『もののけ姫』を語る
いよいよ今夜、金曜ロードショーで放送ですね!
何十回と観たうえにDVDも持っていますが、リアルタイムで観る予定です。好きで好きでたまらない、10年以上推し続けている映画です。
放送されると知ってから、好きな気持ちを思いっきり書きたい!という欲求が日に日に膨らんできました。いかにしてもののけ姫にはまったか、何に魅力を感じるのか、思いの丈を綴りたいと思います。
もののけ沼に嵌るまで
初めて観たのは中1の冬。
もともとジブリ─特に宮崎駿作品が好きで、もののけ以外はほぼ観ていました。トトロ、千と千尋、ハウル、ラピュタ、ナウシカ、魔女宅、ポニョ、紅の豚、耳をすませば、猫の恩返し、ぽんぽこ。残るはもののけ姫くらい、となった頃にやってきたのが金曜ロードショーでした。
もののけ姫といえば、暗くて怖い印象しかありませんでした。気持ち悪いグニョグニョが出てくるし、犬やイノシシはやたらとでかいし、女の子は血塗れだし、戦ってばかりいるイメージ。ずっと食わず嫌いだったのです。期待値がゼロの状態で見始めましたが、しかし、瞬く間に虜になりました。
主人公の男の子がかっこいい…!!!
エミシの村の少年、アシタカに目を奪われました。
巧みに弓矢を操り、身を呈して村を守り抜く勇敢さ。それにも関わらず追い出されてしまう悲劇性。相棒ヤックルとの絆。寡黙かつ冷静で迷いがなく、自分が信じた道を突き進む意思の強さと、周囲への優しさ。こんな完璧な人いるわけないじゃん…!と思いつつ、がっちり心を掴まれてしまいました。
アシタカの絵を印刷して下敷きに挟み、サントラを買ってもらって毎晩繰り返し聴きました。何十回もビデオを観た結果、セリフを暗唱できるまでになりました。図書館でもののけ姫の評論を借り、うきうきしながら読んだものです。恋しているレベルに好きでした。後にも先にも、あんなに熱を注いだ「推し」は彼だけです。
それでも月日を追うごとに、熱は薄れていきました。自分とほぼ同い年の作品ですし、新しい情報が入るわけではありません。「好きな映画」の王座に君臨し続けてはいましたが、情熱的に推した日々はいつしか、よい思い出となっていました。
リバイバル上映で再燃
ところが昨年、好き!!!な気持ちが再燃します。きっかけは映画館でのリバイバル上映。「一生に一度は、映画館でジブリを」と銘打ち、4作品が映画館で再上映されました。
昔もののけ姫が好きだったなぁ、せっかくの機会だから観に行くかなぁ…と軽い気持ちで、終業後に映画館を訪れました。ポップコーンを摘みながら見始めて、でもラストでは食べることも忘れ、もののけ姫の世界に没入していました。
やっぱりすごい!アシタカかっこいい!!
かつての熱い思いが蘇り、もう一度リバイバル上映を観に行きました。2回目は全力で鑑賞しました。オープニングタイトルと「アシタカせっ記」のテーマで感涙…。こんなにも映画の世界に入り込んだのは初めてでした。スクリーンの中にいるような感覚で、4DXさながらに日差しや風さえ感じたのです。
匂いや風や日差しまで肌で感じた。
シシ神の森の樹木や池、戦いの火、乙事主の血、山犬の匂い、
岩場の日差し、
森を駆け抜けて耳元を吹き荒ぶ風、
ぜんぶ体感した。
生きようと思った。
(感動冷めやらぬ帰路で残した当時のメモ)
リバイバル上映によってアシタカのかっこよさを再認識しただけではありません。中学生の頃には意識していなかったこの作品のよさに気付き、はっとする思いでした。
以下、その魅力をシーンとともに綴りたいと思います。
①アシタカ
もちろん!最大の魅力はアシタカです!
エミシの村で長となるべく育てられましたが、村を襲ったタタリ神を倒した際に呪いを受け、追放されてしまいます。呪いを解くため旅に出てタタラ場へ辿り着き、シシ神の森や侍との争いに介入することになります。
アシタカといえば、驚異の身体能力。弓矢も刀も巧みに使いこなします。
(絵コンテ377ページより)
後半、侍との戦いのシーン。刀を口にくわえ、侍が放った矢をキャッチしてつがえ、射抜きます。この滑らかな一連の動作、何度見ても痺れます。
(絵コンテ466ページより)
唐傘連に囲まれる中、乙事主に取り込まれたサンを見つけるシーン。素早い身のこなしで毒針を避けます。驚異の動体視力です。
そして、彼の人柄。確固たる信念を持ちながらも寡黙で凛としていて、周囲には優しく接します。
彼、あんなに大人なのにまだ17歳なんですよね…(もちろん室町時代では立派な大人なのだろうけれど)。高校生があんな重荷を背負って…。難しいこと全部放り出して遊んでほしい。こたつに寝転んで、お煎餅食べながらゲームさせてあげたい…。
②ヤックル
アカシシのヤックル(架空の動物です)。エミシの村からタタラ場まで、共に旅をするアシタカのよき相棒です。ヤックル、本当に可愛いです。観れば観るほど愛情が湧いてきます。
主人であるアシタカに忠実で、何があっても傍にいようとする姿はとても健気。ちょっぴり怖がりな一面も可愛らしいです。
物語の序盤、突如現れたタタリ神に怯えてすくんでしまいます。「逃げろ!」と近くの柱に矢を射るアシタカ。2人に固い信頼関係があるからこその行動です。
それから、シシ神に傷を癒やされたアシタカが目を覚ますシーン。すっかり慣れたヤックルを撫でながら、サンが言います。
「自分からいろいろ話してくれた。おまえのことも、故郷の森のことも」
自分から!自分から話したのね…!警戒心が強そうなヤックルが自分から話すなんて…!どんな口調で何を話したのか、知りたくてたまりません。このときのサンの優しい表情も好きだったなあ。
③サンとモロ
この映画のヒロイン、サン。山犬に育てられた少女です。シシ神の森を守るため、山犬の兄弟と共にタタラ場へ攻撃をしかけます。
サンの登場シーンはものすごいインパクトでした。血塗れになりながら毒血を吐き出すヒロインなんてなかなかいないですよね。苛烈な彼女ですが、獣には限りなく優しい目を向けます。知り合ったばかりの頃にアシタカへ向けていたしかめっ面と、ヤックルに対する柔らかな表情との差が印象的でした。
彼女の母は犬神のモロ。人間の子でありながら、モロはサンを深い愛情を持って育てます。岩場のシーン、「黙れ小僧!」は圧巻です。手塩にかけて育てた可愛い娘をおまえは幸せにできるのか、という親心ゆえの叫びですね…。
余談ですが、サンの被っている土面が気になります。山犬を模しているのか、赤い紋様の面にちょこんと付いている耳が可愛らしいです。彼女が自分で作ったのでしょうね。モロや山犬の兄弟とどんなやりとりがあったのか(あるいはなかったにしろ)覗いてみたいです。
④エボシ御前
タタラ場のリーダーの女性、エボシ御前。敵に対しては限りなく冷酷ですが、売られた娘や病人を引き取る優しい人です。社会のはみ出し者だった彼女たちに仕事と居場所を与えます。タタラ場を存続させるためには、森を切り拓き、その邪魔をする神を排除しなければなりません。決して欲深い破壊者ではないのです。
そんな彼女の優しさをふと感じたシーンがこちら。
エボシ「そなたたち、この書き付けがわかるか」
女たち「…?」
エボシ「天朝様のだ」
女たち「天朝様って?」
エボシ「帝だ」
女たち「帝…」(わからない)
エボシ「(もう行って)いいよ」
ジコ坊にシシ神退治の許可証を見せられたエボシが、タタラ場の女たちに声をかけるシーンです。この「いいよ」、とても優しげに聞こえます。田中裕子さんの演技力があるからこそでしょうが、女たちへの優しさが伝わってくるのです。
この作品、単純な「自然対人間」「人間=悪」の構図ではありません。人間側ではタタラ場、侍、唐傘連の間で争いがあり、自然側では山犬、イノシシ、猩々といくつもの派閥があります。勧善懲悪もののような悪者はいません。立場間の争いはあれど、完全に悪い人がいないというのも、この映画の醍醐味です。
⑤「共に生きる」
映画のラスト、アシタカはサンに語りかけます。
「サンは森で、私はタタラ場で暮らそう。
共に生きよう。
会いに行くよ、ヤックルに乗って」
立場は違うけれど、それでも共に生きようとする。恐らくとても困難な道だと彼はわかっているでしょう。森とタタラ場に挟まれて、アシタカは心が休まる日がないのではと思います。それすら覚悟の上での言葉なんでしょうね。素敵ですよね…。
頷くサンの泣き笑いのような表情も印象的です。
⑥壮大な音楽
もののけ姫を語る上で絶対に外せないのが、久石譲作曲のサントラ。もののけ姫の世界を彩り形づくる素晴らしい楽曲ばかりです。
いちばん好きなのは「アシタカせっ記」。オープニングで最初に流れる曲です。壮大で重厚なテーマは勇ましく、どこか物哀しくもあります。
「せっ記」とは宮崎監督の造語で、「草に埋もれながら人の耳から耳へと語り継がれていく物語」という意味だそう。アシタカの生き様を表現した曲なのです。
エンドロールでもこの曲のフルバージョンが流れます。映画館で聴いたときは鳥肌が立ちました。いつか久石さんのコンサートに行くのが夢です。生でアシタカせっ記を聴けたら、きっと泣いてしまうだろうなぁ。
他にも、緊迫感漂う「タタリ神」、アシタカの旅路を彩る「旅立ち」、有名なテーマ「もののけ姫」、ラストを飾る名曲「アシタカとサン」などなど、素晴らしい楽曲ばかりです。サントラを聴くだけでも映画の世界に浸れます。
長々と語ってしまいましたが、つまるところ「もののけ姫が大好き!」これに尽きます。
見るたびに新たな発見がある素晴らしい映画です。これからも推し続けていきます。
最後まで読んでくださりありがとうございました💐
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