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「京都の風土」摂関家が熱中した密教&浄土教
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天皇家は菅原道真などの登用によってなんとか藤原家の力を削ごうとさまざまに画策してきたものの、うまくいかず、醍醐天皇を継いだ朱雀天皇が幼少で病弱だったことから、藤原摂関家が権力を天皇家から奪い、権威(=天皇家)と権力(=藤原摂関家)が分裂する摂関家の時代に入ります。
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中国への憧れから冷め、藤原忠平(菅原道真を左遷した藤原時平の弟)に始まった摂関政治は、藤原道長やその息子頼通に至り、仏と日本独自の神が融合した神仏習合の世界を展開しつつ、末法思想の時代でもありました。
この時代に生きた比叡山の四大師※「良源」(912ー985)は、天台密教を創設した最澄の直弟子「円仁」の教えを完成させた僧と言われています。
その良源は義昭との論義によって藤原忠平に認められ、忠平の子の師輔とも結びつき、師輔の厚い信任を得ます。藤原師輔一家が権力を増すにつれて出世の階段を上り、ついに966年55歳にして天台座主に。
※比叡山の四大師=最澄、円仁、円珍、良源
そして74歳で死ぬまで19年間、天台座主の地位にあったことで良源の率いる円仁派(のちの山門)は勢いを増し、対抗馬の円珍派(のちの寺門)を比叡山の麓にある三井寺(園城寺)に追いやります。そして比叡山の山門と寺門の争いがこの時から始まるのです。これは最澄の直弟子円仁(山門)と最澄が後継に指名した義貞の弟子円珍(寺門)との戦い。
この山門派の「良源」の弟子が、浄土教の源流ともいえる『往生要集』の著者で有名な「源信」(942ー1017)。梅原曰く
良源は天台密教の完成者であると思われるが、天台密教の完成はすなわちその終結を意味し、そこから新しい仏教が出現したのである。それが浄土教である。
そして、この世の栄華を欲しいままにした藤原道長は、この世の浄土を実現しようと(今はなき)法成寺を建立し、
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現世利益を享受すべく神仏習合の真言密教的世界を志向。
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源信と同時代に活躍した真言宗のお坊さん「仁海」(951ー1046)は、真言宗善通寺派の始祖で、雨乞いで実際に雨を降らせたという、現世利益を実現する奇跡の僧侶。
梅原は、真言密教(真言宗)が中国で衰微し、日本だけで隆盛したのは、雨乞いを得意とする仏教だったからではないか、と推測。
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真言密教は修験道に即した厳しい修行を経たお坊さんが、護摩をたいて現世利益を実現しようとする、いわゆる「おまじない宗教」。
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特に農耕文化の日本では雨乞いで重用されたというわけです。今でも真言系の寺院に行くと護摩を焚いて病気治癒などの現世利益を祈願できますが、
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科学の存在しない平安時代においては、この世の禍を解決するツールとして真言密教は重宝されたのでしょう。
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一方で道長の息子の藤原頼通は、来世利益を享受すべく浄土教にすがります。そして来世の浄土の架け橋となる平等院を宇治に建立して阿弥陀仏を祀る。
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「穢れたこの世(穢土)から離れて、あの世の浄土を願い求める」という浄土教のスローガン「厭離穢土 欣求浄土」の世界です(浄土教を信仰した徳川家康のスローガンでもある)。
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来年2024年から始まるNHK大河ドラマは、源氏物語の紫式部が主人公ということですから、
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平安文化が花ひらいた藤原摂関家の時代は、まさに末法思想の世の中でもあって、ドラマの中でどのように末法思想や浄土思想がどのように表現されるのか楽しみです。
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*写真:平等院鳳凰堂