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「シニア世代が抱える新しい挑戦への不安 その理由と対処方法」あるパーソナルトレーナーの実例

はじめに

以前にシニアに関する運動指導において、可能性の高い疾患に関する記事はnoteで書きました。

ただシニアの運動指導の際には運動指導に関する理論や技術、疾患に関する知識だけではなく、シニア特有の心理状態にも精通している必要があります。

例えば私のジム「Quest」でもシニア世代のメンタリティとして「新しいものを受け入れる、挑戦することが困難になる方」と出会うことがあります。
今回はこれをテーマにnoteを書きます。

ぜひ最後までお読みください。


シニア世代の心理的背景

シニア世代の方「新しいものを受け入れる、挑戦することが困難になる」という現象に関連する社会心理学の概念には、いくつかの理論や現象が関連していますが、特に次に挙げるものが代表的です。

1. 認知の固定化(Cognitive Rigidity)

認知の固定化とは、年齢を重ねるにつれて、新しい情報や視点を受け入れにくくなり、過去の経験や知識に基づいた判断を優先する傾向を指します。特に、新しい技術や方法に対する抵抗感が強くなることが特徴です。この現象は、加齢に伴う神経系や脳の柔軟性の低下が関係していると考えられています。

2. レジリエンスの低下

レジリエンスとは、ストレスや困難に対する適応能力を指しますが、年齢とともにその能力が低下することがあります。
高齢者が新しいことに挑戦する際の抵抗感や不安感は、レジリエンスの低下が関係している可能性があります。

3. 心理的硬直(Psychological Inflexibility)

心理的硬直は、個人が自分の行動や考えを柔軟に変更できない状態を指します。
高齢者においては、過去の経験や確立された価値観が非常に強く影響するため、新しい情報に対して柔軟に対応することが困難になる場合があります。
行動の選択肢が減り、新しい挑戦を避ける傾向が強くなることが特徴です。

4. 損失回避バイアス(Loss Aversion Bias)

社会心理学では、損失回避バイアスという概念も関連性があります。
損失回避とは、人間が「新しいことに挑戦して得る利益」よりも「失うかもしれないリスク」を強く意識する傾向です。
高齢者は特に、身体的な損傷や既存の能力の喪失に対して敏感になるため、新しい挑戦を避けることが多くなります。

5. ステレオタイプ脅威(Stereotype Threat)

ステレオタイプ脅威は、社会的に固定化されたステレオタイプが自己評価や行動に影響を与える現象です。
高齢者が「シニアとはこういうもの」「年齢に伴い新しいことに挑戦できなくなる」という社会的ステレオタイプに影響されることで、実際に新しいことへの挑戦を躊躇するというケースが考えられます。

6. 社会的比較理論(Social Comparison Theory)

高齢者はしばしば、過去の自分や周囲の若い世代と比較する傾向があります。この比較が、自己効力感(自分が何かを成し遂げる能力)を低下させ、新しい挑戦を避ける要因となることが社会的比較理論の観点から説明されます。

これらの心理的な現象が複合的に起こることで「新しいものを受け入れる、挑戦することが困難になる」心理状態になるのです。

それでは以下で「Quest」であった実例をご紹介します。
(個人情報に関わるので背景などはフィクションです)


1. Questでの実例:パーソナルトレーニングという新しい挑戦に対して

70歳の男性、佐藤さん(仮)は、退職して数年が経ちましたが、いまだに長年のデスクワークと日常の運動不足から腰痛に悩まされていました。

彼の家族は健康のために運動を勧め、佐藤さんもその必要性を理解していましたが、新しいエクササイズを始めることに対して強い抵抗感を抱いていました。

初めてジムに来たとき、彼は不安そうな表情でこう話してくれました。

「若い頃は運動が好きだったんですが、今は体が思うように動かないんです。
怪我をするんじゃないかと思うと、なかなか新しいことに手が出せなくて…。」

最初のトレーニングセッションで、彼に軽いストレッチとウォーキングなどの軽い有酸素運動を提案しましたが、彼はそれすらも慎重に取り組みました。

「これで本当に大丈夫なのか?」「自分にできるのか?」という不安が彼の表情から伝わってきました。

2. 佐藤さんはなぜ不安な気持ちになったのか?

佐藤さんのような高齢者が新しいことに挑戦する際に感じる困難さには、いくつかの要因が絡み合っています。

身体的要因

年齢を重ねることで、筋力や柔軟性が低下し、関節も硬くなります。
そのため、体が新しい動きに適応するのが難しくなり、怪我をするリスクを感じやすくなります。
また、代謝が低下し、回復に時間がかかるため、負荷をかけることに対する恐怖心が強まります。

心理的要因

認知の固定化と呼ばれる現象が起こり、過去の成功体験や固定観念が強く影響を及ぼします。
佐藤さんの場合も、若い頃の運動能力と現在の自分を比べ、思うように体が動かないことへのフラストレーションが新しいことに挑戦する意欲を減退させていました。

社会的要因

高齢者が新しいことに挑戦する際には、周囲の期待や評価も重要な役割を果たします。
佐藤さんは「他の人に迷惑をかけたくない」「自分の年齢で新しいことを始めるのは無理があるのではないか」という考えにとらわれていました。

3. 解決方法

佐藤さんが感じていた不安や恐怖心を克服するために、いくつかのステップを踏んで対処しました。

漸進的なアプローチ

まずは彼が自信を持って取り組めるよう、非常に簡単なストレッチや短時間の低強度の有酸素運動」から始めました。
毎セッションごとに本当に少しづつ難易度を上げていき、時には体調や心理状態に合わせて、後退することもあり、決して無理をせず進歩することで、徐々に体力と自信をつけていただきました。

成功体験の積み重ね

佐藤さんが少しでも進歩を感じられるように、小さな目標を設定しました。
例えば、「今週は2分間のウォーキングを週に2回は続ける」という小さな目標を設定し、それを達成することで、彼は自分の成長を実感し、自信を深めることができました。

その際に重要なのは「目標はチャレンジングである必要はない」ということ。
今まで実現したことはないが達成可能な目標は何か?
その細かい調整をし続けることが重要です。

心理的サポート

セッション中に佐藤さんと話す時間を多く取り、彼の不安や疑問に丁寧に答えるよう心掛けました。
また、彼の過去の経験を尊重しつつも、今できることに焦点を当てることで、過去の自分と現在の自分を比較することによるフラストレーションを和らげました。

とにかく対話をすること。
その際に傾聴すること。
何よりもそれが重要です。

社会的サポート

奥様やお子様たちのサポートを得るために、これらご家族ともコミュニケーションをとり、トレーニング内容や進捗状況を共有しました。

彼らの励ましが、佐藤さんにとって大きなモチベーションとなり、継続的なトレーニングの実施に繋がりました。

4.結果は?

半年後、佐藤さんは以前よりも活力に満ちた姿でジムに通い続けています。
彼は新しいエクササイズにも積極的に挑戦し、腰痛もかなり改善しました。
彼はこう言いました。

「最初は本当に怖かったけれど、少しずつ続けていくうちに、自分でもできるんだという自信がついてきました。」

「先生に会えて本当にラッキーだったよ!」


いえいえ、佐藤さん、その言葉そっくりお返しします。

たくさんのことを学ぶことができ、変化する喜びを共に分かち合えて、僕も佐藤さんに会えて本当にラッキーです!

まとめ

このようにクライアントの方と真摯に向き合い、焦ることなく一歩一歩前に進み、時には立ち止まったり、半歩戻ったり・・・

本当に少しづつセッションの内容と、そして僕という人間そのものを信頼していただくことで、成果を上げられるのだと感じています。

ただそれは「想い」や「人柄」だけでなんとかなるものではありません。
適切な知識と技術、情報収集力、そして学び続ける努力がなければ成立しません。

いや、その努力を怠っている人は「想い」や「人柄」もないのだとも言えますが・・・

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以上、よろしくお願いいたします。


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