【CLE】Andrés Giménezをトレードし、対価はすぐさま転売ヤー
お疲れ様です。いつも読んでいただきありがとうございます。Windiansです。
昨日のメインイベントはドラフトロッタリーのはずでしたが、抽選後にガーディアンズが2件のトレードを成立させて界隈を賑わせました。今回はそのトレードについてです。
1. トレード内容その①
ガーディアンズ→ブルージェイズ
Andrés Giménez (セカンド, 残り5年保有)
Nick Sandlin (リリーフ, 残り3年保有(Arb-2~4))
ブルージェイズ→ガーディアンズ
Spencer Horwitz (セカンド?, 残り5年保有)
Nick Mitchell (外野手, 24年ドラ4相当(CBR-B))
ドラフトロッタリーの抽選が終了した直後、ガーディアンズはセカンドでメジャートップレベルの守備を誇るGiménezと、経験豊富なリリーフ右腕のSandlinを放出しました。対価として昨年デビューした内野手のHorwitzと、今年のドラフトにてCBR-B(4巡目相当)で指名された外野手のMitchellを獲得しました。
金銭負担は両チームともにありません。
2. 所感
最初に出てきた情報が「Giménezがブルージェイズにトレード」だけだったので、「フロントはバカなんじゃないの!?」と思ってしまいました。ただ詳細が小出しに出て、筆者の頭も少しずつ冷めていくにつれ、トレード自体はよく頑張ったのではないかと印象が変わっていきました。
2-1 Giménezの重すぎる後ろ3年分を回避
2022年オフに、ガーディアンズとGiménezは7年$106.5Mの長期契約を結んでいました。
期間は年俸調停前の1年、調停期間3年、その後3年をまとめて囲い込んだ形になりましたが、最後の3年が年平均$23.57Mとなかなかの高額になっています。とはいえ、契約直前の2022年はもともとの最高級の守備に加え、打撃でもwRC+が+144と大幅なプラスを出していました。これを維持できるならば、バーゲン価格の契約となるはずでした。当時は。
ただその後のGiménezは、打撃がパワーレスな状態に戻ってしまいます。いくら守備が良かろうと、打撃でもある程度のプラスを出せないならば、年平均$23.57Mとなるラスト3年は足枷になってしまいます。ましてやスモールマーケットのガーディアンズにとっては、チーム経営にとって致命傷になりかねない金額でした。
この3年約$70.7Mを、契約ボーナス分を除いて$69M引き取ってもらうには、守備だけでも許容できそうな2026年の$15Mだけでは足りず、非常にお得な2025年の$10Mも合わせる必要があったのでしょう。この時点では、ガーディアンズがそれなりの対価を要求できるように見えます。
2-2 ニーズの一致
もう一人ガーディアンズ側のアセットに組み込まれたSandlinですが、これは両チームの利害が一致したため加えられたのだと思います。
ガーディアンズは今年ブルペンが突出して強力だったため、Sandlinはシーズン終了時点で6~7番手の立ち位置でした。そしてスーパー2の対象だったため、昨オフから年俸調停が始まっていました。今オフを含めて残り3回の調停を回避するために、ガーディアンズとしては早めに放出する必要がありました。
ブルージェイズとしては、今季のチームfWARがメジャー最下位、K/9も29位という惨状だったブルペンのテコ入れが必須でした。調停が始まっているとはいえ、来シーズンは$1.337Mで雇えるSandlinは、FAで誰か獲得するよりもずっと合理的な補強になると捉えられそうです。
ただSandlinは過去3年間の実績があるため、これでガーディアンズは対価を更に要求できるように見えます。
2-3 代わりのセカンド候補(のはずでした)
セカンドに絶対的なスタメンがいなくなることで、ガーディアンズは代わりの選手が必要でした。そこに対価として白羽の矢が立ったのがHorwitzと思われます。
ガーディアンズで今メジャーにいるユーティリティ化した選手たちは、以下の3人がいました。
今シーズンは二遊間がほぼ固定されたため、彼らは様々なポジションを守っていました。揃いも揃って打撃と守備が平均を下回っていましたが、慣れないことをさせてた影響もあるかもしれません。彼らのうち1人がセカンドのレギュラーを勝ち取れば、今年のGiménezと比較すれば打撃でアップグレードできます。FreemanはFangraphsの予想でwRC+が+109と、ややもすれば平均以上の成績を残してくれるかもしれません。
しかし、彼らだけに競争させるには小粒過ぎます。そこに今シーズン350打席立ち、wRC+で+129を残したHorwitzがこの競争に加わるなら、誰が守ろうとGiménezよりは質が落ちるところに打撃で代わりのバリューを生み出せます。
先ほどまでは、Giménezのラスト3年の重い年俸を相殺して余りあるアセットを用意していました。ですがまだ5年保有でき、かつ直近のシーズンで好成績を残したHorwitzをブルージェイズが対価として差し出すのは、いささか頑張りすぎている気がしました。ガーディアンズがGiménezの契約の年俸を一部負担するわけでもないですし。
Mitchellはパワーレスに終わりそうな外野手なので、このトレードにそこまでの影響はなかったと考えています。強いて言うならガーディアンズが好みそうな選手だったからくれたのか?
・・・
と思っていたんですよ。次の速報が来るまでは。
3. トレード内容その②
ガーディアンズ→パイレーツ
Spencer Horwitz
パイレーツ→ガーディアンズ
Luís Ortíz (先発, 残り5年保有)
Michael Kennedy (先発, 22年ドラ4, 今季A+)
Josh Hartle (先発, 24年ドラ3)
最初のトレードから約4時間後、ガーディアンズは先ほどの対価で貰ったHorwitzを使い、パイレーツから今シーズン途中で先発転向したOrtíz、同じく先発でA+配属のKennedyとA配属のHartleの計3人を獲得しました。
こちらも互いに金銭授受はありません。
4. 所感
まだGiménezとの別れを受け入れられない中でのトレード報道だったので、発表された瞬間の筆者は考えることを放棄していました。ですので、今回はいきなり冷静になってからの所感となります。
4-1 Horwitzはやはり余剰だった
先ほど獲得したHorwitzですが、本来はファーストの選手です。しかし、ガーディアンズには現状Josh Naylor(以下Naylor兄と表記)とKyle Manzardoがいるため、これ以上確保する必要はありません。
ではセカンドはというと、先述の通り、活躍に不安が残るものの頭数は揃っています。今年がメジャーデビューの選手もいるので、来シーズンメジャーに適応できれば成績の向上が考えられるという予想もできます。
更にはメジャーデビューできそうなプロスペクトとして、傘下8位のJuan Britoがいます。マイナーでのスカウティングレポートはHorwitzと似ており、かつ今年はホームランを増やしたということで、彼に期待するのも一つの手です。スプリングトレーニングで1枠を自前の4人に争わせるなら、これ以上数を揃える必要性は薄いです。
ですので、先ほどHorwitzを獲得したのは戦力として数えていたのではなく、実際には次のトレードチップとして目論んでの獲得だったということが明るみになりました。最初の考察の時間を返せ。
4-2 一塁が欲しくて先発が余るパイレーツ
ではどこにHorwitzを出すの?と考えたときに、ガーディアンズのニーズともバッチリ噛み合うのがパイレーツでした。
今シーズンのガーディアンズは先発が全くイニングを食えず、補強ポイントとしては最も優先度が高かったです。パイレーツは若くてクオリティの高い先発がここ数年でどんどん出てきており、ローテーションの後ろの方を整理する必要がありました。
逆にパイレーツはとにかく打撃に苦しんだ1年で、その中でRowdy Tellezが攻守にマイナスを垂れ流し、Connor Joeも大してプラスを出せなかったファーストは、補強の優先度が高そうでした。ガーディアンズはファーストならNaylor兄をトレードに出せますが、予想年俸$12Mではパイレーツが受け取ってくれません。そこにトレードに出せて、5年保有かつ来季はまだ最低年俸のHorwitzが手に入ったことで、互いのニーズが一致したという流れではないでしょうか。
KennedyとHartleは、Ortízだけでは足りなかったバリューを補充されたように見えました。それでも共に先発投手で、かつ球速が速くないということで、傘下トッププロスペクトといえどアセットに加えやすかったのでしょう。
5. 総評
仮に同じパッケージで、パイレーツとブルージェイズが直接トレードを行っていたとします。Horwitzをパイレーツに送るのは変わりませんが、メインの対価であるOrtízはブルージェイズでもローテーションに入れたのではないでしょうか。
ブルージェイズの来季ローテーションは現時点で以下の4人が決まっています。
5枠目はAlek Manoahだと思っていましたが、今年5月にトミー・ジョン手術を受けた影響で、来シーズンは半分以上離脱します。そのため、現状ではおそらく元中日のYariel Rodríguezで開幕を迎えます。そこをOrtízにすることでローテーションのアップグレードができ、更にイニング制限のあるRodríguezを一旦ロングリリーフに回すこともできたのではないでしょうか。
また、Giménezの重たい契約を引き取らないことで、打力改善のための補強に打って出ることもできました。詳しい方針は門外漢なので分かりませんが、AAVで$19.5M程度ロックされるのは、今年に限らず今後5年にわたって重くのしかかってきます。これが一番大きいでしょう。
一応ここから打撃をアップグレードさせる術も、なくはありません。
ブルージェイズは2年前までガーディアンズにいたErnie Clementの、パワーレスな打撃を改善させることに成功しています。それをGiménezにも反映できれば、二遊間の打撃を向上させつつ、再びお買い得な契約にすることができます。ただ、立役者のMatt Hagueコーチがパイレーツに去った今、2匹目のドジョウを掴むことはできるのでしょうか。
このように本来であればこの2球団同士のトレードで完結しえたところ、ガーディアンズは中抜きして一枚噛んで上手く立ち回れました。これで懸案事項だった先発の補強を進められ、どこかで考えなければいけなかったGiménezの契約問題を解決し、$100Mを超えていたペイロールを再び$90M台に戻すことができたのです。動き自体は非の打ち所がありません。
でもね?
頭では良い動きだと分かっていても、7年の長期契約を結んでくれた選手がたった2年で急にチームを去ってしまうのは、受け止めきれないものがあります。1日経ってこのnoteを執筆している今も、悲しみが止まりません。
6. 今後の補強方針
これで先発の補強ができたガーディアンズですが、Giménezのトレードで、$100M前後に収まりそうな来シーズンのペイロールに$5Mほど空きを作ることができました。Naylor兄をトレードできれば更に$12M浮くため、そこまでできたら先発をもう一人補強できると思われます。
狙うとしたらトレードでの獲得で、アストロズのFramber Valdezがベストフィットですね。Naylor兄を対価に含めることで、ガーディアンズは一塁の人員整理ができます。そして、アストロズはJon Singletonが第1オプションだったファーストをアップグレードしつつ、ペイロールを$6Mほど圧縮できます。
さすがにバリューはNaylor兄の方が少ないので、それを補うプロスペクトをアセットに追加する必要があるでしょう。そのあたりは今回のnoteの本筋から外れるため、割愛させていただきます。大怪我からの復帰組が多く、パフォーマンスに信頼しづらいアストロズのローテーションからValdezを引き抜けるよう、フロントに期待してこのnoteを締めます。
Naylor兄を放出できなかったら
ちまちまメジャー契約して終わりでしょうね!