【パズル】『空と海の伝説』感想
『空と海の伝説』は、2024年5月にリリースされたパズルゲーム。
自分にとってこの手のゲームとしては非常に珍しく、最初から最後まで楽しく遊ぶことができた満足度の高い作品だったので、紹介させて頂こうと思う。
【概要】
ベースはいわゆる「倉庫番」。
箱を押したり、スイッチを押したり、氷の上を滑ったり。
パズルゲームとしては比較的オーソドックスなものだが、本作の最大の特徴は、島が夢を見ていそうなそのグラフィックから連想してしまう通り、ちょっとした探索要素が存在することだろう。
【好きなところ①】パズルと融合した探索要素
謎を解いた先にあるスターを一定数入手することで……
このようなゲートを通れるようになり、探索範囲が徐々に広がっていく。
マリオ64のようなシステムと言えば伝わりやすいだろうか。
更に特筆すべきは、こうしたパズルステージはワールドマップに複数存在する島のひとつでしかないことだ。
小さな島から大きな島まで、広大な海を探索しながら巡ることになる。
もちろんワールドマップ上にもスターの獲得が条件となるゲートが点在しており、スターを取れば取るほど世界が広がっていく。
「あの先には一体なにがあるのだろう?」
パズルゲームをメインとしつつも冒険のワクワク感もおまけで味わわせてくれるのが『空と海の伝説』のもっとも魅力的な要素だ。
また、こうしたゲーム全体の構成により、パズル(ステージ)攻略の順番にある程度の自由度があるのも面白い。
【好きなところ②】攻略の順番に自由度がある
例えばこのように一見してなんか複雑そうだな~と思ったら、一旦スルーしてもよい。
全てのパズルをクリアしなくとも十分なスターを集められるようになっており、ここはマリオ64の良かったところをそのまま再現しているかのようだ。
パズルゲームとしてもベーシックな倉庫番のままでは終わらず、探索に応じて徐々に奥深くなっていくのも見逃せない。
世界の各所には不思議な力を授けてくれる謎の存在がおり、彼らに貢物としてあちこちで手に入るクリスタルを捧げることで、新たなるギミックが世界に解放される。
あるいはシンプルに主人公の行動を幅を広げてくれる、便利な装備アイテムを入手することもある。
で、こうした新ギミック解放や強化要素が攻略の自由度と上手く噛み合っていて、新たな能力を得てから一度スルーしていたパズルに再挑戦すると簡単に解けたりもする。
逆に言えば今の段階だと解けないor無理に解く必要が無いパズルに延々と挑戦してしまう可能性もあるのだが、そこはまあそこを察するのもゲーム性のひとつということで……。
【好きなところ③】完成された操作性
さて、最後に操作性の話をしようと思う。
本作は倉庫番パズルとして、非常にレベルの完成度の高い操作性が実現されている。
ある意味で本作の一番秀逸なところはここかもしれない。
テンポが悪くならないように基本となる挙動は遅すぎず。
かつ、操作ミスを乱発しないように速すぎず。
この2点がかなり絶妙なバランスになっており、とにかくストレスが無い。
アンドゥ(1手戻し)機能も軽快かつちょうどいい速さで使いやすい。
極めつけは、死亡した時に自動で1手だけ戻してくれる仕様。
これもさりげなくも絶妙な演出の長さで、テンポを阻害しない程度に「あ、〇〇のせいで死んだ」とちゃんと認識させてくれる。
これ以上は中々難しいんじゃないと思わせるほどの快適さで、挙動ひとつひとつに気配りが感じられる作りは素晴らしいと感じた。
【好きなところ④】俺でも自力でクリアできた!!!
冒頭でほんのり触れたが、自分はパズルゲーム自体はちょくちょくプレイしている。
ただ、悲しいことにその大半がクリアできずに詰むのである。
そんな中で本作は、要所要所で知恵熱を誘発させながらもどうにか自力で最後までクリアできる程度の難易度だった。
俺は俺がクリアできないゲームよりは俺がクリアできるゲームが好きなので、本作はとても面白いと感じました。
以上です。
実際のところ、レビューでも比較的易しめという意見が散見されるので、少なくとも超難解パズルというほどではないと思われる。生存者バイアスかもしれないが……。
【総評】
本作にはメタ要素とか、衝撃の展開とか、奇を衒った要素は殆どない。
ストレートに完成度の高い操作性に支えられたパズルとしての面白さを土台に、探索要素の楽しさをドッキングさせた、洗練された令和の倉庫番パズルとでも言うべき、純粋な良作だ。
ちょっと頭の体操をしたい、そんな時にはぴったりのゲームではないかと思う。
グラフィックに惹かれるものがあるのならなおのこと、その秀逸なレトロ感溢れる世界に浸りながら楽しく頭を悩ませることができるだろう。
個人的にも成功体験を味わわせてくれた貴重なパズルゲームとして、本作のことはずっと忘れない。
ありがとう、『空と海の冒険』。