『古代生物大図鑑』(金の星社)と熊谷鉱司先生
『古代生物大図鑑』
D・ディクソン/R・マシューズ 著
小畠郁生 監修
熊谷鉱司 訳
金の星社
1997年7月
これは、私の名前がはじめて載った本です。訳した当時はまだ独身だったので、旧姓で「高野宏美」と奥付の翻訳協力者欄に掲載されています。
この頃は仙台で旅行会社に勤めながら、熊谷鉱司先生の翻訳教室に通っていました。なつかしいなあ……。
熊谷先生は、訳者紹介にもありますが、米軍基地で通訳をされていた方で、その後に翻訳家になられました。児童書だけでなく、一般書や産業分野の翻訳もなさっていたと思います。なので、翻訳の課題もバラエティに富んでいて、とても楽しかったです。でもいま思うと、やっぱり児童書の課題がいちばん楽しかったかな。
熊谷先生には1994年から2年くらい習っていました。日程表に「出張で休み」なんて書き込みがあるけど、どこに出張してたのかなあ?>自分。
訳文の評価をぱらぱらと見直したら、「B」が多かったです。「B」のハンコの中にネコちゃんが隠れていて、かわいい! 私はけっして優秀なほうではなかったので、『古代生物大図鑑』の下訳者のトライアルを受けて、10人の中のひとりに選ばれたときは、とてもとてもうれしかったです。
下訳が終わった直後、結婚を機に東京へ行くことになり、熊谷先生の教室もやめることになりました。東京でも勉強を続けて翻訳家を目指すつもりだと言ったら、先生はとても喜んでくださいました。
『古代生物大図鑑』の出版後、私はこの本の版元である金の星社さんに「下訳のお仕事などがありましたらぜひお願いします」と手紙を書きました。出版のことをほぼ何も知らなかったからこそのずうずうしさ……(笑)。金の星社の当時の編集長さんから、ていねいなお断りのはがきが来たのですが、出版社から返事をもらえたというだけでうれしかったことを覚えています。編集長さん、ありがとうございました!(いつか直接お礼が言いたいと思いつつ、早20年……)
それから数年のうちに、熊谷先生はお亡くなりになったと聞きました。2000年に私のはじめての訳書『サラの旅路』(小峰書店)が出たとき、先生に見ていただけなかったのが、とても心残りです。
翻訳の楽しさを教えてくださった熊谷鉱司先生に、心から感謝しています。