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【24】『奇跡の洗濯バサミ』(3)~救急搬送されるまで
(前回の続き)
https://note.com/guttyo_id/n/nb2223b583851
玄関扉の曇りガラスから、救急車の赤くクルクル回る光りが見えた。
すぐに車のドアがガチャンと開く音がして、救命士が家の中に入ってきた。
サイレンの音が止まり、エンジン音だけが静まり返った住宅街の中で聞こえていた。
救命士と少し話した後、救急車に自力で歩いて行った。
車内の救命機器を見渡しながら、ベッドに座った直後に気分が悪くなり、置いてあったゴミ箱に吐いてしまった。
妻が救急車の外で救命士と話している姿が見えたが、意識が急速に遠のいていくのを感じた。
妻は救命士から、夫の状態が急変し病院に急がなければならない旨を聞かされた。
また、夫の状態から子どもたちは家で待っていた方が良いとも言われた。
夜に子どもたちだけで留守番させるのは初めてだった。
妻は子どもたちを不安にさせないように、買い物に行ってくるかのように声をかけ、急いで救急車に乗り込んだ。
妻にとって長い夜が始まった。
(続く)