2019年7月、自己満足のために憲章をつくった。どこに向かうのか定めたかった。
現在の社会にはなじみにくい特性を持った方々に向け、私たちは「ギルドケア」という支援活動をつづけています。「保護を与えるのではなく、機会を与える」姿勢を大切に、一人ひとりの状況に合わせて調整しながら支援しています。
ギルドケアについてはコチラの記事で紹介しています。
たとえば「境界域知能」の方など、今の社会に生きづらさを感じる方々の実態を私たち自身もさらに深く理解したい。また多くの方にもこの状況を知っていただきたい。そしていつか一緒に彼らの支援に取り組む仲間になっていただけたら。
そんな想いのもと、noteでの記事更新をつづけています。
枠を設けない支援活動の、行先を照らす
支援活動をはじめて数年がたった頃、何かしらの指針を定める必要性を感じました。それまでは目の前で困っている人たちのために、ただがむしゃらに動き回っている状態でした。ですが何十人何百人と関わり、話を聞き、支援を続ける中で、自分たちが目指したい方向性が段々と見えてきたんです。
2019年の7月、憲章をつくりました。あまり普段の生活の中では聞かない言葉かもしれません。シンプルに言えば、理想に向けた約束ごとのことです。自分たちも、関わる人たちも、その約束ごとを指針として動いていけるように。同じ目標を見据える仲間と、連携して活動ができるように。枠を設けずに活動をしていた自分たちを照らす灯台のような存在になってくれたら。そんなことを願ってつくった憲章です。
ピンク、レッド、イエロー、ブルー、空色まで。世の中には、すでにさまざまな色のリボンをテーマとした活動があります。私たちがつくった憲章にはイエローグリーンをテーマカラーに設定しました。まだ使われていない色だったからと言う理由もありますが、イエローとグリーンのグラデーションが、支援対象である境界域(ボーダー)とリンクするのもポイントです。
憲章、という名称をつけてはいますが、現状では社会的な認知が高いわけではなく、自社内の域を出ていません。言い換えれば、自己向けの指針です。その目的は私たち自身が活動の軸をブラさないように、目指すべき方向を見失わないようにするためのもの。この憲章が目に入るたびに、つくったときの気持ちを思い出し、初心を忘れずにいられるように思います。
憲章作成につながる、印象的だったエピソード
ギルドケア活動開始初期は、私たちもまだまだ支援対象への理解が薄い状態でした。特に、支援対象の方々が何に対してどんな苦悩を抱えているのかについては、実感値がありませんでした。それでも、さまざまな支援対象者との関りの中から、徐々にリアルな状況をつかんできました。
ある支援対象者と話していた時のことを思い出します。彼とはともに仕事を進めていました。ただ、単純なミスを繰り返したり、集中力が途切れたりする姿が度々見られたため、「何か問題でもあるの?」と話しかけました。その時彼は「わからない」と答えました。
「自分ではわからない。小さいころから周りにも自分のわからないことで馬鹿にされてきた。それでも、今になっても何が問題なのかがわからない。それがとても悔しい」と。
彼の心の声を聞かせてもらい、ようやく気づけたことがありました。周囲が軽い気持ちで口にした言葉が、これまで本人を何度も傷つけてきたこと。何かが人とは違うと気づきながらも、それを自分で知覚することができない歯がゆさはどんなものなのか。
以前の記事で、「境界域知能の方は、自尊感情から支援を受けに行くことを避ける」と書きましたが、まさに自尊感情が日々損なわれていく環境にあるのだと気づきました。
当事者ではない私たちでも、その苦悩の深さに気づき、改めて支援の重要性に思い至ったエピソードです。
障害者や貧困、児童虐待など、それこそ各色のリボンの色に代表されるような支援活動には、それぞれ人や活動をまとめるリーダー的なポジションの方が存在するように思います。
ですが、境界域の方に対してはその主体となる方が見当たりません。他の支援対象と比較して、定義が難しいことも原因としてはあるのでしょう。それでも、社会に対して、彼らの抱える苦悩を代わりに伝えてくれる存在がいないのでは、事態は変えていきにくい。
それなら、私たちがその役割を、ほんの少しでも担えないだろうか。
そう考え、境界域の方を支援するための憲章をつくり、勝手に宣言したのでした。
憲章に関する記事を「あえて」書いた理由
憲章の作成以来、正直なところ何か反応があった覚えはありません。掲げていた憲章をひっそりと引き下げ、そのまま何もなかったことにすることもできます。でも今回、あえて記事として取り上げることを決めました。
「偉い」とか「立派だ」とか、ほめられたい訳ではありません(活動に従事しているスタッフたちのために、少しは社会からの評価も欲しい気持ちはありますが)。私たちが憲章までつくりこの活動に取り組んでいる本気度を知ってもらいたかったからです。
定義の難しい支援対象である分、たとえば支援活動に対して国や行政から助成金や補助金を受けることはむずかしい状況です。だからと言って、一個人としても、社会のためにも放っておける問題でもありません。
だから、私たちだけで支援活動を続けていくのではなく、賛同していただける方を一人でも集め、面としての支援活動を1日でも早く実現していきたいのです。
一緒に動くパートナーとして、どの程度の気持ちで支援に携わっているのかは気になるところだと思います。今回、憲章に関する記事を書いたのは、そのためです。
私たちは、支援活動のために憲章もつくり、5年以上その憲章に則った活動を続けてきました。独自の活動を続けていると、自己満足的になる可能性も理解しています。
だから憲章に見張ってもらい、福祉の心を失わないようにしたいのです。個人の活動ではなく、法人組織としているのも、継続可能な状態をつくるため。社員採用の面接時には、ギルドケア活動に関しても必ず説明し、納得したメンバーだけが入社しています。
たとえば一目で身体のどこかに障害を持っている方には、適切な支援を提供しやすい気がします。どんな支援が相手の役に立ちそうかの予測がつくからです。
でも、私たちの支援対象者は何に困難を抱えているのかが、一目見ただけではつかめません。だから何が苦手なのか、何に困っているのか、きちんとコミュニケーションを取った上で、適切な支援を提供できるようにしたい。
仕方ない、で済ますのではなく目標をともに定め、リハビリを経てできることを増やしてほしい。もちろん本人の意志が一番大切ですが、そうなれそうか、どうなりたいかも含めて、一緒に考えていける存在を目指したいと思います。
同じ未来を見てくれませんか。
改めて、私たちがつくった憲章の内容をお見せします。
私たちが目指すべき未来を知り、何かご一緒できそうだと思われた方は、一度ご連絡ください。
私たちは、真剣に現状を変えていきたいと考えています。独自の考えをお持ちだったり、特定の対象に対してすでに活動をされている方も、ぜひ活動の内容を聞かせてください。
この憲章が、私たちと皆さんをつないでくれることを願い、記事を締めたいと思います。
今回もお読みいただき、ありがとうございました!
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