眩惑の剣
大した特徴もないその男の立ち姿は普通・・・だったと思う。
何故過去形なのかについては単純で今が普通ではないからだ。
最初は小さな違和感だった。
その男はこちらの存在を認めると身体を傾け獲物を構える。
利き腕と思われた右腕だけではない。反対の左手にも同じ獲物を持っている・・・二刀流だ。
男は背後に意識を残しつつもそれぞれの獲物を胸の高さ迄持ち上げる。
右・・・いや、左か?
迷いかフェイントか、定まらない動きに困惑する。
どちらが来るか全く読めない。
そうか、あの肘の動きだ。
遥か昔に師が見せてくれた眩惑の剣。
師は言った。
立会ではわかっていても相手の獲物を注視してしまう。
それは本能的なものであり達人は惑わされぬ様にその視点を獲物そのものを動かす身体に変えると。
だが身体自体の動きに細工があれば・・・
緊張で思わず唇を噛んでいた。
血の味を感じたことで最悪な未来を予見し、結果として私は冷静さを取り戻した。
いいだろう、こちらも後の先の極意でお相手しよう。
さぁ、赤白どちらの獲物を振るんだ交通誘導員のおっさんよ、俺は正気を取り戻したが前のドライバーはとても困惑しているぞ!(;´Д`) ホントニ ドッチフルノ?
(目線だけは経験豊富な落ち着き様なだけに、本当に困惑する虚実入り交じった業前でした。)
<次のお話>
<前のお話>
<某月某日の嵐>
主にオチがつく感じの思い出話を語ってます。