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「これ」を知らなければファンクショナルトレーニングの指導はできません
はじめに
さまざまなタイプのエクササイズが無数にあるファンクショナルトレーニング。
しかしそれらのエクササイズを手当たり次第取り組んだとしても、それは飽きないバラエティに富んだワークアウトになるというだけで、それ以外の成果をもたらさない「おもしろエクササイズ」になるだけです。
もしファンクショナルトレーニングをより現実的で効果性のあるものにするなら、エクササイズごとに緻密な評価基準と段階的な発展の道筋が不可欠です。
しかしこの段階的な発展というのは、例えば「ケトルベル スイング」のような比較的一般的だと思われている種目の場合でも、いきなりこの種目に取り組んでフォームの完成度を高め、徐々に使用重量を重くしたり回数を多くするという単純な方法ではありません。
目標とする動きのための種目の選択の順序を決め、一つの種目に取り組むごとにその都度アセスメントをし、足りない要素を補うエクササイズに取り組みつつ、完成度を高めていく。
そんな緻密なプログラムデザイン則った指導が重要です。
この段階的発展のためのプログラムデザインを僕のジム「Quest」では「エクササイズロードマップ」呼んでいます。
今回はこの「Quest」でのファンクショナルトレーニング指導の根幹をなす「エクササイズ ロードマップ」について書きます。
ロードマップの構成
ロードマップは大きく2つのカテゴリー「メインロード」と「サイドウェイ」によって構成されています。
メインロードとは
メインロードは一つのエクササイズについて、そのエクササイズのバリエーションとして難易度・強度などを変換し、初心者の方が最初に取り組むものからアスリートなど体力レベルが高い方がトライするものまで、段階的なエクササイズの発展を意味する道筋のことを言います。
サイドウェイとは
サイドウェイは各段階のエクササイズごとにそれが完成できない問題点をアセスメントに基づいて割り出し、その問題点を改善するために別のエクササイズに取り組む過程を表します。
この2つの道の書かれた地図=プログラムデザインが「エクササイズ ロードマップ」です。
以下に実際のロードマップを「サイドプランク」の例でお見せします。
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メインロードの意義と構築
この図で表示されている①〜⑤の5つのエクササイズの段階的なプログレッション(発展)がメインロードです。
メインロードとは、エクササイズの基礎から高度なレベルまでの発展を追うプロセスで、最終的なエクササイズの形態を一つの目的として考え、最も初心者向けのものから徐々に高レベルのものへ移行する複数のエクササイズの道筋を表します。
この図で示されているように、サイドプランクの場合このエクササイズ ロードマップでは、初心者から上級者まで以下のような5段階の進行を想定しています。
1. スタンディングサイドプランク
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2. ベントニーサイドプランク
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3. 通常のボディウエイト(BW)サイドプランク
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4. TRXサイドプランク
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5. TRXサイドプランク with ローテーション
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このTRXサイドプランク with ローテーションとはこんなエクササイズです。
この「TRX サイドプランクwithローテーション」はサイドプランクで求められるラテラルラインの安定性だけでなく、空間での重心のコントロール能力や大腰筋をメインとした股関節屈筋群の活性化、胸椎と股関節の回旋などさあざまな能力が求められる複合的エクササイズです。
この「TRXサイドプランク with ローテーション」にいきなり取り組むのではなく、最も基本的なスタンディング サイドプランクから段階を追って進むための5つのエクササイズの流れがこの場合のメインロードです。
このようなメインロードのステップは次に後述する「5エレメンツ(5つの要素)」に基づきアセスメントを行い、それぞれの要素のその時点での水準に応じて徐々に進められ、クライアントが自身のペースでスキルを習得し、自信を持って次のステップへ進むための指標となります。
サイドウェイの導入
メインロードの各段階でアセスメントによって顕在化した問題点に対処するために、特定のクライアントが自分の体力レベルの問題を改善する別のエクササイズに取り組み、それによってメインロードのエクササイズの完成度を高める、このプロセスをサイドウェイと言います。
これにより、クライアントが直面する具体的な問題を解決し、総合的な運動能力を高めるためのサポートを提供します。
そのためのアセスメントの方法として特定のエクササイズに対して問題点が発生する原因になる体力の構成要素を以下の5つに分類しています。
5つの構成要素=5 エレメンツ
1.筋力
2.可動性
3.安定性
4.エクササイズスキル
5.代謝能力(心肺機能)
例えば、サイドプランクにおいて、クライアントが5エレメンツごとに次のような課題に直面している可能性があります:
1.筋力
サイドプランクを支えるための肩やコアの筋肉の力が不足している場合
解決策=対象筋群を強化する補助エクササイズである、前鋸筋プレスやスタンディングサイドベントなどを行う。
2.可動性
サイドプランクを適切に行うためには、肩や股関節の可動範囲が不十分な場合
解決策=関節の可動性を向上させるストレッチやモビリティエクササイズを取り入れる。
3.安定性
サイドプランク中に身体を安定させる能力が足らない場合
解決策=バランスとコアの安定性を高めるエクササイズ、例えばシングルレッグ パロウプレスなどのエクササイズを行う。
4.エクササイズスキル
サイドプランクの正確な技術が不足している場合
解決策=動作の形を動作の形を簡素化したり、ひとつ前の段階に戻り、クライアントが技術を学べるようにする。
例えばエクササイズのキーポイントを優先順位をつけて箇条書きのようなチェックリスト化したり、ビデオフィードバックな鏡を使った自己観察、そしてトレーナーによる直接的な指導を通じて、正しいフォームの習得を促進する。
5.代謝能力(心肺機能)
エクササイズ中のエネルギー産生による持続力や回復力が不足している場合
解決策=持久力を高めるための有酸素運動を取り入れたり、呼吸の方法を再確認し、習得したりする。
これらの個別の課題に対する戦略的アプローチを「サイドウェイ」と呼び、メインロードの各段階におけるエクササイズの完成度を高め、クライアントに最適な進歩をもたらします。
エクササイズロードマップの指導における重要性
各クライアントが持つ独自の運動能力やフィットネス目標に合わせた個別化されたエクササイズロードマップの提供は、安全で効果的なトレーニング結果をもたらすために欠かせません。
派手な「おもしろエクササイズ動画」がSNS上で人気を集めることも多いのですが、そのような動画を提供しているインフルエンサーはしばしばエクササイズの重要な段階的発展を見落としています。
これは、その派手なエクササイズへのトライをためらったり、トライしてもうまくいかない低体力者の挫折や、不適切な動作による怪我のリスクを増加させる可能性を秘めています。
しかしSNSでの人気だけを考えているインフルエンサーはこの挫折してしまった人への心情への配慮も、怪我をしてしまった人への責任も、考えることはしません。
でもパーソナルトレーナーはそれでは務まりません。
一人一人のクライアントと誠実に向き合い、寄り添い、そして結果を出すことが求められます。
だからこそ、この「エクササイズ ロードマップ」が一つの物差しになり、指導計画を立てることができるのです。
Questでは今回お見せしたようなエクササイズロードマップを数10種類以上作成し、指導に活用しています。
それらのエクササイズロードマップを元に各クライアントに最適化された個人別のロードマップを作成し用いることで、個人が持つさまざまな問題を解決し、すべての人が健康で機能的な心と脳と体を実現できるようサポートしています。
ですからQuestのパーソナルトレーニングではこの「エクササイズ ロードマップ」は不可欠なものなのです。
この「エクササイズロードマップ」について全ての情報を盛り込んだ動画セミナーのリリースが決定いたしました!
詳しくは以下のリンクのnoteをご覧ください。
今後も何らかの形でみなさんにシェアしたいと思っていますので、興味のある方はぜひこのnoteをフォローしてお待ちください。