魚群探知機

詩と思わしきものを書いたりしています。

魚群探知機

詩と思わしきものを書いたりしています。

最近の記事

【詩】「よく泣く君」

涙は汚いものだから よく泣く君が そのうちに 透き通ってしまいそうで 怖い

    • 【詩】「未来」

      目を背ければ青空が見える 耳をすませば木々がざわめく 僕は道の真ん中にひとり 突っ立っている 道の先からやってきて そろそろ視界を埋め尽くす 蛾の大群にも似た暗闇に 自ら近づく勇気もなく 立ち尽くしている 球形に蠢いている暗闇に いつか全身が覆われる 逃げようにも逃げられず 針で刺され続ける 痛みばかりが本物の 未来だ

      • 【詩】「ひとり」

        冬の朝日を待ちながら 横断歩道を渡る時 車のライトで影になる ぼくは半透明になりたい だけど ひとり未満になれない 冷たい風に身震いしながら ポケットに手を突っ込んで 少しだけ背を丸めながら ふたり以上にもなれない ぼくは ひとりとしてしか 生きられないのだ だから ひとりとして ひとりらしく 生きるのだ 輪郭が光り出すくらい くっきりと ひとりになるのだ そうして初めて ぼくは 冬を好きになれる気がする

        • 【詩】「街灯」

          暗闇の一本道の ところどころの街灯を くぐるとスポットライトめく その一瞬の嬉しさを 影が幾つか追い越して 遠くに見える街灯へ 暗闇をまた歩き出す 命の限り足は止まらず 朝日を待てど夜は明けない 街灯に騙される 暗がりの人生を 歩き続ける 歩き続ける

          【詩】「冬」

          冬が来て 枯れ木は火花の形に凍る 静かな雪が川に溶け込み あたたかなものはよりあたたかく 凍えるものがそれを見つめる

          【詩】「冬」

          【詩】「風景」

          誰かの懐かしさになりたい 記憶の町の一角の 風そよぐ路地裏 遠くに鳴る風鈴 五時のチャイムと 砂っぽい夕焼け 置き捨てられた雑誌 タイヤ型のブランコ それらに溶け込んで こめかみの内側を むんむんと蒸している 帰れない 帰りたい 懐かしい風景になりたい

          【詩】「風景」

          【詩】「月と平泳ぎ」

          十七歳の夜 かつて夢の中の空 平泳ぎで飛んでいた 小さな少年が 月の軌道を ちょうどいま 乗り越えてゆく

          【詩】「月と平泳ぎ」

          【詩】「涙」

          泣けない僕と 泣かない君は たまらぬ僕と こらえる君で 心に管を直接刺して じょうごみたいに でかく開けば せめて偽物 雨の物まね そんな涙を 流せるだろう そんな涙を 見せびらかすよ

          【詩】「涙」

          【詩】「アイドル」

          空っぽの僕の心に ウーファーの 低音が打ちつける アイドルが歌って踊る その足元で鳴っている 飾りにもなれない僕は せめて共鳴すればいいのに 胸に空気を溜め込んで じっとただ眺めている 淡白は 魅力ではなく味なし、と 嘲笑うフリして慰めながら ふざけた音が僕には似合う 精神の背が低いから 足元に鎖繋いで 重低音は頭上を越えた

          【詩】「アイドル」

          【詩】「クスリ」

          令和に未だ物々交換 公に売買されず ネット上に偽物が出回る 生まれてすぐにどっぷり漬かる 依存者だらけの精神スラム 抜け出せず 不安によく効く やめられず より満たされにくく 孤独なほどに君も欲しがる 我を忘れてみんなトリップ 「ありがとう」という名の麻薬

          【詩】「クスリ」

          【詩】「リバーシブル」

          理不尽だ、と怒る 僕も理不尽になりかねない、と、 考えなきゃいけないことが理不尽で 理不尽に怒りを感じるか、なんて よく分からなくて その曖昧な響きが怖くて 理不尽という言葉が一番理不尽だ、とか何とか 考える 理不尽な社会の僕は

          【詩】「リバーシブル」

          【詩】「東京」

          光になりきれなかった 新幹線で 帰ろう 僕を待つ人のいない街へ 一路 東京へ

          【詩】「東京」

          【詩】「秋がきた」

          剥き出しの腕に 息吹きかけて 秋がきた 目の前の サラリーマンや 学生や 信号待ちの全員を ぞくりと撫でる 秋がきた この街の 無防備な場所を 平等に吹き抜ける 秋

          【詩】「秋がきた」

          【詩】「すりきず」

          すりむきましたら 風が鮮やか 脈打つ血の管 騒ぐ夕空 すりむきましたら 染み出す涙 ゆらぐ草むら 呼ぶ声がする 弾き語るように 思い出す 幻のような あの街のこと 流れ流れて ひとりのぼくが 傷つくたびに 懐かしむ場所 今はもう 呼ばない名前 呼びたくなります 泣き止みましたら 空は紺色 土手吹き抜けて 風と帰ろう すりむきましたら そこはふるさと 街灯くぐり 家に帰ろう

          【詩】「すりきず」

          【詩】「しあわせについて」

          今日 洗濯がスムーズにできた それだけで 心は浮き立つ 取るに足らない、と 誰かが取りこぼした しあわせは ぼくが拾えば 輝きを取り戻す 君にとっての「大切」は ぼくには取るに足らなくて ぼくにとっての「大切」は 君には取るに足らなくて そうして しあわせは ひとつ残らず拾われて 一度なくせば 長い戦い

          【詩】「しあわせについて」

          【詩】「やさしくなりたい」

          やさしさを知る人は 痛みを分かる人だから 受けた痛みを忘れぬように 傷を何度も引っかき回す 痛みが僕をやさしくするから 傷をえぐった痛みが嬉しい それで そうして 本当に優しい人が そのうちに 僕を助けてくれますように

          【詩】「やさしくなりたい」