「恐ろしいまでの落語の底力を突き付けられる」・・・きょんとちば Vol.5-マイノリ60s
「きょんとちば Vol.5-マイノリ60s-」24日(木)まで。紀伊國屋ホール
もちろん、ずっと一人でやる芸だということは重々承知だが、
これほどの差があるとは。
もし一人芝居をやったことがある人が、この一席を見たならば、
少なからぬ衝撃を受けることだろう。
舞台に上がる側でなくて良かった、と思った瞬間、書き手としての自分の未熟さに
嫌気がする。さらに精進しなければ、と褌を締めなおした。
さて、肝心の内容だが、チラシなどに乗っている範囲で紹介すると、
落語界屈指の実力と人気を誇る柳家喬太郎と、女優・劇作家・演出家として活躍中の千葉雅子による二人会「きょんとちば」シリーズの第5回目で、
喬太郎師匠の落語2席と千葉雅子氏も出演する短編芝居の会。
特に喬太郎師匠のトリ、「マイノリ60s」は絶品である。
2011年に千葉が喬太郎に描き下ろした新作落語『マイノリ』(マイノリティの意)の続編で、
落語研究会出身の川上光男と演劇研究会出身の杉下陽子との25年間にわたる交流の物語。
60歳の目線で、永遠と思えた青春や純粋さを捉え直して書いてみたい」という千葉の熱い思いが結実した作品だ。
作品の構成は、複雑であり、時間のジャンプが頻繁にあるのだが、
喬太郎師匠はそれを全く混乱させず、ほんの小さなしぐさや、語りのトーンなどで表現していく。
それは全く見事としか言いようがない。
ちょっと想像してみて欲しい。
ある20歳台の男性が、場面転換の効果音も、画面のエフェクトもなく、
次の瞬間に25年後の姿になっている場面を。
言葉で聞いただけでは簡単には想像できないだろう。
できたとしても、過去から現代に来る一方通行で、
何度も往復できるものではない。
それが、落語としてたった一人で演じられているのだ。
『マイノリ60s』は、あらゆる役者、芝居関係者に見て頂きたい。
落語家と演劇人との素晴らしいコラボレーションである。
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