【ショートショート】『ヘルプ商店街』
高校時代の通学路を歩いた。当時は自転車通学だったので人通りが多い時間は商店街を避けていたけれど今やシャッター街だ。
学校帰りに時々寄っていたレコード屋ももう無い。でも、そこを通り掛るとある人を思い出す。レコード屋で時々見かける女の子がいた。彼女がきっかけで洋楽でも歌詞を読むようになったのだった。同じ高校なのはわかっていた。いつもお互い一人だった。
高三になって同じクラスになり名前を知った。レコード屋で思いがけず声を掛けられた。
「どんなの聴くの?」
彼女はいつも洋楽コーナーにいた。だからロック系で答えた。
「シカゴとか」
「いいわねえ」
彼女はにこやかに言った。
「君は?」
「ビートルズ専門」
控えめで目立たない子だった。
「ヘルプ!最近よく聴いてるんだ。詞がさあ……」
「英語苦手だよ~」
程なく彼女は学校から消えた。そして、レコード屋からも。
何年かして永遠に会えなくなったのを知った。
(410文字)
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以上、こちらからお題をいただきました。