
という事で、私は、ロバート・ウエストールを推します。
↓↓↓ここからはネタバレを含みますので、その点だけご留意ください↓↓↓
まず「弟の戦争」ですが、これは、あるイギリスに住む男の子の兄弟のお兄ちゃんの視点で描かれた、戦争物です。
ある日、夜中に目が覚めた、お兄ちゃんが、弟がベッドの端に座って、ガタガタ震えてるのに気がつくんです。それで、弟に話しかけるのですが、普段の弟の様子とは違う。よくよく話しかけてみると、「イラクの戦争で戦ってる少年兵だ」というのです。でも昼間になってみると、弟はその事を全く覚えていない…。お兄ちゃんは夜になると弟が、イラクで湾岸戦争を戦ってる少年兵に人格が変わっちゃってる事に気がつくんです。
イギリスという平和な社会に生活しながら、夜中は弟がイラクで戦闘してる少年兵になっちゃって、その価値観で話をするんです。
つまりですね、今の平和の日本に暮らしながら、戦争を戦うというのはどういう価値観か?って、めちゃくちゃ読書感想文書きやすくない?今、イスラエルパレスチナも、ウクライナロシアも問題としてあるじゃないですか。でも、やはり対岸の火事。なかなか、自分の事として考えるのは難しいです。でも、読書感想文の題材に「弟の戦争」を取り上げることで、平和に暮らす自分と、同じ年齢で少年兵として戦う世界線を共有できるんです。
ロバート・ウエストールは、文章も作品も面白いので、視点だけじゃなく、弟とお兄ちゃんとのやり取りで、実際に戦闘の事は描写されないんですが、めちゃくちゃビビる少年兵の心境を、弟から聞くことで、お兄ちゃんは湾岸戦争をリアルに捉えるんです。
読書感想文書きやすそうでしょ?
小学生高学年なら、戦争怖いで終わってもいいし、中学生なら、今のパレスチナ問題やウクライナ問題に裾野を拡げてもいいと思います。
とにかく、同じ年齢の子が、戦闘に巻き込まれるってのが、どういう事か?を突きつけてくるんですよ。
ロバート・ウエストールは推薦書になった事あるのかな?そこら辺知らないのですが、まあ、知る人ぞ知る児童文学ではあるものの、知ってる人は知ってるので、大きめの図書館なら、絶対蔵書あると思います。なので、手に取りやすい。
ロバート・ウエストールの素晴らしさは、オチにあるですよ。
読書体験したのって、読んだ自分だけじゃないですか?
同じ本を読んでないと、話が通じない。
同じ本を読んだとしても、同じ感想を持つとは限らない。
読書って、すごく孤独な体験なんですね。
ロバート・ウエストールは、主人公を必ず孤独にして終わるんです。
弟の戦争なら、弟は夜中の事一切覚えてない。この少年兵が亡くなる事でこの夜中の弟の異常行動も終わるのですが、最後、お兄ちゃんただ1人になるんですよ。つまり、読書体験をして、感想文を書いてるお子さんは、読者体験を1人でしてるわけじゃないですか。主人公と読んでる読者がまあ、リンクする。
秀逸!
たまらん。
という事で、かるーく?いや、真剣に?今対岸で起こってる戦争ってのが、どういう事なのか題材として考えやすい。
読書感想文て3枚でしたっけ?かるーく書けちゃう。
という意味で、とっても読書感想文に向いてる本だと思います。小学校高学年から、中学生で、こんなにいい題材の本ないと思う。
そして、他の人と被らない。
正直、中学生だと、漱石とか太宰読ませたがるでしょ?難しすぎます。読書いっぱいしてる子でもね、あのボリュームの本を3枚に感想文まとめるなんて難しすぎる。
まず、頭から最後まで読むのが時間かかるし、漱石にしても、太宰にしても、推薦書になってると思うんで、被るでしょ?
そうなると評価される、読書感想文を書くのは至難の技。
私、読書感想文は割となんか貰ってた記憶がありますが、中学生の時は一回逆張りして、上野動物園の像の絵本あるじゃないですか…。「かわいそうなぞう」か、あれで書いて賞貰いましたね。
太宰とか漱石も読んだんですがね、題材が難しすぎる。どこを取り上げるか?がまず難しいし、漱石も太宰も、みんな読んでるんで、そこで評価される読書感想文書くのは至難の技ですよね。私も確か、人間失格で一生懸命書いたのに、全く評価されずに終わりました。
読書感想文はね、題材が生命なので、わかりやすい、誰でも論点がわかりやすい本の方がいいんだと思いました。中学生にもなって「かわいそうなぞう」選ぶ人まず居ないし、あの絵本の論点なんて1箇所じゃないですか…。あと自分の話に拡げやすい。
別に難しい本読む事が課題なんじゃなくて、そこからどう思ったか?自分の事書く事が、読書感想文の課題なんだとわかりましたよ。
「かわいそうなぞう」だと、私とネタが被ってしまいますし、もう擦り倒されたネタなので、ちょっとおすすめしない。
という事で「弟の戦争」
おすすめします。
んでね、戦争のことばっかりやだな…。戦争の事じゃなくて、そんなの3枚に収まらないから、もっと冒険物にしたいよ。って人には「海辺の王国」ですよ。
これ、本当に面白い本で、この本も半日集中すれば読めてしまいます。そして、論点がめちゃくちゃいっぱいあるので、小学校高学年から中学生の読書感想文にもってこいだと思いますね。本当に。
「海辺の王国」のネタバレをするとですね、
12歳の男の子と、犬と、おじいちゃんの話ですね。空襲で家を焼かれた男の子が、犬と、知らないおじいちゃんと、海岸沿いに日常を冒険していくストリーです。
出てくる大人もなんかいろんなキャラクターがいて、当たり前に食べれてるフィッシュアンドチップスがめちゃくちゃ美味しそうだったり、当たり前の日常が当たり前じゃないって、論点でも書けると思います。
これもですね、オチが秀逸なんですよ。
最後にとっても気のいいおじいちゃんに出会って、ハッピーエンドで終わるのか?!と思いきや。さすがロバート・ウエストール、ただじゃ終わりません。
空襲で死んでしまったと思っていた、実の家族が生きている事を知るんです。でも、手元には、知らないおじいちゃんとの信頼関係がある。おじいちゃんと犬と3人で暮らしてハッピーエンドかと思いきや、そのおじいちゃんに、実の家族が生きてるなら、そこに戻りなさいと言われて、戻るんです。
そこが、地獄なんですよ。つまり、なんというか…憧れの平和なお父さんお母さんとの生活が待ってるわけではないんです。
「弟の戦争」では、弟が夜のことを全く覚えてない。ってことで主人公のお兄ちゃんを1人置き去りにしました。
「海辺の王国」では、主人公を無理解な家族に戻す事で、1人にするです。やっと手に入れたと思ったおじいちゃんとの平和な時間が、なくなる。
そこに論点置いても、3枚なんてすぐかけちゃうと思います。ここが、他のわかりやすい冒険物との違いですよ。私がロバート・ウエストールを推したい理由がここにあるんです。
思春期の子にとって、実の親、家族が、必ずしも居心地いいものではないじゃないですが…。最近の子供は反抗期がないとかいいますけど、あると思いますよ、なにかしらは。自我の目覚めの事に全フリして3枚書いても、全然面白い、読書感想文書けると思います。主人公もちょうど12歳。自分の自我の目覚めと、家族との乖離に焦点を置いてもいい感想文になると思う。
家族、親、という、存在が、どういうものか?そういう視点で読書感想文書いても面白いと思いますね。
子どもにとって、1番最初の社会は、家族。次に学校と広がっていきますよね?
家族や親との関係性の変化が訪れる時期でもあると思うので、思春期ってのは…。そこに全フリして書いてもいいと思います。
「海辺の王国」を題材とするなら、戦争って事を主題においてももちろんいいし、自我の目覚めの事を書いてもいいし、正直、親がまともってお金で買えるものじゃなくて、当たり前の物じゃないんですよ。毒親なんて、簡単な単語ありますけどね。そういう事を書いてもいけると思います。
反抗期真っ只中の思春期のお子さんが、「海辺の王国」読んで何を思うか、知りたいですね。
絶対面白くなる。
その冒険の様子を主題にしてもいいし、そしたら自分の自我の発達の様子書いたらいいし。
ハリーにはこういう経験があって、自我が成長するけど、自分にはこういう経験があって、自我が成長した。だけで3枚軽くいけちゃうんじゃないですか?
という事で本日も無事に5000字を超えましたので、そろそろお開きに。
わかりやすい戦争の事、題材にしたいなら「弟の戦争」を。
それより、一歩踏み込むか、もしくは戦争の事じゃなくて読書感想文書きたいと思ってるなら「海辺の王国」を。
どちらも、正直そんな有名作じゃないので、被らないと思うし、書きやすいです。
そして、翻訳が新しく、読みやすい。
どちらも半日集中すれば、読めてしまうボリューム。
児童文学好きな人にとっては、有名作といえると思うので、なかなか通な選書になるのではないか?と思います。
読書感想文なんて、たかたが1200字だけでしょ?これね、本当に書き慣れてない人には長く感じると思うんだけど、書くの好きな人にとっては、めちゃくちゃ短くて、推敲かなり必要なのよ。高校生の時も、ある本で賞頂いたんだけど、かなり推敲したわ。当時はまだ直筆だったので、めちゃくちゃ面倒くさかった。10校(10回位書き直し)しました。
って事でね、私からは、「弟の戦争」と「海辺の王国」を推薦します。
本当に面白い本だし、論点も非常に持ちやすいとう点で、読書感想文におすすめします!
もうお盆もおわり!夏休み満喫してちょーだい!
柏葉幸子については別記事あげました。↓
ボリューム少なめですが…。