【書評】エブリシングバブル 終わりと始まり 地政学とマネーの未来2024-2025 エミン・ユルアズ著
エミン・ユルアズさん: トルコ出身のエコノミストであり、グローバルストラテジストとして日本で活躍されています。1997年に初来日し、日本語を学んだ後、東京大学で生命工学の修士号を取得。その後、2006年に野村證券に入社し、M&A業務や機関投資家向けの株式業務に従事。2016年には、株式リサーチの複眼経済塾株式会社を共同設立。取締役兼塾頭として投資教育に注力。また、2024年にはレディーバードキャピタル合同会社を設立し、金融分野で活躍されています。
Youtube番組で、ユルアズさんを知りました。
日本語で、判りやすく説明されていることに驚きました。
本日は、ユルアズさんの著書
「エブリシングバブル 終わりと始まり 地政学とマネーの未来2024-2025」
をご紹介します。
本の内容
プロローグ 世界経済の未来を大局観「ストーリー」で読む
新時代の始動
*日本はデフレからインフレへ
*世界から資本が集まり2050年に日経平均50万へ
米国のあらゆる資産種別でバブルが70ー80%弾けている
*テスラ、製薬会社、高級時計、暗合資産、AIバブル、GAFAM、TSMC
地政学の時代へ
*戦後~1990年は米ソ冷戦
⇒ グローバル資本が中国・ロシアを加え、日米貿易摩擦が発生
*2013~2050年日本の黄金期へ
*米中新冷戦: グローバル資本や高度な人材が日本へ
*人口減少と自動化: 人口が多い国では人があぶれる
⇒ 日本の人口減少は追い風に
*痛みある変化は歴史の必然
新しい時代の影響は全国民に
⇒ スキルを持たない人にはきびしい時代
⇒ ベーシックインカム導入
⇒ インフレが発生
*インフレでお金の価値が目減り
⇒ 資産運用か消費が必要
*いずれ政策転換: 金利のある時代へ
Part1 2つの大国が抱える苦悩
中国の苦悩
・2023年11月 習近平の訪米時ビジネスリーダが同行せず
⇒ 中国が独裁国家に戻る
・ゼロコロナ政策の失敗・長期化する不良債権問題
・人口減少 ⇒ 社会保障費の増大
・低品質のインフラ劣化
・やがて中国バブルの破裂
⇒ 資源コモディティのデフレ
・中国をサプライチェーンから外す
⇒ 日本は人手不足
⇒ 物価は上昇
⇒ 3%インフレが続く
・企業が中国から逃げる(反スパイ法 台湾有事)
⇒ TSMC熊本工場: 台湾有事の備え
アメリカの苦悩
・景気後退局面 失業率の上昇
・アメリカの消費はコロナの補助金が原資(あと少ししか残っていない)
・ドル高と金利高 インフレ抑制のため
⇒ 不動産市況が悪化 インフレを抑制できない
⇒ ハードランディングする可能性が高い
⇒ GAFAMが破綻するかもしれない
米中新冷戦の行方
・経済覇権をめぐる争い
・過去、米国政権が中国を甘やかしてきた
⇒ トランプ政権は大型関税で厳しい対中政策
・米中間の安全保障問題
⇒ 南シナ海、 台湾海峡
・2024年11月の大統領選挙が大きな転換点
Part2世界の地政学リスクを読み解く
地政学リスクを読み解く視点
パワーポリテックス: 権力政治、武力政治(中国とロシア)
歴史的観点: 宗教的観点: 米国と中東3か国の根深い遺恨
アメリカ - イスラエル vs 中東諸国 - 中国
ハマスとイスラエルの紛争 ⇒ ロシアと中国に有利
アメリカはウクライナと同時に中東に注力する必要があるため
イスラム世界の最大の脅威: イスラム主義(=聖教一致)= 民主主義の敵
日本の危機
・イスラム諸国の反発 エネルギー危機を招く
・米国が中近東に注力 アジアが手薄になる
フィリピン: 中国に狙われる
中国デカップリング: ベトナム・メキシコに有利
ロシアの急所
・技術的な隔離政策・少数民族の反乱問題(ウクライナで多数戦死)
・資源(鉱物、水)を中国に狙われる
・中国が沿岸州の領土を狙い、海洋進出を目指す
中東(サウジアラビアとイラン)
若い人が多い
インターネット環境が整っている
イラン
・高失業率 大規模なデモ 革命の歴史 政治が懸念材料
サウジアラビア
・原油に依存しない国の発展モデルが必要
・政治が懸念材料
・イスラエルと国交回復直前だったが、イランが背後でハマスを使い妨害
インド
・ 無条件で欧米諸国に与するとは限らない
・ロシアと原油や武器取引で深い関係
・大国意識 第三世界のリーダーを目指す
・モディ首相の ヒンドゥー・ナショナリズム
⇒ 景気が後退すると宗教対立が表面化する可能性
⇒ グローバル資本の流入が止まるリスクがある
パキスタン
・インドと対立
・中国と深い関係 武器は米国製
Part3 新冷戦の中で日本が生き残るための活路を考える
身近になる戦争
・ウクライナーロシア
・イスラエルーパレスチナ
・民主国家 対 専制主義国家
・台湾有事のリスク
⇒ 中国との交易が途絶える
⇒ 中東産原油の高騰
⇒ 食料 サイバーセキュリティへの対応が必要
新冷戦
・日本にチャンス 人モノ金・投資が中国から日本へ
・日本のソフトパワーが外国人を惹きつける
・時代が政治家を作る
⇒ 納税者の権利を守る政治
⇒ 税金が高い
⇒ 中産階級に恩恵を与える政策・学費無償化が必要
・AIの本格実装: 単純作業が置き換えられる
⇒ 日本の人口減少が、メリットに
⇒ 仕事のない人はベーシックインカム制度
・地政学リスク
⇒ インフレが加速 現金 ⇒ 金・不動産・株式
・今後の投資
⇒ 米国債・金・不動産
日本で起こるインフレの先は?
⇒ 巨大な米国市場を取り込む必要がある
日本株
⇒ 地政学的理由から上昇する
⇒ 割安な株 インフレで30万円に
⇒ グローバル資本が日本株に投資
感想
日頃あまり気にしていない国際情勢ですが、実生活にも大きく影響を受けたことを振り返ってみます。
1984年に入社したときは、¥240/$。
工場で、輸出モデルを生産していました。
冷戦が終わると、レートが半減。
東南アジアに拠点を移すことになりました。
¥80/$になった時点で、国内工場を閉鎖。
その後、90%の生産を中国に移管しました。
国内は人余り状態で、いまだに業績も低空飛行です。
日本の停滞は、「円高+国際資本の中国への投資+デフレ政策」の影響が大きかったのではないかと思います。
ようやくその動きが、逆転し始めています。
中国デカップリングの流れ(日本はかなり遅れているようですが‥)
今回の衆議院銀選挙で、自公大敗。
国民民主が、初めて「減税政策」を掲げました。
ようやく納税者の権利を守る政治が実現できるかもしれません。
いい流れなのですが、台湾海峡・イスラエルとイランの戦争がリスク。
アメリカの大統領選挙も、どちらが勝っても混乱しそうです。
日経平均30万円になってくれればありがたいのですが、政治のトップに実現できる力があるのかどうか?
あるいは、そのようなトップが出てきてくれるのかが心配です。
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