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地理・歴史学

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人の価値観は、外的環境に大きく影響されます。地球全体に関して時間軸・空間軸双方から、どのような環境のもとで我々が今ここにいるのか?解明していきたいと思っています。
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2022年4月の記事一覧

今に生きる野蛮の文化、アメリカ南部 「名誉と暴力」 書評

<概要>アメリカ南部における殺人や暴行事件の多さは(北部との比較で)、牧畜文化にルーツを持つ「名誉の文化」が原因だとし、認知的・感情的・生理的実験や態度・行動などあらゆる実験・調査からこの仮説を実証した著作。 <コメント>社会心理学者ニスベットの著作は、人間の知能は50%が遺伝要因だが、残り50%は環境要因なので、環境次第で知能はより高めることができる、と提言した著作「頭のでき、決めるのは遺伝か環境か」に続き2冊目。 本書の英語版は上の著作よりも前の著作(1996年出版)

「熊野詣」五来重著 書評

<概要>まだ熊野古道が世界遺産になるずっと前の1967年出版と半世紀以上前に書かれたものとは思えないほど、神仏習合・修験道・そして原始宗教の織りなす、総合文化たる熊野を多面的に味わえる名著。 <コメント>「熊野は謎の国、神秘の国である」から始まる本書は、古い本ではあるものの、ちっとも内容が古びていないことにまず感心します。以下興味深い三つのエピソードを紹介。 ⒈「熊野別当」という専制君主熊野三山を支配したのは「熊野別当」という専制君主。「自由の命運」著者アセモグル風に言

「熊野から読み解く記紀神話」 書評

<概要>「すみっこ」という意味の隈の場所「熊野」を題材に、熊野に縁を持つ研究者、小説家、地元の活動家などが持ち寄った熊野にまつわる日本神話・民話の世界を紹介した著作。 <コメント>先日、早稲田大学のオープンカレッジで、池田雅之先生が主催する講座を聴講したきっかけで読ませていただきました。 本書の中でも尾鷲出身の池田先生のほか、熊野市文化財専門委員長の三石学さん、作家の中上紀さん(中上健次の娘)など、熊野にゆかりの深い方々がそれぞれ、自分のテーマを持ち寄って書かれています。