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taonbo
【ショートショート】『星屑ドライブ』
空。
あの空のかなたに誰かが待っているような気がしてじっと見つめてしまう。
理屈じゃないんだ。
それにしてもモノクロームな日々。
もう春だというのに。
落ち込んでいるのか?
いや、そうじゃない。
夜更けに外に出て空を眺める。
満天に広がる星々。
海。
瞬く光は思考回路の中枢に届くスイッチ。生命の揺りかご。ここは海の中?
いや、空の下だ。
いてもたってもいられなくてクルマに乗り込みキーを捻る。エンジンがしっかりと目覚めるまで外で空を見上げる。
「今夜も星屑ドライブ?」
いつのまにか隣にいて同じ方向を見上げていた。
君を乗せて走り出す。
山道を駆け上がる。
繰り返し左右に揺すられながら懐かしさを感じるのはなぜだろう。
人工の灯りが辺りに無くなった頃、クルマを止めライトを消しエンジンを切る。
外に立つとこの時期でも峠の冷気は格別だ。
前が空いたダウンジャケットの隙間からまるで猫のように君は潜り込んでくる。
きつくハグされながら星屑を見ていた。
君の濡れた瞳。
(410文字)
* * *
以上、こちらからお題をいただきました。