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地理・歴史学

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人の価値観は、外的環境に大きく影響されます。地球全体に関して時間軸・空間軸双方から、どのような環境のもとで我々が今ここにいるのか?解明していきたいと思っています。
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#和歌山県の風土

和歌山県の風土:鈴木さんのふるさと

日本全国で2番目に多い日本の名字「鈴木」さん(1位は佐藤)で、推定138万人で人口の1.44%(明治安田生命調査2018年推定他)だから日本人の100人に1人は鈴木さん。 ■発祥の地は「熊野」その鈴木さんのふるさとは熊野で、海民ともいえる鈴木さんは、紀州を起点に黒潮に乗って日本全国に散らばったためか、特に東日本に多く、日本で2番目に多い名前となって普及。 アースダイバー(中沢新一著)によれば、港区芝に関して以下のように紹介し、東京(江戸)は古代より熊野からやってきた鈴木さ

和歌山県の風土:「穢れ忌避」がもたらした熊野の伝統

これまで、熊野に関する著作を読んできましたが、実際に熊野を訪れた印象とあわせてここで整理。 ■熊野の自然環境熊野の自然環境は何といってもその雨の多さ。日本有数の雨の多さで、新宮市の降水量は年間3,332mmと東京の約2倍の雨の多さ、山の深さと相待って熊野川をはじめとした清流が隈なく流れ、湿気のこもった山深い幽玄な環境をもたらしています。 「熊野は死者の国(=他界へのあこがれ)」といった宗教民俗学者五来重の表現した熊野のありようは、奈良・京都からみて、南の山奥に位置すること

和歌山県の風土:「高野聖」と高野山

■高野山について高野山は、名著「高野聖」を著した宗教民俗学者にして高野山大学の教授でもあった「五来重」が そして と表現。 ⑴自然環境 高野山は標高800-850メートルの山に囲まれた日本最大級の菩提所として、日本全国から死霊が集積する独特の空間なのです。実際にいってみると、紀の川エリアから高野山へは、車で20kmほどの奥にあり、その山深さを実感できます。 標高800−850メートルということは、100m標高が高くなるごとに気温は0.65℃低くなるので、平地よりも5

和歌山県の風土:環境編

今回和歌山を3週間フィールドワークして感じたのは、紀州=和歌山県は、紀の川を中心とする沖積平野である紀ノ川エリア「紀北」と紀伊山地「紀南」で大きく自然環境や文化が異なること。 【紀北】中央構造線に沿って吉野川を上流とする紀の川が流れ、東西に沖積平野が形成された自然環境は、どちらかというと徳島県の中央構造線沿いの吉野川と連続したエリアといった方がいいかもしれません。 紀の川(およびその支流)によって浸食された土砂が堆積した沖積平野が広がり、河岸段丘を形成し、特にその河口周辺

和歌山県の風土:太地町にてクジラ&イルカを知る

日本を廻るフィールドワークは、昨年の奈良県・大阪府に引き続き、今年は和歌山県へ。まずはクジラ・イルカで町おこしをしている、紀伊半島南東部にある太地町。 ■太地町と捕鯨について太地町は、人口約3,000人の小さな漁村(町?)ですが、イルカ漁に関する映画「ザ・コーヴ」が2009年にアカデミー賞・長編ドキュメンタリー賞を受賞したことから一躍世界の注目を浴びた町。 当時の状況をYouTubeなどで拝見すると、反捕鯨派(シーシェパードなど)と捕鯨推進派(国粋主義の一環)とこの「ふた

「熊野詣」五来重著 書評

<概要>まだ熊野古道が世界遺産になるずっと前の1967年出版と半世紀以上前に書かれたものとは思えないほど、神仏習合・修験道・そして原始宗教の織りなす、総合文化たる熊野を多面的に味わえる名著。 <コメント>「熊野は謎の国、神秘の国である」から始まる本書は、古い本ではあるものの、ちっとも内容が古びていないことにまず感心します。以下興味深い三つのエピソードを紹介。 ⒈「熊野別当」という専制君主熊野三山を支配したのは「熊野別当」という専制君主。「自由の命運」著者アセモグル風に言

「熊野から読み解く記紀神話」 書評

<概要>「すみっこ」という意味の隈の場所「熊野」を題材に、熊野に縁を持つ研究者、小説家、地元の活動家などが持ち寄った熊野にまつわる日本神話・民話の世界を紹介した著作。 <コメント>先日、早稲田大学のオープンカレッジで、池田雅之先生が主催する講座を聴講したきっかけで読ませていただきました。 本書の中でも尾鷲出身の池田先生のほか、熊野市文化財専門委員長の三石学さん、作家の中上紀さん(中上健次の娘)など、熊野にゆかりの深い方々がそれぞれ、自分のテーマを持ち寄って書かれています。

「死の国」熊野と巡礼の旅 関裕二著 書評

<概要>独自の歴史的視点から、伊勢から熊野、和歌山に至る紀伊半島の古代史を紐解く紀行文的著作。 <コメント>引き続き「熊野」関連の著作を読む。著者の関裕二先生については、先日NHK文化センターの講義「古代史を彩った三大豪族の謎 物部氏、蘇我氏、藤原氏の正体」でオンライン聴講。 彼の独自な古代史の視点は大変興味深く、他の著作も読みたいのですがまずは「熊野」。 本書は、展開の仕方が「アラ還オヤジ二人旅」みたいなスタイルになっているので、この辺りはあまり好みませんが、古代史や