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忙しさは人を殺す

最近忙しい!
4月となり、新年度を迎えて新たな環境となった人も多いのかな。私もその一人だわ。

私は、引きこもりを卒業してしまった…。あの夜書いて、昼寝るという快適な環境を手放してしまった。少し残念。でも新しいことをへの挑戦でワクワクしている。

昨日の記事にも書いたのだけれど私は、働きマンの松方弘子がスキ。

あたしは仕事したなーって思って 死にたい

そのセリフが今のワタシの原動力。私も仕事したなーって思って死にたい。めちゃくちゃ長時間労働したい。泣きながら終わらない伝票処理したい。終電まであと37分んんん!!!とか言いたい。

それが文章だったら尚の事良いんだけれどもね。やっぱり文字書きたい。

まあ、それは良いとして、やはり今までよりも時間の制約が出来てしまった。時間を効率よく使わなければ間に合わなくなってしまったのだ。

じっくり考えて、じっくり書くということが、恵まれている環境であったことがはっきりとわかった。

これは少し後悔している。

そして、温厚で有名な私がひとつひとつのことにすぐにイラッとしている。さっきもコンビニで、もたつく別の客にイラッとした。

『私には時間が無いんじゃ!はやくしろや!』

そう思ってはっとした。忙しさとは、心の余裕を削っていく。普段は気にならないことが、気になってしまう。そんな生き方、私は望んでいない。

私は、最後の一秒まで笑いたい。そのために、全力をつくす。



少しだけ、昔話をしてもいいかな?

私は、高卒で就職した。同期は、何人いたかはわからないけれどいっぱいいた。新卒大量採用っていうの?そこで何人かの同期と仲良くなった。

今も連絡を取り合っている。もっともみんな、結婚したり、昇進したりで、めったに会う機会はないのだが…。

6人組。男4人の女2人。恋愛感情はなかったよ。付き合うとかもなかったし、男女の友情というより、戦友?そんな感じ。

月末は特に忙しくてね。社内SNSというのかな?Discordみたいなやつで、よくやり取りしながら残業楽しんでた。

おまえら、生きてるか?
終わる気しねーよ
むり、今日泊まり…

そんな感じ?残業は辛かったし、はやく帰りたかったけど、この同期たちのおかげで楽しく仕事をしていた。辞めたいって思っても、うまくストレスを発散してくれるサイコーの仲間だった。

中でも『彼』はとても優秀でね…最初に主任となった。性格が良くて温厚。地頭もよく、的確なアドバイスや指導。映画の世界のような期待の若きリーダーだった。

そして、幼き娘の父親でもあった。その娘の写真とエピソード…私たちは腐る程聞いた。

お前の娘、嫁にくれー!
やらん!

とか、冗談ばかり言ってたな。

何年かして、私に異動辞令が出た。彼は新規部署の立ち上げにかかりきりで少し疎遠になっていた。けれども、それは出世の証。落ち着いたら飲み会するぞって約束して、異動の日『またね!』と軽く挨拶して別れた。

そこからたった数ヶ月後、彼は死んだ。

顔は見れなかった。ぐちゃぐちゃで見ないで欲しいと言われて、それ以上何も言えなかった。彼の奥さんは気丈だったな。とても自分と同じ年とは思えないほど、しっかり喪主をしていた。

写真で見た彼の娘がすっと『パパは?ねぇパパは?』って言ってて、その幼い少女の声は、忘れられない。心に深く刺さって棘のように今も抜けない。

彼が飛び降りた場所というのは、自ら入っていかなければ到底飛び降りれない場所。防犯のカメラにもひとり歩いて行く姿が残っていた。

なんで彼が飛び降りてしまったのかはわからない。遺書のようなものはなかったし、プライベートも問題なかった。

ただ、彼は新規部署の立ち上げでとても忙しかった。でも、そんなプライベートが崩壊するような生活ずっと私たちはしていた。

唯一の心当たりは孤独。自惚れじゃないけど、私や他の同期と愚痴を言う機会を彼は、新規立ち上げで失っていた。プレッシャーもあったかもしれない。理由は謎のまま。

後悔ばかり。後悔しかない。

入社から5年目。新卒から脱皮し、一人前として歩き始めたばかり。仕事もやっと理解して楽しくなってきたところ。忙しくも充実した毎日だった。私たちは彼に追いつきたくて一生懸命仕事に打ち込んでいた。

だから、仲間内で愚痴を言い合うことも減っていた。

誰も、彼の悩みを聞いてあげられなかった。彼の変化に気づいてあげられなかった。聞いてたら、何か変わってたかもしれない。

毎年、この時期になるとみんな彼の墓に花を添える。今年も、話をしてきた。

『ばーか、本当にお前は馬鹿だよ』

墓には空の缶コーヒーが4つ置いてあった。今年は私が一番最後になってしまったようだ。

その日の前日に、私たちは必ず彼に会いに行く。

私たちはこの日、絶対に会う約束をしない。後悔ばかりが渦巻いて、彼を追いかけたくなってしまうから。それでも5人とも全員、彼に会いにくる。

そして、一番最後の奴が彼の前に置かれている缶コーヒーを全部片づけるのが暗黙の約束となっていた。

『チッ。』

私は舌打ちをして、自分の缶コーヒーを一気飲みした。私より社畜なはずなのに、みんな来るの早いわ。5つの缶コーヒーを持って、振り返りもせず私は最終バスに乗り込んだ。

墓地から駅へ向かうバス、平日のこんな時間。他の乗客は誰もいなかった。

悔しいな。10年経ったけど、まだ悔しい。手を貸すことは絶対にできたのに。彼もやりたいことが、たくさんあったはず。娘の成長をあんなにも楽しみに話をしていた。

どうして、死んでしまったの。

だから忙しい人、どうか、もうだめだって思う3歩前に立ち止まってね。忙しさは、人のキャパを広げる。でも忙しさは人を殺す。

だから、どうか、死なないでください。逃げていい。全部捨てていい。暴言を吐いていい。でも、死なないでください。最後の一秒まで笑える、そんな人生を送って下さい。

私は『仕事したなーって思って 死にたい』『笑って 死にたい』そんな人生を送るために、私は今日も仕事を頑張っている。それを忘れない。

今日はもう一本、缶コーヒーを買おうかな。

#創作大賞2024 #エッセイ部門

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