「喪失の向こうに」・・・失ってから。その後に続くものこそ。
『すがりつく女』
「来年も再来年も、一緒に誕生日を祝おうねって言ったのに
絶対に君を一人にしないって、あなた私に誓ったのに・・・」
彼女は夫の棺桶にすがりつき、泣きじゃくった。
葬祭場にいた参列者は、全員もらい泣きをしていた。
だが、私は知っている。彼女の「夫」の葬式は・・・
これで4回目だ。
おわり
この短いお話は当初、不幸に絡み取られる女、
もしくは不幸を絡み取る女の話として書いた。
しかし、超ショートは、読む人の心の在り方で、全く違って見える。
今は、何があっても生き抜こうとする逞しい女の後ろ姿。という風に
読み取ることも出来るのだ。
今、この作品を再度掲載したのは、
最近、親戚の一人が亡くなったからだ。
まだまだ若いと思っていたのに、残念な事だった。
残された家族はひどく落ち込んでいた。
それまで陰で色々言っていた者も
その衰弱ぶりを見て、心配する言葉を口にした。
出来れば、この作品の「彼女」のように、
何度でも立ち上がって前を向いて生きて欲しい。
私は思う。
残された者は、先に逝ってしまった人の分まで
生き抜かなければならないのだ。
何があっても、悲しみを悲しみで安易に紡いではならない。
一人きりであろうとも、生きてきた家族を感じて明日を生きるのだ。
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