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「企業内診断士のパラレルキャリア」を考える

 先月の23日、会計幹事を勤めている研究会「企業内診断士フォーラム(KSF)」の定例会がありました。「企業内診断士の輪を広げる楽しいチーム」と同様、企業内診断士の可能性を広げていくことを目指して活動している会です。

そこに、慶野英里名さんをお招きして講演いただき、その後、KSF代表の堀口さんとパネルディスカッションしてもらいました(一応、ファシリテーターは僕でした)。
慶野さんは、出版社にフルタイムで勤務しながら、2018年に「パラレルキャリア研究所」を設立し、パラレルキャリアに関する記事の企画・執筆、法人向けやフリーランス向けのPRコンサルティングなど多方面で活躍されている方です。

■独立か、企業内か

中小企業診断士の場合、得てして「独立か、企業内か」との選択になりがちです。僕が診断士になった頃はまだまだ副業を認めるような企業も少なく、企業内診断士は、報酬無しで企業支援をして、更新のための実務ポイントを集めるのが多かったのです。無報酬で支援をすることを美談として取り扱われ記事が出たときには、強い違和感を覚えました。

そういう意味ではこの10年でずいぶん社会は変わったなあ、と思います。もう「独立か、企業内か」という二者択一のように考える必要はない時代です。まさに「パラレルキャリア」を積み重ねていける社会的な下地はできつつあると思います。ただ、そうなったらなったで、若干の危惧も覚えてきました。

■自分のためのキャリアアップ

私は働き方が多様化するのは賛成ですし、その意味で副業解禁され、パラレルキャリアが推奨されるのも歓迎しています。ただ、それを語るときの力点が、自分の働き方やキャリアアップにあるのはどうなんだろうか、と思ってきました。

もちろん、入り口はそれで構わない。自分のスキルを向上させ、キャリアアップを図りたいと考えるのは悪いことではありません。しかし、その視点のままではどこまで行っても趣味の世界です。自分以外の人にバリューを提供していかなくては、仕事になりません。努力して向上させたスキルは、他の人に価値を提供するために使うことで活きてきますし、マネタイズもできます。そうなってこその「パラレルキャリア」だと思うのです。

慶野さんは「自分視点ではなく顧客視点」と言われていました。まさにこの視点こそが大切だと思います。
僕は、真のプロフェッショナルは「他人を喜ばせたり楽しませたりするために自分を活かせる人」だと定義しています。むろん、滅私奉公の意味ではありません。「自分を活かす」とは、自分のやりたいこと、好きなこと、得意なことを「活かし」て、他人、ひいては社会に価値を提供する。そしてそのことの対価をいただく。それが真のプロフェッショナルだと思うのです。

■すべてが本業と言えるように

副業といえども仕事です。仕事である以上、プロフェッショナルを目指すべきだと思います。副業だからアマチュアで良いとはなりません。受け取る人から見れば、本業か副業かは関係ありませんから。本来からいえば、パラレルキャリア、つまり並行しているキャリアのすべてが「本業」だ、と言えるくらいになってこそ、本当の「パラレルキャリア」と言えるのではない、と思っているのです。

初めから高いハードルを設定してしまい、殻に閉じこもってなにもしなくなるより、とにかく一歩踏み出す方が良いと思っているので、最初は自分視点で始めるのも良いと思います。ただ、本当に「キャリア」を積むのであれば、どこかで他人への価値の提供を意識していく必要があると思っています。(だから、独立診断士=プロコン、という使い方は嫌いなのです)

■追記

なお、無償での活動についてですが、ボランティアで活動する仕組みがある程度できているところ、たとえば災害復興支援のような場所であれば、自分のスキルを無償で提供するのは立派なことだと思います。
しかし、独立診断士や他の士業の方が有償で請け負うような仕事を「僕は企業内なので、無償で(あるいは格安で)やります」となれば話は別です。それは社会全体のお金の流れを妨げる、社会的にマイナスの価値を生むような行為だと僕は考えています。

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