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戯曲を公開しようと思った理由と、作品内容について少し。
水野はつねと申します。ペンネームです。
演劇をやるにあたっての肩書は、一応劇作家・演出家としています。
詩や短歌も時々書きます。
以前noteに放流した何気ない詩がピックアップされて、結構多くの方に見て頂けて大喜びしたこともありました。→ 「不可視光」
noteは作品を集積する場にしていたけれど、今回は演劇をやるにあたって、少し具体的な話もしようかなと思い、キーボードに向かっています。
戯曲を公開しようと思った理由
5月5日~5月8日にかけて、自身で主宰している演劇プロデュースユニット「くちびるに硫酸」で「骨を捨てる」という作品を上演するにあたり、
4月中旬から上演直前まで、戯曲を全文公開することにしました。
さしあたって、やっぱり何か、意図のご説明があったほうがいいだろうな。と思っています。
(そもそも戯曲とはなんぞやと思う方もいるかしら。
とりあえずは、演劇の上演台本、と思ってもらえばいいものです)
【戯曲を全文公開します】
— くちびるに硫酸 (@H2SO4onyourlips) April 15, 2022
次回公演「骨を捨てる」は家庭内暴力とそのフラッシュバックの描写を含む作品です。
内容のご確認が必要な方のために、本日から5月4日まで上演台本を限定公開いたします。
下記URLよりご確認ください。
▶️https://t.co/3CbAsqSL7Y
※作品の保存・記録・転用は厳禁です。
↑こんな感じでTwitterなどを経由して公開しています。
演劇では、筋書ならみんなが知っているような有名なレパートリーが何度も上演され、何度も違った形で観客に観られる文化があります。
とはいえ、今回が初演の新作をやるにあたって、全文を出すというのはとんでもないネタバラシだよな、と自分でもちょっと思います。
人によっては極端な話、見に来る意味がなくならない?とか、いろいろ不安な気持ちも正直ありました。
それでも踏み切った理由とか、後に続く団体がいてくれるといいな、とか、そういうことを書こうかなと思っています。
① トリガーの注意書きとして
最近、つらいトラウマを呼び起こしてしまうような描写に関して、事前に警告文などが表示されることが増えてきました。
Twitterの「センシティブ画像」指定なんかも広義ではそういうことかと思いますし、
以前「つくたべ」に掲載されていた警告も、時代だな、と率直に思いました(大好きな作品です)。
調子がよくないときにふいにニュースや創作の中のトリガーに遭遇してメンタルヘルスを損なうような、「不幸な事故」を防ぐことができるなら、まあやったほうがいいよな、と考えています。
そのためだけなら描写がある旨の告知をするだけでもよかったんですが。
ただ、注意書きだけでは観劇をためらってしまう人にも、
作品全文があれば、「このラストなら、生で見たい」と思ってもらえるかもしれない。届けられるかもしれない。
不安を感じる人には、もしよかったら読んで判断してもらいたい、と思ったのが、公開に踏み切った一番の理由です。
② 値踏みをしてもらうため
公開を決めたときに一番恐ろしかったのが「さほどのトラウマはなく、単に作品に興味がある」人も確実に読みに来る、ということでした。
別にそれ自体がダメなことでは全くないのですが、人目に触れるということの一般的なリスク、というか。
上演前から、正当な批判ではない何らかの嫌がらせとして、作品へのネタバレ、誹謗中傷などがSNSに大量に投稿されたりする可能性すら否定はできないわけです。
ただ、「少しでも知ってもらうきっかけになれば」、という藁にもすがるような気持ちもあったことが、公開をためらわない理由になりました。
「くちびるに硫酸」、ユニット4回目の公演のわりに知名度が皆無だからです。
最初の2回は大学のあった京都を拠点に、友だちを集めたり、近い立場の人を募ってオーディションしたりしながら上演。
大学卒業と同時に立ち上げたものの、学生劇団に毛も生えないぐらいのユニットでした。
にもかかわらず、SNSには動員数から考えれば驚くべき量の感想を頂けたりもして、非常にありがたかったですが…。
公開ゲネプロ観てきました。
— Rina(りゅーせい) (@ms4ymkh11) March 17, 2017
ファンタジー小説が好きな人にオススメしたい。
私はこの作品、好きです。
物語の遠くにいるような、近くにいるような、そんな感覚になる美術、演出にも注目です。
今は、本を1本読み終えたような、穏やかな気持ちです。#くちびるに硫酸 https://t.co/dmUV3r7x0U
#くちびるに硫酸#傘の尖り
— るび (@torumuseum) February 11, 2018
「くちびるに硫酸」さん『傘の尖り』を観ました。日常と非日常を絶妙にブレンドした繊細優美な作風。性的な場面も気品があって好感度は極めて高い。その反面、体温を感じさせず、まるで海の底から眺めている印象。青く閉ざされた世界観。ふわりとした不思議な鑑賞体験。
#くちびるに硫酸#傘の尖り
— るび (@torumuseum) February 11, 2018
シンプルな舞台装置に、動的な要素を極力廃した進行。言葉のやり取りに比重を置いて、それらが織り成す会話を丁寧な筆致で描ききった快作。脚本と演出の技が光る。主宰・水野はつねさんのオリジナルであれば驚きです。是非とも普段観劇しない方に観ていただきたいです。
遅ればせながら…📝✨
— 垣内 彩香 (@ayakan1gou) February 14, 2018
くちびるに硫酸『傘の尖り』を観てきました🔵
のんちゃんのお芝居が観れるぞ〜、と軽い気持ちで行ったらめちゃんこ面白くてびっくり仰天、度肝を抜かれました😳‼️思わず長文LINEしてしまった💬
チケット代は安過ぎて問題☺️💭 pic.twitter.com/susXpdu6fm
いくつか勝手に引用させていただいちゃいました。
あれが、学生に毛の生えなかった私が今も演劇を続けようかなと思う原動力になっています。
そして前回#3から(演劇とまるで関係ない理由で)東京に出てきましたが、こちらは仲良くしていただいている gekidanU さんでプロデュースしてもらった企画。
民家を使った公演で、キャパもあまり多くなかったんですが、キッチンで調理をしながらお芝居ができるの最高でした。
毎度お世話になっているアトリエ5-25-6で、くちびるに硫酸「あの星にとどかない」を見てきました。とても、良かった。影も光も美しかったな。きゅーっと、直視できないくらい切ない瞬間がたくさんありました。反芻したい言葉がたくさんある。夜に見たらより美しくて耐えられなかったかもしれないです。 pic.twitter.com/RGKS3peQEd
— 下村真梨奈 (@marinam620) November 2, 2019
こちらも非常にたくさんのぐっとくる感想ツイートを頂きましたが(#4主演の下村さんとのご縁もここから)、
とはいえ、gekidanUさんのことが好きで見に来てくれた人のどれだけが私のユニットの名を覚えていてくれるか、って、正直結構難しいなと思います。
とどめに、2019年にこの#3をやりきったあと、2020年初頭からはコロナで世間が大変なことに。
夫とふたり、それなりに会社員をやりながら演劇をしています。
クオリティに妥協しない代わり、年に1回程度のスローペースでの上演を目標にしているのですが……
作品の制作は本気の本気でやりたい精神性はともかくとして、はたから見ればどう考えても「趣味」性が高い演劇とのかかわり方をしている立場の私が、あえてリスクを取ってあの時期に演劇をやることは考えにくかったわけです。
……結局、今回、なんとユニットとしてはおよそ2年6ヵ月ぶりの公演。
新作をやるのは4年3ヵ月ぶり。しかも東京で新作やるのは初めてです。
そんなの、誰も知っているはずがない。覚えているはずがない。
生来のあがり症もあって、公開からこちら、すっごく緊張していますが、
ネタバレをいとわないタイプの人は、戯曲からでも読んでみてほしいな、と。
よかったら、くちびるに硫酸・水野はつねを、知ってほしいです。
③ 京都へのお便りとして
今回、京都の劇団「人間座」が主催されている「田畑実戯曲賞」を頂いた作品ですが、実は京都での受賞記念公演は白紙の状態です。
私のほか、キャストもそれぞれに本業がある中で、配信公演のために京都へ行くというのは、結構大変なのではないか。
少なくとも、私が演出したものを現地へ持っていくのは現実問題として難しそうで、切ない気持ちなのが現状です。
舞台映像を販売できる状態にするにはコストがどう考えても見合わないので、配信の予定も今のところしておらず……
誰かにお預けして京都で上演してもらう、ということができればすごく嬉しいな、と思いながら、今はまだ私が困り果てている段階です。
(どなたか、実績ある方、京都で演出してくれませんか……ご連絡ください……。)
そういう中で、ひとまず京都で一緒にやってくれた同士の人たちへの報告みたいな意味合いとしても、とりあえず公開しておけばチェックしてもらえるかもしれないな、というのも、ほんの少し。
もうずいぶん連絡取らなくなってきた人も、みんな元気ですか。
またいつか一緒にやりたい人がたくさんいます。
公開に際しての具体的な仕掛け
ここからは少し話を変えて、一応メモ程度ですがやったことを。
具体的な操作にはほとんど触れていませんがお許しください。
今回はクッションページにGoogleフォーム、作品pdfのUP用にGoogleドライブを使用しました。
★Googleフォームを使用した理由
センシティブな情報にも結び付きかねないですし、閲覧される方の個人情報はひとつも取得したくなかったのですが、
公開の意義の有無≒閲覧数は確認したかったので、ワンクッションはサイトやnoteにはせず、Googleフォームにしました。
煩雑な注意書きに「同意する」とつけるだけでも少々気持ちが変わるよね、ということも理由です。(楽天市場で売ってる商品とか、細かい注意書きは同意しないと買えないように項目選択肢になってたりしますよね。)
![](https://assets.st-note.com/img/1650542154299-OyYepM1QnT.png?width=1200)
チェックボックス型の問いをひとつだけ設定
![](https://assets.st-note.com/img/1650542670542-v1WNAh1uSe.png?width=1200)
に、シェア用のドライブのURLを貼りつけ
メールアドレスの収集など余計な機能はすべてOFFに
結果、4/21現在、予約数よりも閲覧数の方が若干多いぐらいの状況になっています。
結構需要はあるのかもしれない、ということだけお伝えしておきます。
★Googleドライブを使用した理由
ファイルごとにダウンロードや保存ができないように設定を変えられることを知ったので、ドライブで十分じゃん、と。
縦書きpdfでUPしてこの保存に関わる設定を変更しておけば、ファイルそのものが誰かの手元にわたって変な使われ方する可能性はぐっと下がると思います。
上記のフォームやドライブの設定について細かいやり方が知りたい人は別途ググってみてください。
このとおり贅肉の多い文を書くので、たぶん細部の説明はうまくないのです。
作品内容について
さて、ちゃんとしたステートメントや事例共有をしながら公演のPRができてる記事になれば……と思って書いてきましたが、PRの魂胆がちょっとバレバレで恐縮です。
もう少し作品に関して、アーティストらしい話もしたいと思います。
今回上演する「骨を捨てる」は、
ある姉妹が、死んだ母の遺骨を、母の故郷の海に捨てに行く。筋としては、ただそれだけの物語です。
長年の家族関係の中で、たとえば命にかかわるような身体的虐待やネグレクトがあったわけではなくったって、それなりの深傷を負って、同情、愛情、恨み、憎しみ、さまざまな思いが去来する、そういう苦しみを、想像できる人もできない人もいると思います。
許すのか、許さないのか、どこで折り合いをつけるのか。
「落とし前」をつけに行く物語として書きました。
語弊をやや恐れながらも言うと、「警告にドキッとする」人にこそ何かを渡せるかもしれない作品だから、戯曲公開に踏み切りました。
ぜひいろんな方に見ていただければと思っています。
お薦め演劇・ミュージカルのクチコミサイト「CoRich舞台芸術!」さんに今公演の特設ページを掲載していただいています。。
「観たい!」と書きこんでいただくと非常にモチベーション等の助けになりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
公演情報
くちびるに硫酸 #4「骨を捨てる」
作・演出 水野はつね
2022/5/5-5/8
シアター・バビロンの流れのほとりにて
公演PV
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「あたしねえ。たぶん、あんたたちさえいなきゃ幸せだったのよ」
姉妹二人、郊外でやや貧しく暮らすハルとミオ。
酒を飲みながらの思いつきで、死んだ母・依里子の遺骨を、彼女の故郷である北海道の海に捨てに行くことにする。
葬式をあげてやれなかった母への複雑な思いを抱えながら、二人は砂浜を目指し、カーフェリーで北上する。
第4回 人間座 田畑実戯曲賞受賞作。
●キャスト
下村真梨奈
亀井理沙
石川久美子
佐藤英征
●日時・タイムテーブル
5/5 ◇14:00~ / 19:00~
5/6 19:00~
5/7 14:00~ / 19:00~
5/8 14:00~
◇はプレビュー公演
※上演時間は70分を予定
●チケット
前売3,000円 / 当日3,500円
◇プレビュー公演 (5/5 14:00~)
前売り2,000円 / 当日2,500円
※プレビュー公演へお越しのお客様は、SNSへ口コミのご投稿をお願いいたします
●ご予約
https://www.quartet-online.net/ticket/onyourlips4
予約システムはアクセス集中などによってつながりにくくなることがございます。メールやSNSのDM等でもご予約を承りますので、お気軽にお問い合わせくださいませ。
●スタッフ
舞台監督 宮井浩行
美術制作 西村香音
照明 電気マグロ(gekidanU)
音響 ツカダソラ
音楽 鈴木明日歌(gekidanU)
制作 渡辺奈都 柿本理人
映像 ナナシママリア
小道具 椎木美月
フライヤーデザイン 内村かなこ
フライヤー写真提供 ナナシママリア
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【くちびるに硫酸】
劇作家・演出家の水野はつねによる個人ユニット。
2017年3月、京都市内にて旗揚げ。2018年夏頃まで京都市・大津市を拠点に活動。
その後、首都圏へ活動拠点を移し、これまで3度の公演を行う。
企画・脚本・演出を水野が務めるプロデュース公演を行っており、少女漫画や近現代の詩歌に影響を受けた作風が特徴。愛や性、家族の在り方に関心を持った制作を行っており、「避けがたい悲しみの受容」が大きなテーマとして通底する。
【水野はつね(みずの・-)】
1992年、滋賀県生まれ。
2008年、高校入学を機に本格的に演劇を始める。
同志社大学の演劇サークルを経て、2017年3月に個人ユニット「くちびるに硫酸」を旗揚げ。
2021年、戯曲『骨を捨てる』で第4回 人間座 田畑実戯曲賞を受賞。
●サイト/SNS/ご連絡先
公式サイト:https://h2so4onyourlips.me
Twitter:@H2SO4onyourlips
Instagram:@h2so4onyourlips
メールアドレス:h2so4onyourlips@gmail.com