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「平和」と「人権」:究極の選択は「平和」

「#日経COMEMO #NIKKEI

タリバンによるアフガニスタン制覇で、またもや民主主義勢力が後退。

とはいえ「平和が最優先」とするなら、タリバンのような実質支配者の体制を認める、つまり「人権を犠牲にせざる得ない」という現実は、本当にツラい状況です。

大半の国家が加盟する国連の国連憲章では、基本的人権の尊重を普遍的な価値観として、国家で採用されるべきとしています。

・・・基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念を改めて確認・・・(国連憲章前文)

ところが実際、国連憲章の通りに運営されている国=実質的民主主義国家は、一体どれだけあるのでしょう。

上に添付の一田和樹さんの記事によれば、民主主義(完全な民主主義、瑕疵のある民主主義)は国の数では55%、人口では49.4%として、実質的民主主義国家は、実は世界基準では半分しかありません。国連憲章をちゃんと守っている国は半数しかないのです。

具体的には、世界の状況は以下の通り、長い間政治体制も多様で全ての国が民主主義国家になるとは現実的に考えてあり得ません。

【国家体制別の主要国家】
民主主義国家          :米国、西欧・北欧各国、日本、インド?
民主主義の皮を被った先制主義国家:ロシア、カンボジア、多くのアフリカ各国
一党独裁先制主義国家      :中国、ベトナム、キューバ
王権先制主義国家        :中東アラブ諸国、ブータン、北朝鮮

いつの時代も国家権力が嫌がるのは反体制勢力であって、これを封じることを最優先とした先制国家が様々な統治形態を装って台頭しています。

しかしこれだけ政治体制が違う国際社会においても、かろうじて大戦争が80年近く起こっていないのは、核兵器の存在に加え、影響力の強い大国(米国、ロシア、中国、インドなど)にとって、平和が最も国益に叶う外交政策だからです。

ところが最近は、経済力→軍事力が強大になりつつある中国が、戦狼外交と称される現状変更を各地で引き起こしています。ロシアのクリミア戦線も同様。これら国際問題については国家体制そのものを批判するのではなく、現状変更を批判するべきで、その国の体制を批判しても現実的ではありません。

現状変更を防止して平和を守るためには、たとえ他国の制度が自分たちと違っていたとしても「内政干渉せずに認め合いましょう」とすれば、紛争を起こりにくくなります。そして領土問題については2国間交渉に限定し、建前では主張しつつも現実的には棚上げすることも考慮に入れて良い。

今となっては「人権」と「平和」。どっちを選ぶか、という究極の選択がリアルである以上、先制主義国家の国籍を有する政治的自由を求める方には本当に残念ですが、人権を犠牲にして平和を優先せざるを得ません。具体的には「内政不干渉」を国際ルールとして最優先におけば、民衆が最も回避したい「戦争や治安の悪化」を防げるはずです。

例えば、ベトナムは一党独裁の先制主義国家で人権問題を抱える一方、国際ルールを守っているので西側社会は批判しません。

改めて基本的人権とは何か、といえば、お互いの自由を認め合うと約束し、そのために法律を作り、国政にその法律に基づく運営を負託することで、思想信条の自由が守られ、表現の自由が守られ、職業選択の自由などが守られています。

そして国政は、国民の総意に基づいた法によって暴力の行使(=警察権)が認められ、法に違反したものを取り締まるなどで、国家の秩序を守っています。

一方の国際社会はどうでしょう。基本的人権の尊重について、国家を一個人に例えて成立させることは可能でしょうか?私の知っている考えでは、個人間の思想・信条の一致は、ありえないのと同様に、国家間の思想・信条の一致もあり得ないのではないでしょうか?

そんな現実世界において、日本の国是の一つである「平和」を最優先するならば、お互いの体制を甘んじて受け入れ(特に先進民主主義国家にとって)、相手の体制を批判せず、現状変更による国際秩序破壊のみを批判し、内政不干渉を実施効果のある国際法としてルールづけするしかないかな、と思います(非常に残念ですが)。

■写真:2017年 アラブ首長国連邦 
世界一高いビル「ブルジュ・ハリファ」に掲げてあったドバイ首長「ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥームの言葉」。現代に生きる世襲制の独裁者ですが、どこかの民主主義国家のリーダーよりもよっぽど優秀に感じてしまいます。

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