「田んぼ道」・・・農道で遭遇したものは。超ショート怪談。
「田んぼ道」
夜、農協の寄り合いがあって遅くなり、自宅に向かう農道を軽トラで走っていた。
秋の虫の声が聞こえる静かな田んぼに囲まれた道。
月は雲に隠れていたが、走り慣れた道だ。
特に困るような事は無かった・・・はずだった。
少し上り坂になった細い道に差し掛かると、
白い服を着た中学生くらいの女の子が、道の端を一人で歩いていた。
「こんな時間に、コンビニにでも行ったのかな」
最近は真夜中でもコンビニくらいまで買い物にいく中高生は多い。
自分たちとは時代が違うのかな、などと思いながらも、
その横を注意深く追い抜いた。
女の子はこちらに注意を払う様子もなく、無表情で歩き続けている。
バックミラーに映る姿を見ても気になる。
心配で15メートルほど離れたところで軽トラを停め、
声を掛けようとドアに手を掛けた時だ。
軽トラのすぐ横を後ろから来た大型のトラクターが車が通り抜けた。
「何やってんだ!そんなの乗せたらダメだぞ!」
すれ違いざまトラクターの運転手に怒鳴られた。
ハッとして振り返ると、女の子は笑って立っている。
その目には光が無く、ただどこまでも深い窪みがあるだけだった。
「うわ~!」
悲鳴を上げて軽トラを走らせた。
走らせながら思った。
すぐ先を走っているはずのトラクターが見えない。
それに、バックミラーで後ろを見ていたはずなのに、
横を通り過ぎるまで、トラクターに気付かなかった。
広い田んぼの中だ。隠れる所などない。
ようやく家の明かりが見えた。
そのまま駐車場に入れるのは、何となく嫌な感じがしたので、
とりあえず手前の広場に車を停めた。
エンジンを止めて外に出ると、
先ほどの女の子が、軽トラの荷台に立って笑っていた。
その後の事は全く覚えていない。
次に気付いたのは朝だった。
広場の軽トラの脇で横になっているのを見つけられたのだ。
おわり
#朗読 #怪談 #田んぼ #道 #少女 #女の子 #夜中 #恐怖 #ショートショート #怖い #軽トラ #トラクター #恐怖 #怪奇 #乗せて #スキしてみて