自分の小説を英語に翻訳できるかな
Kindleで電子書籍を出している方なら、「自分の本を英語にして世界に発信したい」と思うことがあるのではないでしょうか。
世界中で、日本語の話者は約1億2800万人であるのに対し、英語の話者は11億3200万人です。
日本語を英語に翻訳して本を出すだけで、単純計算で、市場が約10倍に広がることになります。
それでは、自分の原稿をGoogle翻訳にかけて英語にし、それを発行すればいいのか? といえば、そういうわけにはいきません。
Google翻訳はまだまだ、そこまでのレベルには達していません。
おすすめはDeepL
とはいえ、近年の機械翻訳の進歩には、目をみはるものがあります。
例えば、DeepL翻訳。まるで人間が書いたみたいな、ぬるっとした自然な訳文を作ってきます。読解力もなかなか高いです。「もしかすると、翻訳者が商売あがったりになってしまう日も遠くないのでは?」という気にさせられます。
これが無料なのですから、びっくりです。
DeepLには有料版もありますが、基本、ブラウザ上で無料で使えます。一度に5000文字までの文章を翻訳することができます。英語だけでなくさまざまな言語に対応しています。
しかし完璧とは言えない。DeepLの色々なクセ
DeepLは、とてもこなれた訳文を作ってくれます。このまま本にしても大丈夫なレベルかもしれません。
機械には難しいんじゃないか? と思われる擬音語もさらっと処理します。
しかし、現時点ではまだクセがありますので、DeepLの訳文を100%信用するわけにはいかないと思います。
クセ①:大量に翻訳すると精度が下がる
DeepLでは、同じ文でも、その前後に別の文をつけ足したりすると、訳が変わります。たぶん文脈を見て翻訳しているからでしょう。
私個人の感覚ですが、小説の文章に関しては、一度に翻訳させる文章が長くなればなるほど、粗が多くなるように思います。
一文ずつ切り取って翻訳すれば、とてもきれいな訳文が出てくるのですが。
上に挙げた例では、すでに誤訳が出現しています。「すっぴんだから」を「私が服を着ていないから」と訳しています。なんでそうなっちゃうのか……。
クセ②:同じ文を繰り返すことがある
「知らない顔だ。」「だが俺は猛烈な違和感を覚えていた。」を2回ずつ訳しています。表現は変えていますが。
クセ③:ときどきダイナミックな訳漏れがある
今回の例では見当たりませんでしたが、ワンセンテンスが長い場合など、「節」単位で訳からごっそり漏れてしまうこともあります。
クセ④:クセというか……機械にそこまで求めるのは無理があるよね
「十七、八歳」というのは「17歳か18歳」という意味です。
「17歳か8歳」ではありません。
これは……人間でも読解力が低い人ならミスりそうですね。
常に「彼」「彼女」とジェンダーを明示しなければならない英語と、そのへんをふわっとさせられる日本語の違いが表れる場面です。
この例に出てくる「こいつ」は、前の文を読んでいれば「少女」であることがわかります。人間には。
どうやらAIには、そこまではわからないようです。
「どぎつい化粧を落とし」という語句があることから、「こいつ」を女と判断したらしく、最初はSheで受けています。けれども次の文からHeに変わってしまっています。
たぶんAIは、男女どちらかわからないときは、すべて「男」で処理するのでしょう。
仕方がない面もありますが……英語に機械翻訳した小説は、そのままでは商品にできるレベルではない、と言いきってしまってもよいと思います。
登場人物の「彼」と「彼女」を間違って訳されたら、誰を指しているのかわからなくなり、読者は混乱すること間違いなしです。
結論
DeepLには下訳だけをさせて、あとは自分で読み直しておかしなところを修正していく……という使い方をするのがベストですね!
有料版だと5000文字という制限がなくなり、もっと大量に一括翻訳できるようになります。その分、精度は落ちるおそれがありますが。