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水野はつね
2021年10月10日 23:07
漱いだ口から淡紅いちじくの色を受け止めきれずに吐き出した口紅を食らって生きることになんの疑いも持たなければよかった拒んだのはいつだったかなぜだっただろうかガーデニア、雨に焦がれるあの白い花がわたしの鼻先を撲りつけるたびガラス越しの影が走っていく校舎裏で泣いていた日も庭のリラの木がはじめて咲いた日も雨を浴びて誰もいない坂で歌った日もいつも輪郭をあやふやにして誰か