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コンビニで出会った お兄さんたち

私が初めてバイトをしたのは 17歳。 

田舎のコンビニであった。

高校卒業後の進学も決まって 暇だったので小遣い稼ぎにバイトをしようと始めた。初めてのバイトの面接で、絶対落ちたくなかったので
「暇なので、シフトはどの時間帯でもできます。」
と 強気に宣言した。

すぐに採用となり、働き始めることになる。
私の宣言通り、シフトは バイト先の都合でいれられた。

一番 頼まれた時間帯は
夜22時〜朝6時まで の 人手が薄くなる 深夜〜早朝帯だった。

時々 主婦の方が日中お休みすると 代わりに招集されることもあった。

私は 当時 体力だけは自信があったので 深夜だろうが早朝は平気だった。 
初めてのバイトで 最初は何をやるのも緊張した。
最初にレジを打ってお金をもらったときは
「私がものを売った!」
と感動した。

何日も同じ時間に出勤していると、常連のお客さんの顔がわかってくる。

夜が明けてくると トラックの運転手さんたちが タバコとおにぎりを買いに来る。

このおじさんは 〇〇新聞とコーヒー このおじさんはマイルドセブンというように だいたい 買うタバコの銘柄 どこの新聞を買うかまで分かるようになった。

常連のお客さんと 顔見知りになると 
「今日もがんばってるね」「いつものおねがいね」「いってきます」
なんて 声をかけてもらえるようになった。

ちいさな田舎のコンビニなので みんな 気さくないい人だった。

しかし 中には変わったお客さんもいた。
その中でも忘れられないお客さんが2名。

1人めは 毎朝に 押し寿司を1つだけ買いにくる 押し寿司の清兄さん。

清兄さんとは私の中だけのあだ名である。実際はほとんど会話はしたことがなかった。
清兄さんは、必ず山盛りの10円をレジに置き 
「温めてください」
と笑顔で 鮭の押し寿司を差し出してくる。
私には 寿司を温める発想がなかったので からかわれているのかな。とおもったが
清兄さんは真剣だった。
私が10円の山から10枚もらい レンジで温めた押し寿司を差し出すと

「ありがとう」と満足げに帰っていく。

清兄さんは、私がコンビニでバイトをしている期間、毎日欠かさず 押し寿司温めルーティングをおこなった。

お兄さんは 体が大きくて坊主で 物腰がやわらかくて いつも笑顔。
そこから 私は心の中で 押しの寿司の山下清兄さんと呼んだ。通称:清兄さん
 (私は 山下清が大好き)
お兄さんの押し寿司を温めることが私のルーティンになった。
私がバイトを辞めた後は 清兄さんのルーティンは誰か引き継いでくれただろうか。

2人めは 金髪イケメンの オムツのお兄さんだ。

私が知る限り、オムツのお兄さんがコンビニにきたのは1回だけだ。
深夜、いつものごとく 店長と私が2人でシフトにはいっていた。
店長が休憩でバックヤードに引っ込んでいる時だった。

深夜の店内は私だけ。
朝のタバコの準備をしていると 金髪イケメンのお兄さんが1人で入店。

お兄さんは 長め金髪に シルバーピアスがたくさん。
黒のシャツに 黒のブーツ という  パンク系?の格好をきれいにきこなしているが ズボンははいておらず 下だけオムツ姿だったのだ。

令和の多様性の時代。 こういったファッションもあるのかもしれないが
これは 平成のはじめの頃の話。

私はお兄さんの佇まいに驚き 身動きが取れなかった。
ショック状態で「いらっしゃいませ」も忘れていた。

お兄さんは入店すると 迷わず 雑貨コーナーに行き
生理用ナプキンを1つ持って レジにやってきた。
明らかに男性。 オムツ姿。 生理用品。

私の頭は更に混乱。

お兄さんとレジを挟んで対面し緊張で手が震える。
一瞬店長を呼ぼうか迷ったが、お兄さんが悪いことをしているわけではない。
私は生理用品をレジに通す。
お兄さんの顔をこっそり見ると お兄さんの目は泳いでおり 怯えているようにみえた。
お兄さんからお金を受け取るとき、お兄さんの手がガサガサで傷だらけであることに気がつく。 

なんだかすべてが異様におもえた。

もしかして 誰かにやらされている? 罰ゲーム?
グルグル考えているうちに お兄さんは生理用品をもって
店をでていき 車で闇の中へ消えていった。

オムツのお兄さんが入店して出ていくまで5分もかからなかったと思う。
でも 物凄く長く感じた。

オムツのお兄さんがいなくなり 1人現実にもどされた感じがした。

しばらくすると 「休憩もどるね」と店長がもどってくる。

私は大慌てで 店長にことの顛末を話す。
店長は 一言

「変態じゃん」

 と言っただけだった。

私は お兄さんがオムツ姿だったということより
お兄さんの怯えた目がきになった。
いじめや脅迫でないこととを祈った。
どうか お兄さんが 令和の現在も 元気でありますように。
新学期、私は地元を離れるの理由でコンビニバイトは辞めた。
最初のバイトで沢山の人と出会い 忘れられないお兄さん2人にも出会い 世界の広さを知った気がした。
  
コンビニバイトありがとう!

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