見出し画像

MBCTが主役?マインドフルネス研究と実践の今

はじめに

マインドフルネス講師としてMBSRを教えている私にとって、日本マインドフルネス学会に参加することはとても楽しみでした。特に、MBCT(マインドフルネスに基づく認知療法)とMBSR(マインドフルネスに基づくストレス低減法)の違いや、それぞれの研究がどのように進められているのかを知りたかったのです。会場に足を踏み入れると、有名大学の先生方の熱気が感じられ、久々の学会に高揚感がありました。

エビデンスって大事?

MBSR講師であり、臨床心理士、公認心理師として活動している私にとって、エビデンス(科学的根拠)の重要性は非常に大きいです。なぜなら、マインドフルネスが参加者の皆さんにどのような効果を与えるのか、またその効果がどのように裏付けられているのかを説明する責任があるからです。

ただ、エビデンス、エビデンスと言うと、ちょっと堅苦しい感じがしますよね。でも、これって実は皆さんにとってもものすごく重要なことなんです。なぜなら、効果があることがちゃんとわかっているかどうかは、皆さんが大切なお金をどのように使うかの基準になるからです。例えば、ストレス軽減やメンタルヘルスの向上を目的として、どのプログラムに参加するかを考えるとき、科学的に裏付けられた効果があるかどうかを知っていることは、参加者の安心感や信頼感につながると思います。つまり、マインドフルネスの実践に投資する際、その効果を信じられるかどうかが、大きな決め手となるわけです。

学会で最新の情報を収集!

今回は日本マインドフルネス学会の第11回学術大会に参加して情報収集をしてきました。印象として、以下の点が挙げられます。

  1. MBCTを主とした研究: 学会ではMBCTが中心となり、集団療法としての医療における効果研究が行われていました。特に、経営者層への理解を得るために、あえて生産性に焦点を当てた戦略的なアプローチが印象的でした。

  2. MBSR講師養成の課題: 日本におけるMBSR自体の研究発表が少ないことが気になりました。学会内での実践者としては、伊藤靖先生くらいしかいらっしゃらない印象です。背景にはMBSR講師兼研究者が少ないことが考えられます。

  3. 仏教からのアプローチ: 井上ウィマラ氏や川野泰周先生など、仏教からのマインドフルネスへのアプローチが意外に多かったことも印象に残りました。これは、仏教の教えが現代のマインドフルネス実践にどのように寄与しているのかを考える良い機会でした。科学的裏付けというよりも、ある種、人間の智恵として用いられている印象です。


https://pixabay.com/photos/nature-coast-beach-shore-water-2609981/

感想

今回の学会に参加して、特に慶應義塾大学の佐渡先生の熱意を強く感じました。学者として、ただMBCTの研究を愚直に続けるのではなく、長期的なマインドフルネスの発展を見据えた戦略的なアプローチで生産性向上にフォーカスされている姿勢には、尊敬の念を抱きました。また、本来の目的から意図的に少しずらした形でマインドフルネスを広めようとしている佐渡先生というロールモデルを見つけたことは、私にとって大きな発見でした。

学会は学術的な側面が強く、マインドフルネスを体現している先生はあまりいなかった印象です。しかし、伊藤靖先生はその点において別格でした。この学会の会員数はそれほど多くありませんでしたが、このことは、現状のマインドフルネスの状況を象徴しているように思えました。


https://pixabay.com/photos/conference-people-mass-business-3518465/

参加して気づいたのは、MBCTの研究が多いことでした。この背景として、学会は学術的な立場であり、研究領域としてはどうしても医療に限られるために、MBCTに関する研究が増えるということです。さらに、もう一つはMBCTはマニュアル化されているために、教えやすいことが挙げられます。

逆にMBSRの研究が少ない理由として考えられたのは、対象が広く領域が絞りづらいこと、さらには実践者がいても研究者を兼ねている方が少ないことが考えられます。講師は増えつつありますが、提供する場が十分育っていないという問題もあります。

初めは一人で参加した学会でしたが、幸運にもMBSR講師仲間が何人かいて、気づかない私に声をかけてくれました。声をこえをかけてもらえることってとってもうれしいことです。そのつながりで新たに何人かの方と知り合いになり、さらに輪が広がりました。

日本におけるマインドフルネスの未来

精神科医療では

MBCTも講師養成やスーパービジョンの問題を抱えているものの、精神科医療の集団療法でMBCT講師が実施できるようになることで、その普及が広がると考えています。ただし、疾患のある人に限られるでしょう。そのころまでに一般の人の精神科医療に対する偏見が改善していればよいですが、なかなかMBCTを治療で受けるために精神科デイケアに通うのは抵抗が生まれるのではないかと考えます。

広く一般では

一方で、MBSRはスーパービジョンの問題を抱えているものの、草の根的な普及の可能性と教育分野、産業分野からの広がりが強まると感じました。佐渡先生のMBCTの研究では、働く人の生産性が向上することを説明していますし、AwarefyさんやMelonさんなどの企業がBtoBでマインドフルネスを広めてくださっていますから、そこからの流れも強まると見られます。

私は

私はMBSRの実践を継続し、スーパービジョンを受けて技術を磨いていこうと思います。さらに、先日学んだMBI-TLCを活用し、発展的な振り返りを行うことで、その実践の質を向上させていきたいと考えています。講師仲間と協力しながら研究を進めていく必要性も強く感じていますが、それもより先に、マインドフルネスを学び、実践を継続する場を栃木県に作っていくのが先になりそうです。これついてはまた後程、お話します!

MBI-TLC(マインドフルネスに基づく介入:教授・学習の手引き)

https://mbitac.bangor.ac.uk/documents/MBI-TLC_jp_20240902.pdf

まとめ

日本マインドフルネス学会に参加することで、MBCTとMBSRの研究状況の違いやそれぞれの可能性について深く考える機会を得ました。ある意味、皆が異なる方向を向いて活動しているように感じました。しかし、根本には「マインドフルネスを広めたい」という共通の思いがあることも確認できました。

今後は、この学びを活かして、マインドフルネスの価値をより多くの人に伝え、共に成長していける未来を、そして、一緒にマインドフルネスを広める仲間とつながれることをいつも心待ちにしています。


いいなと思ったら応援しよう!