「西部劇のテイストで、現代の問題を描く活劇」・・・『広島ジャンゴ』シアターコクーンほか
カープの応援歌の中、俳優たちの光る演技が、現代社会の苦悩をあぶり出していく。
舞台は、現代の広島にあるブラック企業と、「ヒロシマ」という名前の西部の街。それに、狂言回しでもある「木村」の妄想の世界が入り乱れる。
困窮する人々が、悪徳政治家にまさしく命を握られ、
真面目に問題に立ち向かおうとする者たちが、その暴力と策謀により、崇高な精神も肉体も、おのれの良心さえも裏切らざるを得ない状況に追い詰められてしまう。
そして絶望の果てに現れるものは・・・
まだまだ公演が続くので、ネタバレにならないように書くのが
もどかしいほど、作品としての仕掛けが多彩で楽しい。
特に面白いと思ったのは、妄想と現実の二つの世界を
きっちりと分けてしまわないところである。
狂言回しでもあり、物語のキーでもある「木村」は、それぞれの世界で
特異点として存在させている。さらに妄想と現実を切り替える場面転換にも
最新の注意を払っている。
そのようにして舞台上に展開する、様々な「理不尽」は、現代にそのまま共通するものとして受け止める事も出来るだろう。
そして、クライマックス。
次々に発せられる力強い珠玉のセリフが、見る者の心に力強く響いてくる。
それらはそのまま、未来へのメッセージとして観客に届けられるのだ。
是非、実際に体験していただきたいので、
ここでは1つだけ紹介するにとどめたい。それはこんな一言だ。
「誰かのせいにするな!」
ここまで書くと妙に重い演劇のように誤解される方がいるかもしれないが
エンターテインメントとして非常に楽しめるのは間違いないし、軽くはない。
終演後、カーテンコールでの天海祐希さんと鈴木亮平さんの
お茶目な明るさが、舞台の重厚さの向こうにある、未来への救いを象徴しているようにも思えた。
お時間のある方は是非。
出演は、天海祐希、鈴木亮平、中村トオル、藤井隆、芋生悠、中村ゆり、野村周平ほか
4月30日まで東京渋谷シアターコクーンにて
その後は5月6日から16日まで大阪森ノ宮ピロティホールにて
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