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【テトリスRPG】『Flowstone Saga』感想

「ぷよぷよBOX」という作品をご存じだろうか。

涙が出る

2000年、コンパイル生存時代に発売されたぷよぷよシリーズプチコレクションとでも言うべき作品なのだが、本作の目玉としてぷよぷよとRPGを融合させたオリジナルのゲームモード、「ぷよぷよクエスト」を内蔵していた。

画像は公式サイト(https://www.sega.jp/game/detail/puyopuyobox/)より

装備やステータスの概念もあり一見すると通常のRPG、でも戦闘に入るといつものぷよ勝負が始まる。

ぷよの回転やNEXTぷよの表示などの基本機能すら装備が無いとできなかったり、ザコバトル1戦1戦のテンポが良くなかったり、シェゾの扱いがかなり終わってる時期の作品だったりと気になる点も多かったが、おおむねぷよぷよ+RPGというコンセプトは達成できていたように思う。
ちなみに同名のソシャゲがあるせいで微妙にややこしいというか、余計に埋もれてしまっている感がある。セガ、どうして。

本記事でこれから感想を述べる『Flowstone Saga』は、このぷよぷよクエストをそのままテトリスに置き換えたような作品だった。

一目見た時からどこか懐かしくも苦い思い出と共に期待し続けていたこのゲームが、度重なる延期を経てついに先月リリース。
ということで前置きが長くなったけど、本作について触れていこう。

ちなみに自分のテトリスの経験はこれだけです。

これ系見るたびに買ってしまう

【良かったところ】

①装備、スキル、バトルスタイルによるテトリスそのもののカスタマイズ性

主人公、ミライのカスタマイズ性が高い。

装備にはそれぞれ固有の効果があり、スキルは常にリセットが可能で戦術に応じて変更可能。

なにより作中でフロッグと呼ばれるバトルスタイルの変更、これがかなり面白い。


DQの職業、FFのジョブにあたるような概念で、それぞれのスタイルには「ブロックが高く積みあがっているほどダメージアップ」といったパッシブスキル、「時間を止める」といったアクティブスキルがある他、スタイルごとに出現するピースが異なったり、ブロック置くスペースの幅自体が変わったりする

基本的にスタイルごとに使用できるブロックは固定だが、特殊能力が無い代わりに全てのブロックから8種を自由に選べるスタイルなども。
連続でブロックを消すとコンボダメージが上がる武闘家スタイルに対して…
色々とクセの強い特殊能力を持つ時魔術師のスタイル。
スペースの幅が非常に広く、死ににくいが消しにくい。

こういった形でスタイルごとに性能差を作るという発想はお見事。
正直スタイル間のバランスはまったく取れてないような気がするが、テトリスRPGならではのこのシステム自体はとても好印象だった。


②バトルのテンポも良好

ぷよぷよ+RPGのぷよぷよクエストでは問題点だったザコ戦のテンポ。
これに関してはテトリスという形を取っていることで解消されている。
上入力によって瞬時にブロックを下すことができる、ハードドロップの存在である。

ぷよテトだとこれのおかげでテトリス側が強いなんて話を聞いたことがある気がする。

それに加えてアビリティやアイテムの存在など戦闘中に考えることも多く、気楽なパズルとして戦闘を楽しめる。
それでも雑魚戦はだるいなあ~って気分の時は100%逃走可能
昨今のインディーゲーでたまに見かける雑魚戦の意義が問われるタイプの作りだが、本作の場合はザコ戦自体が結構楽しいという形をもってその回答としているのかもしれない。

③中盤あたりまで登場人物やテキストがとても魅力的

割としっかりRPGしており、中盤あたりまでストーリーも中々面白い。
特に主人公であるミライの保護者、シドが一際まぶしい存在感を放つ。

ゲーム序盤、優しさ故に暴走とも言える失態を犯し、街の住民に大きな迷惑をかけてしまったミライ。
真正面からの正論に次ぐ正論を以って街の長として厳しく振る舞うと同時に、保護者として誰よりも彼女の心身に寄りそう彼の姿は、本作の物語に期待を持たせるのに十分な名シーンだった。

街の住民との会話が充実しているのも嬉しいところ。

【気になったところ】

①細かいところで作りこみ不足感がある

プレイのところどころに違和感が生じるタイミングがある。

フリゲならよくある光景

違和感というのはこのようなマップの作りから、ストーリーの構成や細かいバグまで様々。
ゲームバランス面でもジョブレベルの増加に必要なアイテムが簡単かつ大量に手に入るため、このあたりのシステムがほぼ形骸化してしまっている。
その関係で素材アイテムのありがたみなどは消え失せているにも関わらずゲーム全体、最初から最後まで大量に手に入り、その都度にこのゲームはどこまでちゃんと作られているんだろうかと疑問符が浮かぶ。

ユーザビリティの観点ではこの御時勢にゲーム内にマニュアルが無いことが明確に問題点になっていて、作中で大量のTIPS(システム解説)が表示されるのにも関わらず、後から見返す手段が無い。

このあたりは精力的なアップデートにより改善されている最中なので、今後に期待したいところ。

あまりにも小規模なハウジング要素。
本作にはこういった「とりあえず入れてみた」みたいな要素も散見される。

②タイトル画面の仲間キャラ面した2名が出番の多い脇役くらいの立ち位置

本作のタイトル画面で、さも主人公とその仲間かのように描かれている3名の男女。

この3人のうち、前面の少女ミライ以外の2人はサブキャラクター
そもそも本作にはシステム的に仲間キャラの概念が無く、ストーリー的にも物語上不必要という訳ではないが重要人物かというと悩む、そんなライン。
DQ5で言ったらピピン以上サンチョ未満くらい。
FF5ならトルナ運河の鍵をくれる町長さん以上ミド未満。
そんな存在感。
いやトルナ運河の鍵をくれる町長さんは超重要人物かもしれないけど…。

キミ、写真とちょっと顔違う?

で、このタイトル画面後ろの2名。
魅力的なキャラであれば別にいいのだけど残念ながらそうでもなく、ここから③に繋がってしまうのだった。

③終盤のツッコミどころの多い展開

ある意味で一番の見所でもあるので詳細は伏せるが、それまでどの登場人物も基本的に知性を感じる立ち振る舞いをしていたのが、終盤になって崩壊してしまう。
その中の戦犯中の戦犯が先ほどの背景2名な訳で、彼らの勇姿はぜひその目で確かめて欲しい。
開いた口が塞がらないという慣用句が比喩ではないことを教えてくれる。

ゲームバランスについても大味になってしまい、ラスボスをノーダメージで瞬殺できてしまった…が、これは人によるかも。

【総評】

こんなのあったな…

中盤までは非常にワクワクしてプレイしていたが、全てが終わった今では超名作になれるポテンシャルを持っていた良作と言った印象。

延期を繰り返したことからも、予定通りの製作にはならなかったことは確か。
全体的に作りこみが不足している点はその煽りをモロに受けている面のように感じられ、もしかしたら終盤のストーリー展開やゲームバランスもその一部なのかもしれない。

バトルに関するシステム面に関しては『テトリス+RPG』というコンセプトの中で非常に完成度の高いものになっているだけに、そこ以外のRPG要素、つまりストーリーやキャラクターなどのあと1歩感がとても勿体ない。
このあたりはアップデートでどうにかできる範囲でもなく、ただただ惜しい。

まったく悪い作品では無く、値段相応のボリュームもある。
一風変わったRPGに興味がある人、テトリスが好きな人なら十分に楽しめると思う。
少なくとも自分は本作を値段分以上は楽しめたし、プレイして良かったと思っている。

MOO仁井谷社長はお元気だろうかと調べてみたらTwitterで生放送バンバンやってた。
バイタリティがすごい。


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