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海と風を口実に あの娘を誘ってみた 成功するとは 思いもしなかった 三連休の最終日なのに デートに引っ張り出せるなんて 長い付き合いの彼氏が いるってのは嘘なのか それともこれしきでは びくともしないほど そいつと固い絆で 結ばれているのか デートに応じてくれたのは ただの気まぐれか 猫の首に鈴をつけるのは 僕の役目じゃない でもさ 一度は勇者になってみたい ピエロでもいいんだ うまくいったら もうぜったい離さない それぐらい好きなのは 嘘じゃないから
あいつのnoteなんて見なきゃよかった また、あの子を思い出してポエムなんか書いてるんだね こんなこと言える立場でもないけどさ そんなだから、フラれるんだよ 渋谷のね、誰もいない いつもの通りにいるよ
夏は夜 ゆらりゆらりと歩きだす 夜の帳のその中へ どうせあなたはあの娘のところ ゆるりゆるりと参りましょう ほのかに光る赤提灯 こちらからお題をいただきました。
ふと思い出して食べたくなるカレー あの娘のお手製のカレー カトマンズからやってきた 不思議なカップルに招かれて 一緒に食べたあのカレー レシピを教えてもらってからは あの娘のカレーになったのさ 喧嘩しちゃった明くる日に 黙って出てきたあのカレー ちょろい奴だと思わせて カレーをいただく作戦さ 何度目かの大喧嘩 とうとう愛想をつかされて 腹ペコ歩く寒空の下 カレーの切れ目が縁の切れ目 漂う香りも絶えはてた やっぱり食べたいあの娘のカレー 今もどこかの空の下 食べてい
市民会館の二階席 パンフレット丸めて 照明が当たる前のステージを覗き見る バストロンボーンの一年坊主は あぶなっかしい足取りで席に着いた プールが気持ちいい季節になると いつも待ちぼうけ わたしの大好きな季節を台なしにして こんな薄暗い場所の片隅に追いやって これが終わるまで 夏が終わるまで あなたを夢中させる コンクールなんて大嫌い 演奏が終わった あなたの頬が きらっとしたのは気のせいじゃないよね わたしは拍手したよ 心から 図書館のあの場所で待っ
花吹雪舞う夜更けに池のほとりを君と彷徨う 纏いつく花びらと獅子座の君 振りはらう花びらとフラッシュバック こちらからお題をいただきました。
梅の花と桜の花が同時に咲くこの場所に たった一度だけ君は来てくれたよね こんな感じ初めて、とつぶやいて 空気感と見えているものすべてが 不思議な感覚なんだ、ってずっとはしゃいでいた そんな君を思い出したのは 梅の便りが風にのって漂ってきたから 『あいつのことは、もういいのかい?』 忘れたころに咲きほこる 梅と桜を待ちわびる まだ雪に覆われたこの場所で 君と一緒にこの空気を感じる未来なんて やって来るはずがないさ、って ずっと思っていたんだ こちらからお題をいただ
(僕の歌は君の歌) 鍵を探していた あれがないと先に進めない ホワイトマーカーで書いた頭文字が 掠れて残る小さな鍵 歌を書きたいんだ 君の歌をね 君を探して彷徨う街は 大学の校舎が点在する古い街 街自体がキャンバスのようなもの 一番古い校舎の階段下ベンチに君を見つけた ヘッドフォンをして目を瞑っているから 肩を掴んで揺すってみたら ブーツの先で蹴っとばされた 鍵を見なかったかい 探してるんだ 君は大きめのキャンバストートに手を突っ込み それを取り出すと僕に
君はいつもつるんでいた友達の妹で 僕が君の兄貴の友達だったころ まったく行き場のない僕らは くたびれた僕の車に揺すられて 海を見に行ったよね 水筒の蓋についていた方位磁石を頼りに とにかく東に向かって走ってさ まったく行き当たりばったりの僕らは いったいどこに行き着くかなんて 気にもしていなかった 人気のない海辺で君の肩に手をおくと そうするのが当たり前だったみたいに ふんわり抱きつかれて きらきらの海をずっと眺めてた 永遠にこうしちゃいられないって 思い
銀河売りを呼んだ 餅は餅屋 銀河は銀河売りに始末してもらうのがいい 君の小さな銀のリングは 洗面台に置かれたまま こんなことは一度だけにしよう 君に背を向けてレコードをかける そいつがどんなに青い空を歌ったとしても 僕らは大人になってゆくんだ 小さな銀河がリングの中にできたのは きっと君のせいじゃない 銀河売りがもうじきやってくる こちらからお題をいただきました。
姿を消した黒猫を探しに行くんだ ついさっきまでいたケーキ屋の駐車場へ 黒のフィアットパンダの ドアの隙間から するりと抜け出したあの子 あんなことで喧嘩になるとは 思いもしなかった バドワイザーが飲みたいとあの子は言ったけど ガツンと来るやつが飲みたかったんだ ちょっと足を延ばして クラフトビール探しに行こうよ それさえ言い終わらないうちに するりとパンダを抜け出していたんだ 迂闊にも気付かずにいた けれどもう呼んでも返事がなかった もっと早
逃げろ 死への恐怖に打ち勝つのは 生への恐怖 気をつけろ 死神は善良な振りをして 極めて近いところにいる 抜き足差し足しのび夜 気を許したその刹那 一気に襲いかかる 逃げる準備を怠るな 立ち向かおうとするよりも 知らぬ魔に明ける夜 逃げおおせたこの日を生きよう
もう以前とは違って あなた方に気を遣う気も失せてしまって 取り繕う気もなくて それは確かにそうで 良いのですよ 自信があるように見えますから きっと立派なコトをなさるのでしょう ちょっと安い見た目もそれほど悪くないです 少しばかり気になるのは それが 気持ちの良いこと かっこ良いことと 思っているらしいこと どこから眺めてみても そうは思えなくて そう思ってしまったら きっと僕も終わりのような気がして 楽しそうで良かった 誰かがそう言ってたけど そう
池を囲む柵の上に 両肘をついて顎を載せて 並んで池を眺めている 夜の公園 くすんだ緑色のケープ付きのコートと笑顔 デートの帰り 腕を組んで歩く雑踏 電車に乗る君を 見送る駅のホーム 楽しかった出来事は鮮明に思い出され 思いも寄らず別れを告げられた日に 頭の中が真っ白のまま ひとり帰りの切符を買った それはどこの駅だったか 都合の悪い事は忘れ去られて 残るのは見つめていた やけに白い券売機のイメージ それでもまだ 僕の体には君との日々の断片が 埋もれている それ