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絵画に秘められた恐怖は、人の心の恐怖を現実のものとして、ここに展開する・・・舞台「怖い絵」。


「怖い絵」が演劇になった・・・そう聞いて、私は困惑した。

あの「怖い絵」の事だろうか。
だとしたら、どの絵画の話を演劇にしたのか?
時代は? 人物は? 舞台背景は? 疑問が次々に湧き上がってくる。

私がここで思っている「怖い絵」、そして皆さんが考えている「怖い絵」は、おそらく同じであろう。

2017年に上野の森美術館などで公開された「怖い絵」展で知られ、
美術界の一大ブームとなった「怖い絵」。

恐ろしい結末を想像させる絵画や、制作・改変の過程において
恐ろしいエピソードを内包している絵画の事である。

この演劇は、その「怖い絵」をキーアイテムにして、
「怖い人間」を描き出していく。

幾重にも重なった絵画の秘密を、登場人物たちが、まさに薄皮を剝ぐように解き明かしていくにつれて、人間たちの恐ろしい秘密も明らかになっていくのだ。

作演出は、放送作家として有名な 鈴木おさむ。出演は、尾上松也、比嘉愛未、佐藤寛太(劇団EXILE)、崎山つばさ、寺脇康文。
ブームの大元でもある「怖い絵」シリーズの作者・中野京子氏が監修に入っている。
額縁が重なったシンプルな舞台装置の中に、モチーフとなっている「怖い絵」が登場し、物語は展開する。内容についての詳細は避けるが、「怖い絵」が見事に物語の世界に取り込まれている。
絵画に秘められている恐怖が、人間の恐怖として、舞台上に現れるのである。

もう一つ見逃せないのは、芸達者の出演者たちによるアドリブの嵐。
特に尾上松也と寺脇康文によるアドリブの応酬は、実に楽しい。
舞台上にいる他の出演者たちが、笑いを堪えているのを見るのも面白い。

しかし、この舞台の魅力は、そんなよくある軽演劇のコメディのような枠組みだけでは終わらない。

後半に入ると、各役者の見せ場が設けられていて、鬼気迫る演技が舞台上に満ち溢れ、実に見ごたえがある。

特に、比嘉愛未の普段TVなどで見られない演技は必見である。この芝居一つで、彼女の新たな一面を発見しファンになる人は多いだろう。

舞台は終了したが、配信はまだ数日行われている。

ご興味のある方は、「舞台 怖い絵」で検索してみて欲しい。

*敬称略ですみません。


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夢乃玉堂
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