家族になる

私は結婚していないし、しそうにもないので周りの友人の話を聞くばかりで実際のところは分からないが、多くの友人は義理の実家との付き合いにプンスカ言っているのをよく聞く。

数十年生きてきて、つい最近知り合った他人と簡単に分かり合える方が難しいとは思うが、関係性上、密に付き合う必要に迫られる場合が多く大変そうだな〜と思う。

意地悪されたりきつく当たられたりすれば腹が立つのはもちろん、良くされすぎてもまた気を遣うとも聞くので驚く。そもそも「良さ」の感覚が人によって異なり、相手が「よかれと思ったこと」が、受け取り手には「余計なお世話」になることも往々にしてあるわけで、人付き合いの難しさを感じる。


我が家の場合は、父が婿で、妻である母の両親と同居していた。

祖父の話ぶりから察するに、祖父はあまり父のことは好きではなかった模様。でも、あんな口うるさいクソジジイ(おっとお口がすぎますよ)のいる家に婿に来てくれるなんてありがたいことだと思うが本人は気付いていないようだった。(祖父とはとても仲良しでしたので悪しからず。)

祖母は、父本人に対しては愛想良く〇〇さんと、さん付で呼んでいたが、陰では呼び捨てにしていて何だか面白かった。

こんな感じだったので父は居づらかったかもしれない。図々しい性格であまり気にしないタイプだったので、どこ吹く風といった感じではあったが、心の内は分かりかねる。

農家育ちの父からすると、商家の我が家の人たちは裏表があり打算的に映り虫が好かないようだった。互いの意見を伺う限り、ジャッジマン私としては、どっちもどっちという評価を下した。それでも、それなりに上手く生活していたとは思う。


晩年、入退院を繰り返していた父の見舞いに行ったとき、「あ〜早く帰って、ばあさんの味噌汁が飲みたい」とこぼしたことがあった。

それはすごく意外だった。父は食べ物の好き嫌いを口にしたことはなく、文句こそ言わないが特に美味しいと口にしているのも少なくとも私は見たことがなかった。

その父が、入院生活を脱してまず食べたいのが、義母の作る味噌汁。

その時、何となくではあるが、「家族になる」とはこういうことなのかもしれないな、と思った。

確か父の母、私のおばあちゃんは人に振舞うのが好きで料理上手だったはずだ。対して、こちらのおばあちゃんはお世辞にも料理上手と評されるタイプではなかった。

それでも毎朝のお味噌汁は祖母が作っていた。

父にとって、家の居心地がどうだったのかはもう分からないが、お味噌汁を気に入っていたことは確かだ。それはそれで良かったかな、と思う。

ただ、その時、母の手料理を挙げなかったことに対しては、少しばかり、母が不憫だったなと今振り返っても思う。


おわり

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