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地理・歴史学

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人の価値観は、外的環境に大きく影響されます。地球全体に関して時間軸・空間軸双方から、どのような環境のもとで我々が今ここにいるのか?解明していきたいと思っています。
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#自由の命運

中国という専横のリヴァイアサン「自由の命運」より

自由の命運からの知見第8弾。現代中国政治最前線の予習は終了したので、さっそく本題の「自由の命運」著者の中国解釈を紐解く。 結論的には、専横のリヴァイアサン=独裁国家は、中国史を通じて現在の中国共産党に至るまで脈々と続いている、としています。そしてどこまでいっても足枷のないリヴァイアサンには、決して「自由は訪れない」。 著者のあるべき国家像は、「国民が最大限自由に考え行動できる国家」なわけですからネガティブなのは当然です。 個人的には「経済的自由と政治的自由は分けるべき」

「幸福な監視国家 中国」 書評

<概要>国家主導のネット空間やカメラなどによる国民情報の取得→監視は、個人情報が国家に筒抜けになるという恐怖感をもたらし、中国においては体制批判を壊滅させるツールとして機能する一方、治安維持などの社会の安定に資する取り組みとして功利主義的視点から、一概にネガティブではないと提言した著作。 <コメント>「自由の命運」中国編をより深く認識したいがために、中国関連図書『習近平帝国の暗号2035』と本書『幸福な監視国家 中国(2019年8月出版)』を2冊通読。先にこちらを読み終えた

民主国家と親密な独裁国家「サウジアラビア」

自由の命運からの知見第7弾。今回はサウジアラビア。「第12章ワッハーブの子どもたち」より。 ■民主国家と仲がいいサウジアラビアサウジアラビアは、究極の独裁国家であり、女性差別を前面に押し出した重度の人権侵害国家なのに、イランという共通の敵の存在や世界有数の石油産出国だからといって、なんでこんなに西側諸国と仲が良いのかと思います。 第三者的に比較すれば、サウジアラビアの政治は、中国のウイグル問題やタリバンの女性差別と同等か、それ以上の酷さです。 きっと欧米自由社会にとって

アメリカ民主主義の特異性とは

引き続き「自由の命運」からの知見。 アメリカ合衆国の政治について、前から謎だったことが以下2点あって、 一つ目:民主主義を建国の礎としたアメリカなのに、1950年代以降の公民権運動に至るまで、「法的」な人種差別がなくならなかったのはなぜか? 二つ目:大統領選挙は、なぜ選挙人による間接選挙という、まどろっこしい制度なのか? 本書「自由の命運(下):第10章」では、アメリカならではの特異性(※)は、リヴァイアサン=国家権力の制御に効果を発揮した一方で、人種差別や階層の固定化

発展途上国のスタンダード:張り子のリヴァイアサン

引き続き「自由の命運」より。 以下長くなりますが、マスメディアではあまり取り上げられない、でもここに記録せざるをえない、日本人には想像すらできない世界がありますので、惜しみなく以下紹介します。 ■張り子のリヴァイアサン「自由の命運(下)」より、張り子のリバイアサンとは、アルゼンチンやコロンビアなどの南米やアフリカなどの発展途上国に一般にみられる、見かけは立派ですが、ごく基本的な能力しか持たない「見せかけだけの国家」のこと。「自由の命運」で紹介されている数あるリヴァイアサン

民主主義では解決不能なインド:カースト制度

自由の命運(下)より、インドのカースト制度の呪縛を改めて認識。いくら民主主義という政治的自由を採用したとしても、社会の規範(著者のいう「規範の檻」)が変わらなければ、自由は得られない、という事例がインドの事例。 ■カースト制度についてカースト制度は、主にインド人の大半を占めるヒンドゥー教徒の社会規範。外務省データによれば、インド人の人口割合はヒンドゥー教徒80%、イスラム教徒14%、キリスト教徒2%、シク教徒2%(2011年国勢調査)。インドのイスラム圏は元々パキスタンとバ