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あれ、見えすぎないほうが世界は綺麗だった

メガネもコンタクトもせずにコンビニに行った帰り、

道端に猫がいた。

少し距離をおいて座り込み、「猫ちゃ〜ん。にゃんにゃんこ」と

猫にスリスリすり寄る。猫さまをみると本能的に下僕になる。

それでも、あまりにも相手にしてもらえないから、恐れ多くも、もっと近づいてみる。

そしたら、それはただのビニール袋だった。

これって結構、ちょっと視力の悪い人あるあるじゃないかなと思っている。

私は、メガネもコンタクトなしでも、歩けるレベルの視力なので、たまに何もせずに歩いてみる。

そうすると、街がたちまち知り合いだらけになる。

あ、ご近所の何々さんだ!あれ、友達の〇〇ちゃんだ!あ、え、あ、好きな人が....などなどとハラハラワクワクドキドキしながらその人とどんどん近づくと、

「誰これ?」

と全くの赤の他人だったということばかりである。一気にげんなり。

この前、駅で実に慎ましやかな微笑ましいカップルを見かけた。

女性のほうは田舎から出てきた人だろうか、都会に全く染まっていない感じの素朴な純粋さを持った人で、男性のほうもシャイで奥手な感じ。

ペコペコ何度も不器用に頭を下げる彼が乗った電車を、恥ずかしげに微笑む彼女がお見送り。

なんか、いいなあと男性の後ろ側に立っていた私は思った。

都会の中で、擦れてないこの二人。心が浄化されていく。

そしたら、その男性の方のLINEが見えてしまったので覗いてしまった。

女性へ律儀にメッセージを送っているのだろう。

今日は、ありがとうございました!と入力している。

LINE、ああそれは罪深き便利なメッセージアプリ。

その前のやり取りも覗き見できた。

女性「今日もよろしくお願いします」

男性「はやく会いたいな」

ふふ。

男性「パンツ脱ぐ準備はできてるよ」

女性「手をぬるぬるにして準備しときますね♥」

男性「うおおおおお、やりたくてやりたくてたまらねええええ」

え。

ん?

どんがらがっしゃーん。何かが私の中で崩れ落ちた。

え?あのウブで清純で心の浄水器みたいなカップルどこいった?

勝手に思い込んでた私が一方的に悪いんだけどさ。

LINE覗き見た私が完全に悪なんだけどさ。

見えないほうが、世界はきれいだった。

今って、ほんと見えすぎてる。

憧れの職業や会社を調べたら、「ブラック」

みたい映画を調べたら、「つまんない」

行きたいレストラン調べたら、「まずい。接客がゴミ」

色んな人が先回りして、教えてくれるのはありがたい。

けど、たまには自分がみたいように世界をみたいなあ

とメガネを外してビニール猫に話しかけてみる。






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