「経営」と人の「心」
2021年6月17日のツイートから
仕事で重宝するのはビジネススクールで学んだ理論や方法論。だけど困難な状況に直面する際に役に立つのは、文学や哲学で考察した人間の性(さが)や社会の慣習。個人や社会は論理性だけでは動かないので、単純なフレームワークの結果だけでは失敗する。ファクター(要因)を熟考・厳選して自分で改良する。
経営に関する知識を獲得したければ、かなり詳しく書かれた書物や、丁寧に解説した動画など、いくらでも入手できる。実際に仕事に就いて現場の経験がある人なら、自学自習でもかなり実践的な知識を得ることができる。
ビジネススクールでは、グローバルにビジネスを行うための「共通言語」を大事にするので、いわゆるターミノロジー(術語)は世界共通である。マーケティング、ファイナンス、アカウンティング、エコノミクス、ストラテジー、セールスなどの分野で、大きな枠組みから詳細な概念まで、体系化されている。
このような経営学の知見に基づき、データと統計を分析しながら様々なフレームワークに当てはめ、自社の位置を客観的に確かめたり、成長戦略を構想、立案したりして事業を展開するのだが、思い描いたように物事が進まないことがある。その際、コンサルティングに原因調査を頼んだり、事業の見直しを行ったりすることもあるだろう。
調べてみると、その原因は人の意識だったりすることも多い。ビジネスの原動力は人である。人がその気にならなければ物事は動かない。最近のMBAのプログラムでも、心理学や文化・社会学を重視している。すなわち、個々人としての人の心や、社会文化的な集団心理の研究である。
いろいろな企業のケースを読むと、現場でのプロジェクトの遂行でよくある話は、「私は聞いていない」とか「仁義を切ってない」など、社会文化的、礼節的な倫理に反しているじゃないかという現場の声や感情がネックになって、物事が動かないということ。
そのような社会文化的に共有されている礼節や倫理に抵触すると、たとえ戦略や戦術が論理的に正しくても、人の心は動かないものであり、さらに、個々人の隠れた欲求、例えば、承認欲求や昇任欲求、嫉妬や保身などがあり、遂行されようとしている業務との関わりの中で、自分の言動を調整するという性(さが)がある。
この、組織や集団社会の争いや戦いなどにおける人間の心理は、歴史学や文学、哲学で研究されており、これが案外、ビジネスに役に立つ。経営学の体系的な知見と、これらの人文学的な知見を融合させることによって、より実践的で、より成功に導けるような戦略を立てられるようになる。
要は、ファクター(要因)に、組織内外の様々なステークホルダーの多様な心まで含めて戦略を立てること。自分たちの状況に合わせて、フレームワークをカスタマイズし、改良することが成功への一歩になる。
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