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地理・歴史学

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人の価値観は、外的環境に大きく影響されます。地球全体に関して時間軸・空間軸双方から、どのような環境のもとで我々が今ここにいるのか?解明していきたいと思っています。
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#風土

『再考 ファスト風土化する日本』三浦展著 読了

<概要>戦後のアメリカ的な近代化(モダン化)の一環として地方で消費環境が均一化したことを「ファスト風土化」と称した一方、コミュニタリアニズムをベースにしたポストモダン的な多様性が都市を中心に芽生えていることを紹介しつつ、ファスト風土の次の消費環境の可能性を紹介した著作。 <コメント>過去に大阪都構想は、 都構想を推進する「啓蒙主義者」と、都構想を阻止しようとする「コミュニタリアン」の戦い と紹介しましたが、 啓蒙主義(=近代化)の地方における類型が、著者の問題視する「

ハワイの風土:なぜハワイは心地よいのか

ハワイのこの快適さは一体、何なんだろう。そしてハワイ中毒が生まれる。 今回2度目のハワイで感じたのは、日本で我々が体感しているモンスーン(季節風)とは異なる、通年で同じ方向に吹き続ける「北東貿易風」の存在、そして火山です。 赤道付近で暖められた空気は上昇気流に乗り、北緯30度付近で下降して高気圧を生み乾燥した砂漠地帯(亜熱帯高圧帯という)を生みます。その空気はそのまま南下し、たっぷり水蒸気を吸収しつつ地球の自転の力(コリオリの力という)によって北東から南西へと流れる「北東

和歌山県の風土:鈴木さんのふるさと

日本全国で2番目に多い日本の名字「鈴木」さん(1位は佐藤)で、推定138万人で人口の1.44%(明治安田生命調査2018年推定他)だから日本人の100人に1人は鈴木さん。 ■発祥の地は「熊野」その鈴木さんのふるさとは熊野で、海民ともいえる鈴木さんは、紀州を起点に黒潮に乗って日本全国に散らばったためか、特に東日本に多く、日本で2番目に多い名前となって普及。 アースダイバー(中沢新一著)によれば、港区芝に関して以下のように紹介し、東京(江戸)は古代より熊野からやってきた鈴木さ

和歌山県の風土:「穢れ忌避」がもたらした熊野の伝統

これまで、熊野に関する著作を読んできましたが、実際に熊野を訪れた印象とあわせてここで整理。 ■熊野の自然環境熊野の自然環境は何といってもその雨の多さ。日本有数の雨の多さで、新宮市の降水量は年間3,332mmと東京の約2倍の雨の多さ、山の深さと相待って熊野川をはじめとした清流が隈なく流れ、湿気のこもった山深い幽玄な環境をもたらしています。 「熊野は死者の国(=他界へのあこがれ)」といった宗教民俗学者五来重の表現した熊野のありようは、奈良・京都からみて、南の山奥に位置すること

和歌山県の風土:「高野聖」と高野山

■高野山について高野山は、名著「高野聖」を著した宗教民俗学者にして高野山大学の教授でもあった「五来重」が そして と表現。 ⑴自然環境 高野山は標高800-850メートルの山に囲まれた日本最大級の菩提所として、日本全国から死霊が集積する独特の空間なのです。実際にいってみると、紀の川エリアから高野山へは、車で20kmほどの奥にあり、その山深さを実感できます。 標高800−850メートルということは、100m標高が高くなるごとに気温は0.65℃低くなるので、平地よりも5

和歌山県の風土:環境編

今回和歌山を3週間フィールドワークして感じたのは、紀州=和歌山県は、紀の川を中心とする沖積平野である紀ノ川エリア「紀北」と紀伊山地「紀南」で大きく自然環境や文化が異なること。 【紀北】中央構造線に沿って吉野川を上流とする紀の川が流れ、東西に沖積平野が形成された自然環境は、どちらかというと徳島県の中央構造線沿いの吉野川と連続したエリアといった方がいいかもしれません。 紀の川(およびその支流)によって浸食された土砂が堆積した沖積平野が広がり、河岸段丘を形成し、特にその河口周辺

和歌山県の風土:太地町にてクジラ&イルカを知る

日本を廻るフィールドワークは、昨年の奈良県・大阪府に引き続き、今年は和歌山県へ。まずはクジラ・イルカで町おこしをしている、紀伊半島南東部にある太地町。 ■太地町と捕鯨について太地町は、人口約3,000人の小さな漁村(町?)ですが、イルカ漁に関する映画「ザ・コーヴ」が2009年にアカデミー賞・長編ドキュメンタリー賞を受賞したことから一躍世界の注目を浴びた町。 当時の状況をYouTubeなどで拝見すると、反捕鯨派(シーシェパードなど)と捕鯨推進派(国粋主義の一環)とこの「ふた

「熊野詣」五来重著 書評

<概要>まだ熊野古道が世界遺産になるずっと前の1967年出版と半世紀以上前に書かれたものとは思えないほど、神仏習合・修験道・そして原始宗教の織りなす、総合文化たる熊野を多面的に味わえる名著。 <コメント>「熊野は謎の国、神秘の国である」から始まる本書は、古い本ではあるものの、ちっとも内容が古びていないことにまず感心します。以下興味深い三つのエピソードを紹介。 ⒈「熊野別当」という専制君主熊野三山を支配したのは「熊野別当」という専制君主。「自由の命運」著者アセモグル風に言

「熊野から読み解く記紀神話」 書評

<概要>「すみっこ」という意味の隈の場所「熊野」を題材に、熊野に縁を持つ研究者、小説家、地元の活動家などが持ち寄った熊野にまつわる日本神話・民話の世界を紹介した著作。 <コメント>先日、早稲田大学のオープンカレッジで、池田雅之先生が主催する講座を聴講したきっかけで読ませていただきました。 本書の中でも尾鷲出身の池田先生のほか、熊野市文化財専門委員長の三石学さん、作家の中上紀さん(中上健次の娘)など、熊野にゆかりの深い方々がそれぞれ、自分のテーマを持ち寄って書かれています。

「死の国」熊野と巡礼の旅 関裕二著 書評

<概要>独自の歴史的視点から、伊勢から熊野、和歌山に至る紀伊半島の古代史を紐解く紀行文的著作。 <コメント>引き続き「熊野」関連の著作を読む。著者の関裕二先生については、先日NHK文化センターの講義「古代史を彩った三大豪族の謎 物部氏、蘇我氏、藤原氏の正体」でオンライン聴講。 彼の独自な古代史の視点は大変興味深く、他の著作も読みたいのですがまずは「熊野」。 本書は、展開の仕方が「アラ還オヤジ二人旅」みたいなスタイルになっているので、この辺りはあまり好みませんが、古代史や

「地域学入門」山下祐介著 書評

<概要>西洋近代化によって希薄になった「地域」の生活環境や社会、歴史や文化などをよりよく知ることで、私たち自身を知り、私たち自身を高めることができると提言した書。 <コメント>「その土地の地理や歴史が大きく人間の価値観に影響しているのでは」という問題意識から風土に関する著作を読み進めていますが、本書は社会学としての風土論=地域学についての入門書。 わたし的には風土論を展開するため、今年5月に半月ほど奈良県に滞在し、奈良県を対象に勉強して感じたのは、歴史的にはとても意味があ

奈良の風土:北部中世は、興福寺の独立国家

奈良北部(=奈良盆地)の中世(鎌倉時代→安土桃山時代)は、戦国大名が台頭するまでは興福寺が統治する事実上の独立国家でした。 西洋でいえば「教皇領」みたいな存在か。今の興福寺は最高峰の仏像群(阿修羅像・阿吽・銅造仏頭など必見です)を保管しているお寺としてしか存在感がありませんが。。。 (2021年 興福寺伽藍) もともと平城京遷都は、日本の国家体制の礎となった大宝律令(701年)具現化の一環。 (2021年 平城京跡:太極殿) 大宝律令の具現化を目的に →政治体制の整

奈良の風土:概要編

47都道府県を実地検分するにあたり、まずは日本(という政治権力)発祥の地、奈良県を選択。 (奈良公園:2021年5月。以下同様) 奈良県は南都ともいいますが、奈良という名称自体は、山を「なら」した、つまり山を崩して平らにした地域、という意味で「奈良」になったそうです(諸説あり)。多分奈良盆地の古代の区画整理事業(奈良盆地の川も蛇行せず真っ直ぐになっている)から、この名前が誕生したのかもしれません。 (大和川) さて3週間ほど滞在した結果、時間軸と空間軸で、奈良の特徴を

唐津の風土

佐賀県唐津市は、位置的には「東経140度」ピッタリということで私の生まれ故郷、千葉県船橋市の「東経130度」ピッタリからちょうど西に10度という縁のある土地。 唐(中国)に津(港)という意味の唐津は、かつて松浦(まつら)と呼ばれ、肥前国の玄界灘に面するエリア。もともと佐賀県&長崎県は肥前、熊本県は肥後だから、両方とも火(肥)の国に由来した火山の国。 ◼️唐津平野と唐津城 背振山地という、プレートの沈み込みによって水分が吸収され花崗岩となって形成された地形を松浦川や玉島川が