マガジンのカバー画像

玉堂デスヨ。

1,320
癒しの日常と、気がついたあの事。人生が豊かになる一瞬。 怪談、恋愛以外の作品も。
運営しているクリエイター

2023年11月の記事一覧

「やっぱり何かある」・・・ある怪談会の事

「ありがとうぁみの渋谷怪談夜会」10周年。 この怪談会には、もう何年も通い続けている。 勿論、怪談好きというのもあるが、 主宰の「ぁみ」さんの怪談の語り口とそのキャラクターがとても好きだ。 今回もぁみさんに負けず劣らずの怪談師たちが恐ろしく楽しいお話を披露してくれた。 そして、もう一つ、この渋谷怪談夜会に足を運ぶ理由がある。 それは、毎回のように何かが起こるのである。 始めてこの会に参加した時、私のすぐ前の席に座っていた女性が 会の半ばで気絶して崩れ落ち、スタッフに支えら

「信頼は人の心を動かす」・・・旅で見つけた物語を紹介します。

弁慶と義経の話 平家の落ち武者の話や浦島太郎の伝説、弘法大師の話などは 日本中に残っている。 実は、歌舞伎などで有名な義経と弁慶の話もいくつかの場所に残されている。 これはもしかすると、地方歌舞伎などの影響かもしれない。(実際のところは研究者にお任せします) 『関守の思い・・・』 安宅(あたか)の関の関守、富樫泰家は、 怪しげな山伏たちの正体を見極めようとしていた。 兄である源頼朝から追われた源義経と武蔵坊弁慶の一行が、 奥州平泉を目指して、関を通り抜け

「タイ焼きとパフェ」・・・どっちが好み? 短編です。

火曜日にラヂオつくばで放送された作品に加筆修正した短編です。 「タイ焼きとパフェ」  作 夢乃玉堂   中学2年生の冬を迎えたモココは、T鉄道の跡地を歩くのが好きだった。   数年前に廃線になったT鉄道は、いくつか残る駅のホーム跡が 当時の面影を残すだけで、大部分がサイクリングロードになっている。   廃線跡に近い商店街にある昔ながらのタイ焼き屋は 粒餡、白餡、チョコ、カスタードなど、種類が豊富で、 体形が気になってくる女子中学生の間では「悪魔の誘惑」と呼ばれている。  

「森章二の素読みの会vol.9」・・・お陰様で満員でした。

19日に開催された第9回「森章二の素読みの会」 お陰様で満員御礼でした。 今回の江戸話は、「芝居が伝える江戸文化」ということで 芝居の隠語として生まれ、現代でも使われている言葉について 紹介されました。 例えば、「大根役者」と言う言葉が、最初は「じっくり煮ると良い味になる」という意味で、励ましの言葉として生まれたのに、今ではただの悪口になったと言う事。 「ヤバイ」が、元は刑務所の隠語で「看守がいるぞ」という意味だったことなど、 目から鱗のお話が一杯でした。 朗読は「まっす

「拾ったものは」・・・ちょっと気持ち悪い怪談。ご注意を。

C子に振られた日、僕は家の近くにある林の中で、古ぼけた人形を拾った。 家の高校の制服に似た服を着ているが、ボロボロで形も良くわからない。 人形集めが趣味の俺は、何となく興味が湧き、 その人形を家に持って帰った。 家に帰ると、最後に聞いたC子の言葉が思い出された。 「男のくせに人形集めが趣味の奴と誰が付き合うと思ってんの。ふざけないでよ」 陰で皆が、僕の悪口を言っているのは知っていたが、 好きだったC子に言われると頭に血が上った。 だけど、人形を眺めていると少し気が休

「プレス」・・・本当に短い超ショート怪談。口の悪い友人が。

野球部のアキラが教室に入って来た途端、 欠席している女子の悪口を言い始めた。 「あいつ、デブのくせに俺に告白してきやがったんだよ。 身の程知らずで振られたのに、当てつけみたいに欠席しやがってよ」 「一体、何て答えたんだ?」 「決まってるだろう。ベッドでお前に乗られたら、圧死しちまうから 嫌だって言ってやったさ。ハハハ」 アキラは声を上げて笑った。 数日後の放課後、アキラはグランド整備中に 地ならしをする大きなグランドローラーに押しつぶされて死んだ。 目撃者によると、

「将来は保証されているか」・・・超ショート怪談。長い付き合いの彼女をつれて訪れたのは。

郊外の占い師の館に行った理由はあまり覚えていない。 A子に誘われたのかもしれないし、 自分から行こうと言ったのかもしれない。 いずれにしても、その時俺は、もう5年も付き合っているA子との関係を この先どうするべきか迷っていた。 というよりは、決断するきっかけが欲しかっただろう。 最近は、どこへ行っても以前ほど感動出来ない気がしていた。 おそらくA子も同じ気持ちだ。ときめきが無いのだ。 友人からよく当たると紹介されたその占い師の館は どこにでもあるような、明るい一戸建てだ

「だってプロレスでしょ?」・・・その問いに答える一冊。

「あれはプロレスだからでしょ? ショーなんでしょ?」という疑問に答えを出す一冊の本が刊行された。 「格闘家 アントニオ猪木 -ファイティングアーツを極めた男-」である。 猪木氏の逝去に伴い多くの「アントニオ猪木関連書籍」が発売されたが この本はその決定版と言えるだろう。 近年、猪木氏のイメージとして知られているのは、 例の「ビンタパフォ―マンス」であり、「闘魂」に代表される情熱である。 しかし、多くの人々が感じているショーアップされた「闘魂」のイメージだけでは 語り尽く

「前世と来世」・・・スピリチュアル好きの妻に贈ったのは。

スピリチュアル好きな妻の貴美子にピッタリの誕生日プレゼントを贈った。 「退行催眠術師ミスターレグラス! あなたの前世を手繰りますですって? 嬉しい! この前テレビに出てた人よね。催眠術でその人の前世まで遡らせてくれるんでしょ。よく取れたわね、予約3年待ちって言ってなかった?」 「もちろん、広告代理店のコネを使いまくったさ。 貴美子の喜ぶ顔が見たくってね」 「ホント? ありがとう~」 貴美子は満面の笑顔で俺に抱き着いて来た。 俺は口角の少し上に「満足のえくぼ」を浮かべて

「-1.0はどの時点から数えてだろうか」・・・最新怪獣映画。

好きな世界を語るのは本当に難しい。正しく伝わっているか分からないけれど、多くを語れば語るほど伝わらないような気がして、言葉は少な目に語ろう。 「ゴジラ-1.0」 まず、劇場で予告編を見た。時代設定が面白そうだった。 4DXでライド気分で見ることにした。 1mmも予想を外さない映画だった。 それが良いかどうかは別にして、伝統的なゴジラ映画が帰って来た。 見せ場として存在する特撮(CG)場面。 目の前で起こる驚異をひたすら見つめる登場人物。 わかりやすいセリフ。お家芸にも近

「その空気感に取り込まれる」・・・座☆吉祥天女公演「むかしも今も」

俳優の森章二さんに誘われて、座☆吉祥天女の公演「むかしも今も」を 深川江戸資料館で拝見した。 座☆吉祥天女は、女優の井口貴子さんと高橋典子さんが、2010年に旗揚げした劇団。 今回は山本周五郎を原作にした「むかしも今も」。 まず、丁寧に作られている。 大上段に構えるケレンミ味ではなく、一言で言うと丁寧な芝居だ。 衣装も結髪もしっかりと作られた芝居で、物語と紡いでいく。 その静かな展開に、初見の人は少し戸惑うかもしれない。 第一幕はゆったりと人物像を描き、 第二幕になっ

いよいよ来週。「真っ直ぐな迷路」・・・森章二の素読みの会vol.9

来週、11月19日日曜日は、9回目となる「森章二の素読みの会」 俳優・森章二さんが語る江戸話。 今回は、「芝居が伝える江戸文化」 江戸人の芝居好きは、落語などでも今に伝えられていますが、 実際に大小さまざまな芝居小屋があり、 役者の顔真似、声真似をする者も多かったそうです。 そんな中で今も残る芝居から生まれた言葉や習慣などを紹介していきます。 そして、朗読は「真っ直ぐな迷路」。 居合の達人である若侍が剣術道場で出会った相手は。 時代を感じさせる神楽坂の喫茶「トンボロ

第30回「キネコ国際映画祭」閉幕。観客動員数は、昨年の約50%増。

東京・二子玉川SC周辺にて行われていた 第30回「キネコ国際映画祭」が閉幕した。 今年は昨年の8万6000人を大きく上回る 12万5000人の方が来場。 第一回は観客5名から始まったというから、この躍進は素晴らしい。 子供の為の世界の映画を集めた映画祭で、 ソファーやラグも用意され、乳幼児と一緒に映画を観られる という親子に優しい映画祭である。 今回は同時にチェコフェスティバルなども行われ、そのバラエティの豊富さ お楽しみの多さにも驚かされた。 会期中のほとんどに顔

「もはやフェイクなどとは呼べない芸術」・・・超絶技巧の美術展。

日本橋の三井記念美術館で行われている 「超絶技巧、未来へ!明治工芸とそのDNA」は、 フェイクの宝庫だ。 明治の工芸品から現代アートまで、金属、木、陶磁、漆、ガラスなど様々な素材を使った「超絶技巧品」の数々である。 説明するのはあまり意味がないので、撮影可能だった作品の写真をいくつかご覧頂こう。 まずはこの作品。 木の上に溜まった水滴を蝶々が吸いに来ている場面を描いているが 蝶々も木の上の水も全て木でできている。 水滴の盛り上がり、水によって色の変わった感じなどは 全