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なぜ金融政策でインフレにできなかったのか?

今日(2021年9月27日)の日経新聞の記事にインスパイヤされて、以下私の考えを書いてみました。

#日経COMEMO  #NIKKEI

私の考えでは、金融政策でインフレにならなかったのは、いくら日銀がお金を供給してもお金が市中に出回らなかったからです。

■日銀のインフレターゲット2%の失敗

インフレターゲットを先導した元日銀副総裁の岩田規久男さんの書籍は分かりやすくて読みやすくておすすめです。内容も概ね納得することが多く、特に以下の書籍は日本経済の歴史を知るにはちょうど良いボリューム。

でも彼と黒田日銀総裁が主導したインフレ政策は失敗しました。「お金の価値はお金の供給量によって自由にかえられる」という、いわゆるリフレ論です(でも心理的には影響して円安・株高になったので結果的には別の意味で大成功)。

金融政策ではお金の価値(インフレかデフレか)は変えられなかったことを日本の歴史が証明してしまいました。私も10年ぐらい前は、岩田さんの本を読みつつ金融政策だけで本当にインフレになるのか興味津々でしたが、やっぱりできなかった。

ちなみに岩田さんはじめ、リフレ論者のインフレターゲット失敗の理由は「消費税の税率をあげたこと」ですが、でも彼らの考えでは、お金の価値は相対的なんだから、また供給増やせばいいわけで、結局真っ当な反論にはなっていません。

■なぜ金融政策だけでインフレにならなかったのか?

では、これはどういうことかというと、いくら市中にお金を供給してもお金を使いたいという人(=借金したい人、投資されたい人)がいなければ、お金は市中に回らない、つまりいくら日銀がお金を供給しても、使ってくれる人がいなければ、お金は市中に出ていかず、この結果インフレ・デフレには全く影響しない、ということです。

いやそんなことありませんよ。お金を使いたい人はたくさんいたのに、銀行が貸してくれなかった。投資家が出資してくれなかった

という意見もあります。

でも銀行も投資家も、その事業がちゃんと儲かるかどうか確信できない限り、お金を出してくれませんよね。元本が帰ってこないリスクがあれば、お金は使ってくれる人(会社も個人も)には渡りません。これがリフレ論者が理解できなかった点です(後から思えばですが)。

いやいやヘリコプターから国民に直接1万円札をばら撒けばいいじゃないか

という人もいます。貸したり投資したり、というように信用のフィルターがかかってしまったからお金が市中に回らなかったんだ。いっそのことそのままお金をばら撒けば良い、というわけです。

でもこれは今でもやってます。財政政策という形で日銀が発行したお金を政府が使ってこれまで累計500兆円ぐらい(国債の日銀保有残高)ばら撒いています(プラス日本株を50兆円分)。ヘリコプターでばら撒くのではなく、政府がコントロールして低所得者や高齢者・子持ちの家庭に優先的にばら撒いているわけです。

それでもインフレになりません。

インフレになるまでもっとばら撒き続ければよい

というのが今話題のMMT理論ですが「すでに日本は昔からやってますよ」というわけです。総裁候補の高市さんもこの考えですが、でもこれは日本の信用※との戦いで無限ではありません。

※日本の信用=日本全体の資産+日本全体の稼ぐ力
 →ここも面白い経済問題なので別途展開します。

■インフレにするためには「イノベーション&人口増大」しかない

では「政府のばら撒き」に頼るのではなく、どのような状況になったら、お金は事業家に供給されるのでしょう。これが将来も安心な「真っ当なインフレ政策」です。

これは単純で、事業家が、消費者が借金してでも欲しい商品を創造するしかないのです。つまり「イノベーション」です。経済全体に革命を起こすようなイノベーションが起きて、とてつもなく需要が増大する時です。

ただ、これには条件があります。イノベーションが代替需要ではないことです。ガソリン自動車が減って、電気自動車が増えて「自動車販売台数は変わりません」「単価も変わりません」というのでは全体需要は増えません。新たな需要を創造する全く新しいイノベーションでないと意味がないのです。

あとは「人口増」です。需要全体が単純に増えれば、その分売上が増える。イノベーションが起きなくても供給不足になれば、安心して銀行も投資家も事業家にお金を渡すでしょう。そしてインフレは起きる。実際人口が増大していた時代は日本でもインフレでした。

以上、真っ当なインフレへの道は、イノベーション&人口増がキーワード。

結局、米国で今起きていることです。米国はいまだに人口増しつつイノベーションが不断に起きるダイナミックな社会です。やっぱりここでも「米国が買い」ですね。

では、そもそも「なぜインフレにする必要があるのか」については別項目で考えをまとめたいと思います。

*以下、早速作ってみました

■昨今の米国インフレ基調について(2021年10月27日加筆)

2%前後の良性インフレだった米国は、コロナ後の急激な需要回復で4−5%の過剰インフレ基調になっています。一般に現代では近代化による生産性向上で需要過剰が常態化した世界です。ところが、コロナによる雇用基盤破壊で、人材不足になった業態(物流や小売などの流通業)が多く、十分に店頭に商品が供給できない状況になっています。

これは、コロナという特殊な状況が一時的に引き起こしているもので、数年立場また米国は低インフレ状況に戻るのではと思います。

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