格闘技における「5つのスピード」とは何か
はじめに
井上尚弥選手の活躍や「キックの神童」那須川天心選手の転向などもあり、最近はボクシングが盛り上がっていますね。
また世界的にはMMA(総合格闘技)が最もポピュラーでビッグマネーを産んでいますが、アジアのOne チャンピオンシップを中心にキックボクシング、ムエタイも新しい展開を見せています。
キック時代から那須川天心選手に関して、そのスピードが評価されることが多いのですが、一言でスピードと言ってもさまざまな要素に分類できることをご存知でしょうか?
僕は以前キックの選手の技術指導をしている時から、この「スピード」の概念を5つのカテゴリーに分類していました。
今回はその「打撃格闘技における5種類のスピード」について書こうと思います。
少しマニアックな話かもしれませんが、少しでも選手やその指導をなさっている方のヒントになれば幸いです。
1.ハンド&レッグスピード
手と足の動作の速さを指します。
これはパンチやキックの攻撃速度のみならず、ガードやブロックなど防御における動きの速さも含みます。
攻撃と防御の両方でこのスピードが重要です。
パンチやキックのタイミング自体のスピードが速いことは試合の主導権を握る鍵となります。
またパワーとは「力×スピード」で表され、どんなに筋力があってもそれを早く使うことができなければパワーを生み出すことはできません。
2.フットワークスピード(足の動きのスピード)
試合中に足を素早く動かし、ポジションを有利に保つスピードです。
移動速度や足の動かし方は、攻撃や防御、距離の調整に直接影響を与えます。
フットワークスピードが速ければ、相手の攻撃を避けつつ、素早く反撃することができます。
3.ボディスピード(身体のスピード)
体全体の動きの速さで、攻撃や防御時に胴体や腰の動きを含みます。
例えば、相手の攻撃を避ける際に体をひねったり、重心を素早く移動させるスピードが重要です。
また、パンチやキックを出すときに体幹の素早い動きが加わることで威力も増し、攻防両面での安定感が生まれます。
*この3つのスピードを統合して「スキルスピード」と呼び、これによって一般的に「目に見えるスピードが速い」状態を作る要素になるわけです。
4.リアクションスピード(反応のスピード)
相手の動きに対して即座に反応するスピードです。
打撃をかわしたり、防御するためには、瞬時に相手の動きを見極めることが必要です。
また、ダメージを受けた場合にも素早く体勢を立て直し、次のアクションへ移るためのリカバリー力も含まれています。
リアクションスピードが高ければ、試合中に常に状況に応じた対応ができます。
5.セレクトスピード(技の選択スピード)
試合の流れや相手の動きを分析しながら、瞬時に最適な技を選ぶスピードです。
これはメンタルスピードとも関わりが深く、戦略的な判断が求められる場面で、どの技を使うかを即座に決定し、実行に移す能力です。
セレクトスピードが優れていると、試合中に無駄なく適切な攻撃を行い、より効率的に勝利を目指せます。
この5つのスピードを理解し、磨くことで、打撃格闘技において総合的なスピードを最大限に活かすことができ、より実践的で効果的なパフォーマンスを発揮できるでしょう。
最後に
こんな風に「スピード」の概念を分類し、選手の動きを分析することができれば、その選手がどんな要素を強化すれば良いのかが明確になります。
現在は選手のフィジカルトレーニングコーチとして、このような視点を活かし、選手の強化をしています。
それによってただ闇雲にトレーニングするのではなく、明確な目的意識を持って効果的な強化をすることができます。
では最初の話に戻しましょう。
那須川天心選手はこの5つの要素のうち、どれが他の選手に比べて優れているのでしょうか?
僕が見る限り「5つの要素全て」だと言えます。
ここまで全てが揃っている選手は珍しいでしょう。
ですから僕はきっと天心選手がボクシングでも世界チャンピオンになると信じています。
だからと言って井上尚弥選手と比べるのは性急でしょう。
それほどあらゆる要素が桁違いに優れているからこそ、モンスターですから。
もし今日のnoteを読んで、少しでも興味や疑問を持った選手、コーチの方がいらっしゃいましたら、いつでもQuestに遊びに来てください。
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